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7. ステータス設定の効果②

「鈴木先生? どうかしましたか?」

「……先生は今、もう東京に入りました?」

 おそらくそれは現在地だ。

 まだ朝も早い時間。埼玉県在住の校長先生はまだ東京に踏み込んでいない可能性がある。


「まだだが?」

 僕の考えを肯定するように、校長はなぜそんなことを聞くのだろうかと疑問を孕んだような声で答えてくれる。


 やはり僕の考えは正しかった。

 なにせあの無機質なアナウンスは確かに『ダンジョン外でモンスターの発生が確認された』『東京』地区が『エリア化』したと言っていたのだ。


 僕がアナウンスの指している『東京』地区にいたからそのアナウンスが流れただけという可能性もあったが、校長の言葉から少なくとも『埼玉』地区はまだ安全と言える。


 他の『千葉』『神奈川』はどうなっているか、未だ分からない状態ではあるが。



「先生、落ち着いて聞いて下さい。どこかの駅がダンジョン化したのではなく、『東京』が『エリア化』しました」

「エリア化?」

「おそらくダンジョン化と同じ現象が広範囲、今回だと東京都内に起きたのではないかと……」

「そんな……」


 先生の声は酷く弱弱しいものだった。

 僕だって聞く側だったらすぐには信じられないはずだ。


 柏木君の言葉がなければ、きっと今の状況だって飲み込めていないはずだ。駅にさえ近づかなければ安心だと思い込んでいたはず。


「危険なので先生は学校には来ないでください」

「……分かった。猿渡先生には私から連絡しておきます。きっと彼女もまだ東京には入っていないはずです」

「お願いします」


 今日学校に来る予定はない先生の中には東京在中の先生がいたはずだが、そちらは上手く切り抜けてくれることを祈るばかりである。


「鈴木先生はこれからどうするつもりですか?」

「僕は学校に行きます」


 僕は学校に行かなければいけない。


 生徒達が来る保障なんてない。

 正直、来ないでほしい。


 なにせまだ自宅待機期間なのだ。

 エリア化がどのようなもので、外にどんな敵がいるか分からない以上、モンスターと遭遇しないようにすることが一番だ。


 だが来た時に僕がいなかったらきっと危険の冒し損である。


 それに学校という場所は緊急避難場所である。

 誰かが逃げ込んできた時、対応する人間がいなければ困るだろう。


「……そう、ですか。何となく先生ならそういうと思いましたよ。……先生、危険だと思ったら逃げてください。『敏捷』は上げたのでしょう?」

「ええ、もちろん」

「お気をつけて」


 校長先生との通話を終え、テレビの電源もオフにする。

 沢山の唐揚げとタマゴ焼き、それにクッキーにべっこう飴が入ったリュックサックを、すっかり軽くなった身体で背負う。そして右手には相棒の肩たたきつき孫の手を持つ。


 こんな状況でもなければ完全に不審者である。


 もしおまわりさんを呼ばれてしまったら……その時は全力で逃げることにしよう。

 もっとも、そのおまわりさんが人間に構っている暇があるかどうかは定かではないが。



お読みいただきありがとうございます!


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