7.生徒達の心配事
現実を直視した結果、精神的に大きなダメージを負ってしまった僕は大きくため息を吐く。
そんな僕に生徒達は優しく? 声をかけてくれる。
「落ち込むなよ、スーさん。近くにいれば俺たちが代わりにモンスター倒してやるから!」
「この前の再試、スーさんのお陰でクリア出来たし! こんな時くらい恩返しすっから!」
「3階まで上がってくるだけで息切れしてるスーさんを俺達は見捨てたりしないからな!」
「そうそう。だからスーさん、絶対防御系選べよ?」
「みんな……」
ものすごくバカにされているように聞こえるが、任せろ! とばかりに拳を握りしめている彼が僕に向けているのは純粋なる好意である。
素行がいいとは言えない子達だが、人を思いやることが出来るいい子達なのだ。
ただ生徒達に心配されるほど僕の身体能力が低いだけ。
どうにかしようとジムに通おうかと思ってもなかなか時間が取れずじまいだった。だがこんなことになるなら休日に頑張って通うべきだったな~なんて思ってももう遅い。
学生時代の頃よりも摘まめる量がほんの少しだけ多くなったお腹を撫でる。
体育の剛力先生のような見事なシックスパックがほしいとは思わないが、せめて御年58歳を迎えた書道の岩城先生よりも元気かつ健康でありたいものだ。
その岩城先生の趣味って山登りと川釣りで、60近いとは思えないほど元気なのだが……。
僕が目指すべき場所を見失いそうになっている最中も生徒たちの興味は再びダンジョンに戻っていく。
「圭吾、ジョブってないの?」
「あるぞ。初めのモンスターを倒すとレベルが上がるんだが、その時にポイントとジョブが獲得できる」
柏木君は『保有ポイント』の文字を黄色い円で囲んだ。
そしてそのまま黄色いチョークで『0』の隣に『→5』と書き込む。
「ジョブは勝手に決まるが、スキルはこのポイントを使って選ぶことが出来るようになった」
「スキル取得ってまさか『俊足』とか取れたり?」
「スキルに何があるのか個人差があるらしくて、『俊足』があるかはわからねぇけど、スピード強化型のスキルはあると思う。俺、攻撃強化スキル『断裁』取得できたし」
「柏木は武器がハサミだから、それに対応したスキルの取得ができたということか……」
「ああ。その他に俺がポイント振り分けで筋力多めに振り分けたのもあるかもしれない。この他にも5つくらいあったけど、これだけ常時発動型スキルだから取ってみたんだが、結構便利だった」
「なるほどな。ということは、スーさんは俊敏に多くポイントを振り分けつつ、スキル一覧に『逃げ足』とかあったら取得したほうがいい、と」
「性能にもよるが、モンスターの前から離脱出来る確率が上がるなら確実に取得した方がいいな」
「後『ステルス』とか?」
「スーさん小さい割にはよく目立つからそれは無理じゃね?」
「あー、結構髪明るいからな~」
「なら設定する武器を防御力高めなのにして、それを強化する系スキル取ればいいんじゃないか?」
「委員長天才かよ! スーさん、防御系スキルとるの決定な!」
柏木君が与えてくれた情報はほんの一部で、おそらくこの手のことに疎ければ首を傾げるなり、もう一度聞き直すくらいのことはするだろう。
けれどどうだろうか。
目の前の彼らは議論を進めることはあっても止まることはない。見事なまでにサクサクと進んでいくのだ。
彼らはきっと僕よりもずっとこの手のことに詳しいのだろう。
悲しいような、悔しいような……。
けれどこの逞しさが彼らの個性の一つなのだと思うと、教師としてはなんだか嬉しくも思えてくるのだ。
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