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第一話 町の便利屋さん

──これはある青年の日常を切り取った日記である

波光歴1024年4月1日(天気:晴れ)

今日から日記をつけることにする。

僕はラント・ナルベル、王都より少し離れた町で便利屋を営んでいる。主に家の修理や武器の点検が便利屋の業務だ。時々盗賊とかを撃退したり、(その時は知らなかったが)お姫様の護衛として働くこともあるが普通の便利屋だ、用心棒のように見えるかもしれないが平々凡々の人間なのだ・・・誰に書いているんだこれ?


今の世の中は人と魔族が国交を結び手を取り合っていたが一部の国の人と魔族が争いを続けていた、王都や別の魔族の国はその争いを止めるために様々な策を立て、なんとしても争いを止めたかったが今も続いてしまっている。そのために王都は高名な若者を勇者に、魔族の側は文字通りの魔法使いの代表を決めて戦いを止めるもの達になってもらう話らしい。それぞれ世話になっている情報屋から受け取っていた


その矢先、王都に来る要請が来ていたらしいがこの時友人の魔族に頼まれ、薬草を採りに行っていたため知らなかったこと、帰ってきた際その友人がどういう訳か襲われていたために制圧。襲っていたのは王都軍の過激派らしく、後日軍の責任者が直接謝りに来たのが印象的だった


ちなみに日記を書くように言われたのもその魔族でこうしたトラブルがあるだろうから書き留めておくのが大事と念を押されたため現状を書いているのだが・・・


──その今日に勇者の一人になった知り合いが来た。どういうことだよ・・・


side ルーベルーナ

今日私ルーベルーナはいつも武器の点検を頼んでいる便利屋さんにあることを報告するために来ていた。


「こんにちはー!」


そう言って便利屋さんのドアを開ける


「いらっしゃい、・・・どうした?君がこの時間から来るのは少し驚いた。いつも午後くらいに来るのに、緊急の案件か?ルル」

「いつも私がトラブル持ち込んでいるみたいに言わないでくださいよ!・・・事実ですけど」


この人はラントさん、私のことをルルと呼ぶ。本人が言うには便利屋さん、よく自分の持ち込んだ依頼で迷惑をかけてるためこういうことを言われる。


「で今回は何だ?いつも通りの武器の点検か?それとも素材の回収か?一応の準備は整えてあるけどどうする」


このように私のような常連にはある程度分かっていることを問われるが今回は少し違う


「違うよ、今回は報告したいことがあるの」

「ほう?何だ?また斜め上のトラブルでも持ち込みに来たのか?」

「だから違うってば!持ち込んでいるのは事実だから否定はしませんけど・・・聞いて驚かないでくださいね?私勇者の一人になっちゃいました!」

「へぇ、勇者ね・・・勇者!?ルルが!?」

「驚かないでと言ったんですがそれでもご近所に迷惑をかけないよう小さな声になってるのはある意味流石というか・・・」


ラントさんは色々頭で整理している内に彼はあることに気付いたようだ


「というか勇者の一人?複数いるのか?こういう勇者はリーダーみたいな奴が仲間を引き連れるものと思ってたけど」


やっぱり気になるよねそれ


「そこは最初そうなる予定だったみたいなんだけど満場一致でその勇者になった人が言ったの『勇者の名は自分一人が冠するものではない、私だって不得意や苦手がある。だからここに残った皆で勇者とするのはどうだろうか?』って、私としてはそのつもりはなかったけど他の皆がその言葉に感動したみたいで皆で勇者と名乗ることにしたみたい」

「・・・なるほどね、しかし王都もよく認めたな。普通それは良く思われないだろ?」

「そこはそこで反対意見も出てたんだけど、王様と前に君が護衛してたお姫様から確かな利を示してくれたから収まったんだ」

あぁーと言ってラントさんは少し考える素振りを見せると

「なぁその言葉を言ったのはなんて名前だ?」


そうか確かに言ってなかった


「タミナルさんっていう女の人が言っていたよ?」

「・・・・・・アイツか、確かにアイツならそんなこと言うわ」

「ふーんそうなんで・・・って!?知り合いなんですか!?」

「?・・・あぁ、そういえば言ってなかったな、タミナルは昔僕の行っていた学校で学校交流の際に交換転入で親交を深めたんだ。」


驚かせるつもりがこっちが驚く情報が!?


