6.不謹慎だけど希望
「スーさん、落ち込まないでよ。こういうのは適材適所が大事だってスーさん言ってたじゃん。だから指示だして。僕は僕の得意なことをやっとかないとあいつらが帰ってきた時困るから」
「うん……。そう、だね」
大人として、子どもが危険なことに顔をつっこもうとしたら止めなければいけないのだ。
普段なら。
今が普通の状態なら。
だが今は違うのだ。
大人とか、子どもとかそういうのは関係がない。
それでも……。
こうして画用紙とペンを用意することだけが僕に出来ることなのだろうか。
引き出しから油性ペンを取り出しながら、どうすべきか考えていると強い力で背中を叩かれる。
「スーさん考えすぎ! もっと楽に行こうぜ。大体あいつらはさ、人の役に立てるって自分から行ったんだ。だからあんまりスーさんが気に病むと、あいつらも気にするから」
「人の役に……」
「そう。まぁ理由はそれだけでもないと思うけど」
「え?」
「佐藤ってさ、中学ではバレー部の強豪校でエースだったんだけど、怪我して飛べなくなったから。だからまた全力で飛んで、腕が振れるのが楽しいみたい。まぁ振ってるのフェイスタオルだけどな!」
はははと笑う神田君の顔はどこか嬉しそうだった。
僕は佐藤君の試合を一度も見たことがないけれど、幼なじみの彼はきっと何度も目にしてきたのだろう。
でもそうか……。
楽しい、のか。
それはあまりにも不謹慎で、けれど希望を与えてくれる言葉だった。
「ならおにぎりいっぱい握っておかないとだね」
「その前に避難場所の紙貼らなきゃだろ! ほら、早く文面考えて」
「文面っていうか、簡単に、矢印と一緒に避難場所はコチラって書いたものでいいんじゃないかな。体育館までの道にコーン置いてテープで固定すればわかりやすいでしょ」
「了解」
「って、それは僕が書くからいいよ」
「いいよ、俺が書く。だってスーさん。字、汚いじゃん」
「っ……」
それは僕も気にしていることだった。
これでも学生時代のノートに比べればずっとうまくなった方なのだ。
それでも書道部に所属していて、小学生の頃から何度も賞を取っている神田君と比べれば雲泥の差がある。
比べる相手が悪すぎる。
画用紙と油性ペンは半ば奪い取られる形となって神田君の手に渡る。
「……旗取ってくる」
「よろしく」
適材適所なのは分かるが、僕の適所ってもしかしておにぎりを握るところなのか?
そこだけなのを寂しく思うべきか、それともまだやるべきことがある分マシと考えるべきか。
少なくとも彼らより体力が劣るのは事実だ。
いくらステータスを割り振ったとはいえ、こればかりはどうしようもないことだった。
校長先生の席の後ろにある棚から防災用の『緊急避難場所』と赤字で書かれた旗を取り出す。
「じゃあちょっとかけてくるね」
「一応武器持ってくんだよ」
「分かったよ」
これじゃあ一体どっちが先生なのかわかったものではないな。
そんなことを思いながら、校門へと向かうのだった。
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