8.いちご味の歯磨き粉
保健室に戻り、スマホを手にした柏木君だったが、戦闘中にすでに相当な量のチャットが溜まっていたらしい。
「まとまったら話すから! あずさとスーさんは先に歯磨きしといて」
そう言ってスマホとのにらめっこに突入した。
二人が帰ってきた時に受け取った袋の中から歯ブラシと歯磨き粉を取り出し、あずさちゃんと対面しながら歯磨きをする。
今更さぼりはしないのだが、あずさちゃんは自分の手を動かしながらも僕がしっかりと歯を磨いているか監視する。
それにしてもイチゴの歯磨き粉なんていつぶりだろう。
本当は歯ブラシと共に入っていた、小さな歯磨き粉の方を使わせてもらうつもりだったのだが、あずさちゃんによって用意された歯ブラシにはすでに彼女のお気に入りが付けられていた。
コーヒーを嗜む一方で歯磨き粉は意外と甘い。
思えばべっこう飴も喜んで食べていたし、出会った時のような大人びた印象はすっかりとどこかへ行ってしまった。
神田君や柏木君、他の子達と一緒に過ごすうちに気を許してくれたようだし、こちらの方が素なのかもしれないな。そんなことを考えながらペットボトルの水を手で作った皿に注ぎ、口をゆすぐ。ペッと吐き出してから隣で同じようにお皿を作っているあずさちゃんの手にも水を注いで歯磨きは完了。
だが柏木君は未だチャット会議中。
カーテンを挟んで着替え終わったあずさちゃんはベッドに腰掛け、手持ちぶさたに足をぶらつかせていた。
「疲れたでしょ? 寝てていいよ」
「でも……」
「明日、話してあげるから。ね?」
「わかった。おやすみ、おじさん」
「おやすみ」
ベッドに横たわるあずさちゃんの首もとまで布団を上げて、さらさらの髪を撫でる。
その隣にはカロリーナ。
彼女だか彼だか、性別不明のウサギさんは主人に寄り添うようにしっかりと布団の中に入っていた。
この状況でいい夢を、なんて口に出すことは出来ない。
けれどカロリーナの頭を撫でて「夢の中でも頼んだよ」とお願いしておくことくらいは出来るのだ。
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