19.侵入経路
とりあえず一体は倒せたものの、校庭に着々と増えていくスライムを僕一人の手でどうにか出来る自信はない。
保健室にいると約束したし、それを破るつもりもない。
だからドアの前に落ちた魔石だけ回収して、後は大人しく考察でもすることにしよう。
そう思い、僕は孫の手を握るのとは逆の手をドアにかけた。
するとどこからかピチッ……ピチッ……と音が聞こえてくる。
先ほどとは違うが、スライムが進行してくる音だろう。
ゆっくりとではあるが、確実に音は近づいてきている。
また来るのか。
討伐方法を理解しているためか、心に焦りはない。
落ち着いた心持ちでドアから離れ、部屋の真ん中あたりにどんと構える。
今度は物理攻撃からしてみることにしよう。
肩たたき付き孫の手を握りしめながらあたりを見回す。
けれど音の主はなかなか顔を出すことはない。
ドアを通過する時はきっと先ほどのような音を立てるはずだ……とそこまで思いついて、はたと気づいた。
さっきってこの音してたっけ?
そう、先ほど僕は『外の音が聞こえない』と感じたはずだ。
確かに聞こえなかったから。
ならこの音は?
先ほどとは違う状況に陥っている?
モンスターが違うのか、それとも侵入経路が違う?
でも蛇口からは捻らなければ出てこないはず…………いや、下水ならこちらからアクションを起こす必要はない。
この部屋で下水と繋がっているのは――シンクだ!
そこに駆け寄ってみれば、普段水を吸い込んでくれるはずの穴からは黒と青が混じったような物体がプルプルとわき上がってきていたのだ。
こんなところからも来るなんて……。
どうりで部屋の中心からあたりを見回しても姿が見えないはずだ。
こんなところにもやってくるということは、学校中の流しはもちろん、トイレからもわき出している可能性は高い。
二人が帰ってきたら早速働いてもらうことになるな。
そんなことを思いながら、僕は流しの穴めがけて『熱湯』をそそぎ込む。
スライムが穴をふさいでくれているお陰で一回発動しただけで、後はシンクに溜まってジリジリとスライムを追いつめていく。
それを僕は時計を確認しながら、観察する。
すると時間の計測始めてから1分と経たずにゴミ受けに魔石がドロップした。
『『スライム』の討伐に成功しました』
攻撃してこないか、効いているかの確認をしている時間もあるから正確な時間ではないけれど3分も経っていないのは確実だ。
アナウンスも流れたし、これで安全……といいたいところだが、アレが一体目でまだまだ上がってきている可能性はある。
安全に備えるに越したことはない。
僕は今度は排水溝にいるかもしれないスライムめがけて、熱湯を流し込んだ。
パイプが膨張するかもしれないから普段だったら絶対にやらないけど。
心配損だったらいいと思いながらシンクをのぞき込む。
すると頭の中で次々とアナウンスが流れ込んできた。
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
『『スライム』の討伐に成功しました』
このパイプだけでもこんなにスライムが潜んでいたのか。
寝ている時にでも襲撃されたら結構危なかったかもしれない。
事前に防げて良かった。
ふうっと息を吐き、意外と使えるスキルであった『熱湯』に感謝するのだった。
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