9.大人失格?
「ごめん、スーさん。結構時間かかっちまった。あずさはもう寝た?」
「うん。寝たよ。遅くまでお疲れ様」
「ありがとう。それでおおまかに話すけど、色違いのスライムは他のところでも発見されたらしい。そして遭遇した奴らは揃って、昼間のスライムは見かけなかったと言ってるからスーさんの、昼夜でモンスターが違うって考えがあってるんだと思う。今のところ他の奴らにもケガはないらしいけど、セーフティーエリアが破られたことで避難場所では混乱が起きているらしい。『お前のせいで死にかけた』だの『安全じゃなかったのか』とか罵詈雑言ぶつけられて避難所を飛び出したやつもいる」
「そんな……」
柏木君から伝えられた言葉に思わず身体から力が抜けていく。
未だ正しい情報はほとんど掴めていない。
ダンジョン化してから日数は経っているが、エリア化してからはまだ一日と経っていない。
あっていると思ったことが変わることだってあり得る。
でもその可能性を彼らはしっかりと理解していた。
理解した上で他の人のことも守ろうとしていたのに……。
なぜそんな冷たい言葉を投げつけられなければいけないのだろう。
いくら恐怖で震えているとしても、その言葉をまだ子どもの彼らに、誰かを守ろうとしている人にかける言葉ではない。
そんな酷いことを言える人がいることが、そんな人から生徒を守ってあげられないことが悔しくてたまらない。
「とりあえず自宅に帰ったらしいけどさ、こっち誘っていい? 弟と両親いるから4人なんだけど」
「もちろん! ここだって避難所だもん!」
「そっか」
伝えとく、と笑って再びスマホに視線を落としたその顔はどこか悔しそうで、悲しそうにも見える。
そんな柏木君を放ってはおけずに、弱々しく丸まってしまった背中に声をかける。
「柏木君、ありがとう」
「いきなり何? どうしたの、スーさん」
「ずっと助けられてばっかりだから。だからありがとう」
「………………っ」
罵倒されたのは彼ではない。
けれど彼と同じように、誰かを助けたいと、誰かの力になりたいと動いたクラスの友達なのだ。
僕が強制スリープに入っていた間、きっといっぱいスライムと戦ったのだろう。そして大物を討伐してドロップした魔石を持ち帰ったのだ。
褒めてもらおうなんてきっと考えていなかっただろう。
それでも頑張った結果がこれなんてあんまりではないか。
どんなに大丈夫そうに見えたところで、本当にそうかなんて誰にも分かりやしない。
頑張って、無理してそう繕っていることだってある。
友達が近くにいて、一緒に道のものに立ち向かっていたから頑張れたのかもしれない。
僕達大人が恐れる、人を襲うモンスターを彼らが全く怖がっていないなんてことはないのだ。
「それと……明日からは僕ももっと頑張るから! だから分からないことがあったら教えてほしいな~なんて……」
「仕方ないな、スーさん」
まだ高校生の彼らに頼ってばかりの僕は大人失格かもしれない。
けれどこんな僕の言葉で仕方ないなって笑ってくれるなら、僕は大人失格の烙印を押されても構わないのだ。
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