17.色違いのスライム
窓の外は校庭だ。
見慣れた赤色の陸上トラックの上を、陸上部の生徒ではなく、スライムが直進している。
幸運にもスライム達は僕に気づいていない上に、窓越しでも観察は可能だ。
窓にへばりつきながら、セーフティーエリアの進入を果たした新種のモンスターの観察に励む。
まず数は視認出来る範囲では全7体。
大きさは朝、道路で見かけたものと同じくらいで、あずさちゃんを飲み込んでいたものよりは小さい。
だがその身体に日中のような透明感はない。
深い海の底のような、暗い青。闇への親和性が強く、あれに飲み込まれたら外から見つけだすことは難しいだろう。ここは校舎から漏れるライトがあるが、街灯などがない場所で遭遇したら気づかない可能性が高い。
進行の際に音は伴うのか、また避けて通ることが出来るのかは不明。
また発生源も不明である。
飲み水や手洗いの水は全て災害時用にストックしてあったペットボトルから使用している。
つまりあずさちゃんが教えてくれた『蛇口からスライム』という現象は、どこかから水漏れでもしていない限りないと言えるだろう。
水漏れ、というかスライム漏れか……。
スライムによってパイプ内が詰まり、破裂する。
あり得ない話ではないだろう。
明日の朝、誰かに付き添ってもらって一度校内の点検をしてみることにしよう。
これは僕一人じゃ危険だからとりあえず保留ということにしておいて、一番考えやすいのが普通に校門などの、開いている場所からの進入だ。
セーフティーエリア内にモンスターがいるということは、今のところ分かっている情報を元にすると、セーフティーエリアが機能していないことになる。
校庭にいるモンスターのレベルが、体育館に置かれた魔石をドロップしたモンスターよりも強いのか。
それとも昼間は適用されていなかった何かがあるのか。
例えば魔石の破損や消失。
その物体が持ち合わせたエネルギー以上を消費していれば負荷がかかるのも当然。それに継続して使い使い続ければエネルギーが切れることもある。リモコンに入れた乾電池と同じだ。電池だったら充電出来る物もあるけれど魔石はよく分からない。
これに該当するなら新たな物をゲットしてくれば直近の安全は確保出来るし、これからいくつかストックしておけば済む話ではある。
僕の手元にはマンドレイクの魔石があり、二人が帰ってくれば相談だって出来る。
ただ厄介なのは、夜と昼でルールが変わっている可能性だ。
そうなれば昼に集めた情報を当てにして行動すれば怪我をする、もしくは殺される。
それにこれと同じ状況が他でも起きていたとしたら……。
柏木君とあずさちゃんは対処出来ているだろうか。
帰って行った彼らがいるセーフティーゾーンに進入されていないだろうか。
ケガはしていないだろうか。
僕が考えている間にも、窓の外に次々とスライム達が押し寄せる。
いくら初めに戦った物よりも小さいとはいえ、性質が違うかもしれない。
今度はマンドレイクモドキのように攻撃してくるかもしれない。
打撃は効かないかもしれない。
熱湯じゃどうにもならないかもしれない。
二人が帰ってきてから話し合う方が効率的だ。
けれどその二人は本当に安全なのか。
対処方法が分かれば情報提供だって出来るし、困っているようだったら迎えにもいける。
そうだ。いくら弱くても戦い方さえ、攻略方法さえ分かれば戦いようはいくらでもあるのだ。
だから手始めに、閉じたドアの隙間からギチギチと進入してくるそれを相手にしようと思う。
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