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19.おにぎりは梅派?塩派?

「スーさん、大丈夫か?」

「頭くらくらしてない?」

「暑くない? 大丈夫? 隣の部屋行く?」

「あ、俺椅子持ってくる」

「とりあえずほら、お茶持ってきたからゆっくり飲んで」

「ご飯食べられそうだったら言って。おにぎり握るから」


 みんな僕を心配してくれたらしい。

 だから眉を下げる彼らにぺこりと頭を下げる。


「迷惑かけてごめんね」


 おにぎり作れなくて。

 モンスターの討伐、出来なくて。その上、魔力切れなんかで倒れて。

 ここまで運ばせてしまって。


 たくさんの意味を込めて放った言葉。

 けれど彼らはきょとんとした表情を浮かべて、パチパチと瞬きをする。かと思えば、誰からともなく顔を見合わせてから至極まじめな顔を作って見せた。


「迷惑はかけられてねえよな」

「心配はしたけどな」

「でもスーさんが心配なのはいつものことだし」

「至って通常運転だな」


「みんな……」

 これはいつも心配をかけていることを反省すべきなのだろうか。

 それはそれで先生として、いや大人として問題があるように思えるのだが……。


 今度時間があった時にでも聞いて改善することにしようと心に誓う。


「でもまぁ、スーさんのおにぎり食べられなかったのは残念だけどな」

「からあげ多めに食っといてそれ言うか?」

「人間、満足したらそこで終わりだぜ?」

「強欲すぎんだろ!」


 だがどうやらこの子たちの負担にはなっていないようだった。


 それならまぁ良かった、のかな?


「今からでもおにぎりくらい握るよ?」

「え、マジで? じゃあ俺、塩にぎり~」

「あ、俺も俺も」

「お前ら、ズルいぞ!」

「んだよ、お前も頼めばいいじゃん」

「だってスーさん、今起きたばっかだし……」

「食べたいなら握るよ?」

「じゃあ俺のは梅干し入れて欲しい」

「うん」


 俺は俺はと各方面から上がる手に、何を何個握ればいいか分からなくなる。


 だから「梅派の子~」「塩派の子~」と順番に手を挙げてもらう。挙がった手を数えるとぴったり8人ずつ。


 一休みさせてもらった僕はコップ二杯のお茶を飲むと、早速作るか、と腰を上げる。


 するとたった一人、挙手に参加していなかった子が僕の膝に手を乗せる。


「あずさ、お塩のと梅のとで二つ食べたい」

「あずさちゃん、それはずるいぞ!」

「だって両方食べたいんだもん」

「俺だって両方食べたい!」

「俺だって!」


 神田君だけでなく、他の子ともすっかり仲良くなれたらしい。

 先にご飯食べていたらしいし、同じ釜の飯を食った仲ってやつなのかな?


 それにしては同じレベルで揉めているような気がするけど……。

 でも食欲があるのは元気な証拠だ。


「わかった。みんなの分両方握るから喧嘩しないの」


 みんな外で頑張っていたみたいだし、いっぱい食べられるうちに食べておくのが一番である。


「すぐ握るから待っててね」とみんなに言い聞かせ、僕は今度こそ炊飯釜へと向かうのだった。


お読みいただきありがとうございます!


これにて3章『学校』終了です。


次話より4章『避難場所と集会場所』に入ります。


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