14.新しいスキル②
「ねぇ二人とも」
「何?」
「どうかした?」
「取得できる攻撃魔法ってどんな感じの名前?」
きっと顔を見合わせた二人の口から投げ縄、石つぶて、放水みたいな名前が挙がるだろうと期待した。
けれど彼らは指を開きながら次々に挙げていく名前は『ファイヤーシールド』『ウォーターボール』『ウィンドスライサー』『ハウリング』――とどれもファンタジー世界の魔法の名前として聞いたことのある物ばかり。
なかには柏木君が初日に挙げていた『断裁』のように漢字の名前もあるらしいが、それは武器ごとに特化した攻撃の魔法らしい。
確かにもぐら叩きとかひっかきは肩たたきつき孫の手ならではのスキルと言っても過言ではないだろう。
だが今回の3つは正直全く関係がないのではなかろうか。
泥団子とか、幼稚園で行われていた泥団子発表会以外の活躍の場が思い浮かばない。
あれでどう戦えと!?
インテリアとして置く以外に活用場所ある!?
まさかスキルまでもお役立ちポイントがないとは……。
ここまで来ると悲しみを通りこして笑えてくる。
柏木君達には悪いが、戦闘は早々に諦めて、補助要員もしくは炊き出し要員として活躍すべきではなかろうか。
水道はスライムによってふさがれているから熱湯でも何でも取っておけば役立ちそうだし、着火は今は取らないにしてもガスが使えなくなった時にでも取得出来れば便利だろう。
「で、スーさん。なんかそれっぽいのあった?」
「スキル:熱湯を取るよ!」
「は? 熱湯って、カップラーメン作る時にいれるあの?」
「うん」
「…………冗談だろ?」
「字、一緒だよ」
掴んだままのボールペンでノートの切れ端に『熱湯』と書いてみせれば、柏木君はマジかよ……と頭を抱える。
冗談だ、と言ってあげれたらいいのだが、残念ながらマジである。
頭を抱えたくなる気持ちはよくわかる。甘くてしゅわっとしたサイダーが飲みたい時に気が抜けた炭酸水を渡されたのと同じ気持ちだろう。炭酸がなければたたの甘い水である。
熱湯だって魔法は魔法だけど、この手の知識が僕の数倍はあるだろう柏木君でも生かす方法はなかなか浮かんで来ないようだ。
「他に取れそうなのはなんかある?」
「『着火』と『泥団子』かな」
しっかりとその名称もノートに書き記す。
けれどはい、と見せるよりも早く「熱湯で」と決断を下す。
二つのスキル名に一切のつっこみはないが、代わりに頭を抱え始める。
「二つよりは役立ちそうだけど、熱湯って……」
やっぱりそうなるよね……。
やかんに入れてスライムが沸いた時に上からかけられるくらいしか思いつかない。
他の魔法みたいに派手さはないし、どことなく絵面は雑草の処理だが一応スキルで出した物なら効果はあるはずだ……と信じたい。
効果があるようだったら、体育館にスキルで出した熱湯を入れたやかんを置いておくのも手かもしれないな。
でもそれくらいなのだ。
だが泥団子よりは役立つはず。
泥団子……使うとしたら出現したそれを投げつけるのだろうか。
レベルが増ごとに硬度が上がるとかだったら使い道はありそうだが、それを命中させることが出来るかの問題が浮上することとなる。
野球部の子が取れれば有用なスキルだろうが、僕がとっても扱いに困りそうだ。
それに堅さだったら肩たたき付き孫の手のゴルフボールの部分があるし、そちらの命中率はほぼ100%だ。
あのとき焦りながら手に取った物ではあるが、こうして考えてみるとなかなか僕向きの武器だったようだ。
「とりあえず取得してみて、どんな感じか確認してみてよ」
「うん」
こうして僕は新たなスキルにして、初の魔法系スキルを取得したのだった。
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