1.僕達以外の人
「スライムどっかいっちゃったね」
「うん。でもどっかいった、というか逃げられているような?」
あずさちゃんと歩き始めること数分。
彼女の歩幅に合わせながら、その上、いつモンスターを見かけても逃げられるようにと神経を張り巡らせながら歩き続けていた。
だが不思議なことに公園を出てからというもの、一度もスライムどころかモンスターとすれ違っていないのだ。
遠くにその姿を見つけはしたのだが、決まって僕たちがいる方向とは逆方面に進行していく。
それも僕が公園にたどり着くまでに見かけた個体よりもずっと早いスピードで。
これがもし突撃してくるのだったらあずさちゃんを抱き上げて逃げなければならないのだが、その心配はとりあえず立ち去ってくれたようだった。
それが1体や2体ならまだしも数体はいる。それも気づいただけで、の話だ。もっと多いかもしれない。
もしかして、どこかにおいしいご飯があるとか?
その『ご飯』が人でなければいいのだけど、確認しに行く勇気はない。
特に悲鳴が聞こえてこないから大丈夫だと信じたいものだ。
とにかく僕は学校を目指すだけ。
絶対に学校が安全とはいえないし、蛇口をひねればスライムが出てくるかもしれない。
それでも……。
自然とあずさちゃんの手を包む力が強くなる。
絶対守らなきゃ。
あずさちゃんのサラサラとした髪を上から眺めていると、彼女はふと何かに気づいたようにこちらへと顔を向ける。
「おじさん」
「どうしたの?」
「あそこに誰かいる」
「え?」
小さな指で指すのは目的地である、僕たちの学校だった。
だがあまりにも距離がありすぎて、あずさちゃんの言う『誰か』を見つけることが出来ない。メガネをかけるほどではないが、幼い子どもの視力の良さと比べれば悪い方なのだろう。目を凝らしても、何かがいる……かも? としか思えない。
「人だよ! 人がいる!」
けれどあずさちゃんはそこに人がいることに確信を持っているようだった。
僕と繋いだ手はそのままに、駆けだしたのだ。
自動販売機に向かう時はふらついていた身体も、もうすっかりと元気になったのかまっすぐとゴールへと突き進む。
回復して良かった。
心からそう思う反面、早すぎないかと身体が悲鳴を上げている。
けれどはしゃぐあずさちゃんをなだめる体力を捻出することは出来ず、ただただ転ばないように足を動かすだけ。
うつむきがちの視界に校門がチラリと映る。それを合図にあずさちゃんはぴたりと止まってくれる。
やっと止まった……。
距離にすると数百メートルといったところだろうか。
陸上部の子なら短距離というだろうが、アラサーの僕がこの距離を全力疾走するのは結構つらい。
ステータスアップに伴って体力が向上しているのに、だ。
もしかしてあずさちゃんのステータス、特に敏捷と体力って結構高い?
孫の手を持つ手を膝につき、ゼーハーと荒い呼吸を繰り返す。そして何とか息を整える。
「ほら、おじさん、人だよ!」
頭の上に降り注いだのははしゃぐあずさちゃんの声と――。
「みんな、スーさんが到着したぞ~」
聞きなれた生徒達の声だった。
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