6.ステータス設定の効果①
――リリリーン
呆けていた僕の意識を引き上げたのは聞きなれた黒電話の音だった。
あまり一般的ではないらしいが、我が家の固定電話と言ったら黒電話だった。だから僕にとっての着信音はそれであり、他の音だと『電話が鳴っている』と反応するのが遅くなってしまう。
学校の電話は仕方ないが、せめて自分のスマートフォンのくらいは、とこの音に設定したのである。音源探すのに手間取ったがそれだけの甲斐あって、今だって意識を引き戻すだけの力を持っていた。
「は! はいはい、今出ますからちょっと待ってくださいね~」
その音に一歩踏み出すと同時に、ハッと先ほどまでの足の重さを思い出す。
きっとこの足にあの感覚が迫りくるはずだ、と。
けれどそれがやってくることはなかった。
それどころか――。
「身体が軽い!?」
敏捷を上げたお陰だろうか。
あの3分間で身体が作り替わった、と?
そんなバカなことがあるのかと思いはするものの、やはり身体が筋肉痛でないどころか以前よりもずっと軽いのは紛れもない事実だ。
まるで現実じゃないみたい。
だがそもそもモンスターが出てくる時点で僕の知っていた『現実』は崩れ始めている。
たった3分で、本当に僕の基礎ステータスは100ポイント分上方修正されたのだろう。
おそらく、モンスターと戦うために。
武器はゲームの中の洋風の剣とか、魔法のステッキみたいなカッコイイものなんかじゃなく、どこにでもあるような肩たたきつき孫の手だが。
そんなことよりも今は電話に出るのが先だ。
キッチンに置きっぱなしだったスマートフォンの画面には『校長先生』と表示されていた。
確か校長先生も今日は出勤する日だったはず。
もしかして彼も『エリア化』というものに巻き込まれてしまったのだろうか。
そんな予感を抱きつつ、応答ボタンを押す。
「はい、鈴木です」
「鈴木先生、永田です。今日は私と猿渡先生、鈴木先生の番でしたよね?」
「はい」
「申し訳ないのだけど、どこかの駅で『ダンジョン化』してしまったらしくて、その事実確認のため、乗っている電車が少し遅れてしまいそうなんだ」
『ダンジョン化』――確かに校長先生はその言葉を使った。
『エリア化』ではなく。
それはつまり彼はあのアナウンスを聞いていないということになる。
「……もしかして、先生は無事なんですか?」
「ああ、途中で電車が緊急停止はしたが無事だよ」
その言葉にとある予感が頭をよぎる。
僕の予想が正しければ――。
つい先ほど消したばかりのテレビの電源を付ける。
するとスタジオ内は混沌にあふれていた。
きっと今テレビに映っている人全員が僕と同じように初期ステータス設定と武器登録をするように指示を受けたのだろう。
その存在を知っていたか、そうでないかなど関係なく。
この番組だけでは確証が得られずに、チャンネルを回す。
けれど局は変われど、回り続けるカメラに移し続ける光景はどこも変わらない。
誰もがそのアナウンスに戸惑っていたのだ。
なのに電話越しの校長先生はあまりに平然としすぎている。
僕やテレビに映る人達と、校長先生とでは何かしらの違いがあるはずだ。
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