「その時のアイツは家の教育もあって凄く固い奴でさ、自分でもしつこいと思うレベルで遊びに誘ってなんやかんやでアイツも付き合ってくれたんだ。その中でアイツが気付かなかった苦手が見つかったんだ、あのまま交換転入しないことを選んでいたら絶対に見つからなかったレベルのものがな。だからそんなこと言ったんだろ」


・・・何だろ?ちょっとモヤッときてるんだけど


「ねぇ・・・その交換転入の後タミナルさんと連絡とかとったの?」

「いやあれきりだ、そもそも連絡先の交換とかしなかったし・・・というかそういう関係じゃないか疑ってるんだろルル?」

「そんなトンデモ情報いきなり出された私の身にもなってくださいよ、本当に何もないんですね?」

「あぁ何もないよ、にしてもアイツ何で勇者なんかに」


?どういうことだろう、そう不思議そうにしているとラントさんは答えてくれた


「アイツさ、風の噂で交流のあった学校から進学したのが学者の道を選んだとか聞いたからな、戦う学者になる気だとか交流のなかったクラスからも噂になったものだぞ」

「そういえば、誰かが学術騎士なんて呼んでたね。本人は騎は抜いてほしいと言ってたけど」

「ふむ・・・ま、この話はここまでだ、勇者は具体的に何やるのかは聞いてるのか?」


うーん話していいかな?まぁラントさんなら大丈夫か


「ラントさんだから話すけど他には漏らさないでね。・・・王都での話をそのまま話すと私達の役割は彼らの戦いを止める抑止力と争いの原因を探すこと、人間側が魔族に対して何かしたかもしれない、その逆もあるかもしれない。もしくはその争いで得をしている組織を探して欲しいと言われたんだ」

「・・・短くまとめると戦いを続けてる原因を探ってそれを打倒するということか?」

「短くまとめすぎだけど・・・うんその認識で良いはずだよ」

「そうなるとこれから武器の点検は念入りにやるべきか?戦いに介入するのなら万全が良いだろ?」

「そうだね、ただ今は大丈夫かな。要請を出されて向かう形なんだ、準備期間もあるしそのときお願いするね」

「分かったよ、・・・勇者の大役は確かに大きなことだけど無理せず頑張れよルル」

「はい、それでは失礼しますね」


私は便利屋さんのお店を出る

・・・勇者召集の話が始まる前にお姫様から聞いたけど王都側の上層はラントさんも勇者召集に連れてくることを決めていた。しかしその前に王都軍の過激派が迷惑をかけたため呼べなかった話を出されたとき、王都の城のガラスが全て割れたのだ。満場一致になった原因であるタミナルさんの闘気によってだ。他にもとんでもない力の奔流もあったけどタミナルさんを見て抑えたのが見えた。

・・・何というかラントさんって勇者になる凄い人達の人脈を作っているのではないか。まぁ勇者という意味では私もだけど、あの店はこれから賑やかになることは間違いないなと私は思ったのでした。

side end


4月1日

追記:ルルが勇者の一人となったことを聞いた、それだけでも驚きなのにタミナルが勇者達のリーダーになったことを伝えられた時は凄く驚いたがルルの手前、そう驚かなかったように見せたけど、アイツ絶対こういうことだけは面倒で参加しないはずだったんだがな・・・何があったのやら

今、夜に書いているがルルの勇者になった話の後、今度は日記を書くよう言ったやつとは違う知り合いの魔族が魔族側の魔法使いになったことを伝えられる。・・・ウチの店はそういう情報共有の場所ではないのだが、あの子がそれになったのは頑張ったからとも思う。にしてもウチの常連は才能のある人達が集まるよねホント


side メティス

私メティスはいつもこの時間に来ている。この暗い時間まで開けてくれてるあの人には数え切れないほどの恩がある。その人に恩を返せる機会が来たことを伝える、それだけのことだ。


「ごめんください」

「・・・いらっしゃいメティス、いつもの時間きっかりだ。今日はどうした?前に言ってた魔族側で取れない素材の引き取りか?それか新しい魔法の実地検証するのかな?」

「今日は魔法検証じゃないの、それと素材の引き取りは後でお願いしていい?」

「?・・・どっちでもないとなるとまた人間側の図書館に行きたいとかいう話か?別に貸し出しのカードは作ったんだから一人で行けるだろう?」

「・・・そっちでもないです」


あの時のことは出来れば思い出したくない・・・何で私あんなことを・・・いや今は恥ずかしさに悶えてる場合じゃない


「ラントさんに報告があります。」

「・・・何だ?」

「私、魔法使いに選ばれました・・・チームの一員としてですけど」

「───そうか、良かったな。君の努力が実を結んだのは良かったじゃないか」

「はい・・・!でもそれはあなたが親身になって検証に付き合ってくれたからここまで来れたんです。いの一番に伝えたくて・・・!」


※ここで勇者の特権と魔法使いの特権について話をしておこう。勇者側は基本的に定職に就いているもの達から力を貸して欲しくて王都から要請される形なので勇者となっている間休職扱いとなる。また勇者活動は公費として扱うため、特権目当てに来る奴も少なくない。さらに勇者は一人であるという条件もあったために闇討ちのようなことが起きていたらしい。もっとも今回選ばれた勇者とこの状況に辟易していた王によって複数で動くこととなった。

