11.歯磨き問題
「さすがに歯ブラシのストックまでは確保してなかった。家にストックあったっけな?」
柏木君はポリポリと頭を掻くとボソリと呟いた。
するとあずさちゃんは今度は柏木君の元へとトコトコと移動して、きらきらした視線で彼を見上げる。
「パパが出張する時に持ってくからね、袋に入ったやつ、あずさの家にいっぱいあるよ!」
『袋に入ったやつ』というとホテルに置いてある、使い捨ての歯ブラシセットのことだろうか。
「マジか!」
「うん」
たまに日用品のストック補充にネット通販を使う時に『お得セット』とか『業務用』と書かれたものを目にする。
一個あたりや100gあたりなどの単価が安くなる分、一回で大量に購入することとなる。場所は取るけど消費量が多い日用品だと便利なのよ、と猿渡先生が言っていた。
けれどまさか使い捨て歯ブラシを個人で購入する人がいるとは想像もしていなかった。最近ではアメニティが置かれていないホテルも多いらしいし、意外なところに需要があるものである。
「俺とスーさんの分、分けてもらっていい?」
「いいよ!」
「え、僕のはいいよ」
水でゆすぐだけでも結構スッキリするし、必要なら家に帰った時にでも持って来ればいい。
わざわざ譲ってもらうほどではないだろう。パタパタと手を顔の目の前で振って、遠慮する。
けれどそんな僕に2人は白い眼を向ける。
そしてボソボソっと小さな声で呟くのだ。
「虫歯、いたい……」
「教育上、よくない……」
2人してなんなんだ!
あずさちゃんなんて会ってまだ一日と経ってないはずなのに、すっかり僕の扱いを取得してしまっている。
僕ってそんなに分かりやすいのかな。
それともこの歳の子は周りからの吸収が早いものなのか。
だが歯磨きが習慣化しているということは非情に素晴らしいことである。
今後も朝晩2回しっかりと磨いて、虫歯に悩まされないように成長してほしいところだ。
そんなことを祈りつつ「僕にも分けてください!」と頭を下げるのだった。
ちなみにそんな僕を見て、2人が満足そうに頷いていたのは言うまでもないだろう。
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