6.現実は世知辛い
「基礎ステータスは個人差があるからこれはあくまで一つの例だ。
どれをどのくらい強くするか、最低ラインや優先順位だけでも今から考えておくといい。
3分経ったら強制的に設定画面から出されて、残りの『初期ステータスポイント』はランダムで振り分けられちまう。
俺はとりあえず半分残しておいたけど、レベルアップした時に見えた画面に『初期ステータスポイント』を表示する欄はなく、その代わりにいくつかの項目にポイントが振り分けられていた。
下方修正されていた項目はなかったけど、あり得ない話ではないだろうから100全て振り分けるのが一番だと思う。
ゲームみたいに親切に説明してくれたりとかはないから、詳しいこととか、各ステータスの平均がどれくらいかとか全然わかんねぇ。だからあんまり数値が低いのはヤバイって思っといた方がいいかもな。
わかんなかったらとりあえずHP、耐久、敏捷とかに振っておけよ。特にスーさん! モンスター倒さなくても死なねぇから!」
「え、僕?」
生徒に混じってまじめに聞いていたが、まさかここで名指しされるとは……。
確かに魔法とか使ってみたいな~とか思っていた。
なにせせっかくゲームが現実になったのだ。若干危険があっても冒険してみたいと思うのはゲーム好きとして当たり前ではないだろうか。
だというのに周りの生徒達は僕の顔を見つめて「ああ~」とやけに納得したような声を上げる。
それだけでなく「ジョブ設定とかあったら魔術師とか選んで自爆しそう」だの「しょうもないもの、武器設定しそう」だの散々な言い分である。
「そんなことは……」
だが言い訳が上手く出てこない。
なにせジョブ設定があったら僕は魔導師を選ぶ。
スライム相手にファイヤーボールとか打ってみたい。
あまり運動が得意ではない僕が、モンスターと対峙した場合それぐらいしかできる気がしないというのも大きい。
柏木君はハサミでどうにかしたらしい。
だがそれは彼がモンスターを何体か倒して学校に登校し、その後にクラスメイトにルールを説明するだけの体力と優しさを持ち合わせているからである。
僕ならきっと3分で設定完了することなんてできやしない。
アドリブに弱いタイプなのだ。
ましてやろくに説明もなければ、状況理解することすら3分で足りるか怪しいものだ。
そう考えていくと、魔法が打てるようになったところで初めのモンスターにやられて終わり……なんてことも考えられる。
もしかして僕、モンスターに会ったら死ぬのでは? という気さえしてきた。
ゲームのステータス、レベル上げには慣れていても、所詮生身の僕は借り物競走で走ったりしただけで筋肉痛に苦しめられるアラサーなのだから。
お読みいただきありがとうございます!
ほんの少しでも面白かった!続きが気になる!更新まってる!と思ったら是非ブックマークや評価(評価欄は最新話の下にあります)をお願いします。
作者のモチベーション向上に繋がります。