魔族側の魔法使いはいわゆる何かを極めたプロとして認められた証明で人側の研究室に該当する部屋が与えられる。そのためかなり狭い門で努力し続けてきた人の目標で一握りの天才でも厳しいものだ。ちなみに魔法使いの中の代表はこの魔法使い達の中から心技体全て揃った魔族がなると決められている。


「それでチームに入るのはいつになるんだ?」

「えっと・・・5日後だね。それで相談したいことがあるんだけど・・・」

「何だ?」

「実は私、新たな魔法使いになった人達が挨拶をするんだけど挨拶をする代表になっちゃったの・・・だから」

「文面を見て欲しいのか?」

「そうです、自分なりに考えて文は作ったんですけど・・・」

「どれどれ?」

・・・そうして夜も更けていく、現代では人と魔族が共にあることを良しとしているがそれでも魔族を敵として見る昔の体系を引きずった魔族はいる、人間もそうだとラントさんは言う。

そんな現状を変えるための魔法検証が私を魔法使いにしたのだと生ける最強の魔法使いは言ってくれた。

その中で魔法検証は私だけでやっていないことも気付かれた、それを咎められると思ったがむしろそれが評価されて挨拶することになったのだけど


「文章構成はこれで良いはず、後はこれをすらすらと言えるようにしないとな?」

「はい、ありがとうございます・・・その」

「?どうしたんだ、素材引き取りはさっき済ませたし、これは練習あるのみだし・・・もしかして来て欲しいのか?」

「・・・はい、実を言えば・・・」

「5日後は確かにちょうど休みを取る予定だし、そこは問題ないけど・・・唐突な依頼も飛んでくるからなぁ」

「確かに時々、連れてかれますよね。ルルさん?っていう人間の方とテルちゃんに」


テルちゃんは分かるけど彼の言うルルさんも凄いバイタリティなんでしょうか?


「まぁ大丈夫だろ、よくトラブル持ち込む二人は来るとしても一週間は空くだろうし、ルルの方は勇者の一人になったとか言ってたから」

「勇者・・・?あっ、やっと決まったんですか・・・」

「・・・そうか、こっちじゃかなり待たされていて最初の魔法使いの代表が力を持て余して騒動起こしたとか言ってたな」

「そうです、だから心技体全て整った魔族が・・・?勇者の一人?あれ、人側は勇者は一人と聞いていたんですけど・・・」

「・・・あー、人づてに聞いたから正確な情報じゃないが勇者になった奴が選別みたいなことして残った奴皆を勇者として扱ってくれと頼んだらしい、でそれが認められちゃったんだと」

「・・・何というか人って時々変な方向に向きますよね・・・」

「・・・そこに関しちゃ全くもって同感だよ、まぁ王都の王様の決定だから逆らおうにも逆らえないだろうしな」

二人揃ってため息をつく



「とはいえ挨拶に来て欲しいことには了解だ・・・依頼書書いとくか?」

「いやそこまでのことじゃないし、大丈夫だよ。それじゃあまた5日後に私が案内します」

「分かったよ、じゃあよろしく」

・・・とここで約束を交わし素材をもらって私は自分の住む国に帰っていった。・・・けどまさかこれが人と魔族の争いを止める最初の一石になることをこの時の彼も私も知るよしはなかったんだ。

side end


4月2日(天気:晴れ)

メティスが魔法使いになったことを伝えられ、5日・・・いや一日過ぎたから4日後に魔法使いの就任式があるから来てほしいと言われ向かうことを答えた。・・・彼女は本当に来てほしいと思っているだろうけど多分魔族の誰かが協力者がどんな奴かを知りたいと思ったんだろうな、実際名前自体は偽名とはいえ出したわけだし、選んだ魔族側が何考えてるか分からないが乗ってやろうじゃないか。


で今日は確か・・・知り合いの家の屋根を直す仕事が入ってたな。

さて、お仕事開始です!


この物語を読んでくださりありがとうございます。評価や感想をいただけると励みになります。次回をゆっくり待ってもらえるとありがたいです

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