5.僕の相棒
「これからもよろしく頼むよ」
晴れて僕の相棒武器となってくれたそれに挨拶をする。
といっても相棒歴はすでに5年に達している『肩たたきつき孫の手』である。
一人暮らしをする際に姉がプレゼントしてくれたのだ。
「あんた、一人暮らしするのに孫の手用意してないなんておっちょこちょいにもほどがあるわよ! 東京行ったら背中痒くなっても掻いてくれる人いないんだから……。ほら、姉ちゃんが用意しておいてあげたから、これ持って行きなさい!」――と。
弟が一人暮らしをするに当たって、まず初めに心配することがそれか……とも思ったが、かれこれ5年間世話になりっぱなしだ。
ただの孫の手ではなく、肩をたたくためのゴルフボールが手元についているのを目にした時にはなんだこれ? と顔をしかめたものだが、こちらもよく使わせてもらっている。
あまりの使い勝手の良さに父の日のプレゼントとして実家に贈ったほどだ。とはいえ、一人暮らしの僕ほど利用頻度は高くないようだが……。
何はともあれ、それほど認めている相手ではあった。
ただ『武器にする物』と考えた時に頭には挙がってこなかっただけで。
なにせ僕にとっての『肩たたきつき孫の手』は背中をかくか肩をたたくかするものだったのだ。それが当たり前すぎて他の用途などてんで思いつきもしなかった。
だから目にしたのは運命といっていいだろう。
武器として活躍するかどうかはわからないにしても、ちゃぶ台やリモコンをブンブンと振り回すよりもずっと使い勝手が良さそうだ。新聞に至っては使い方の検討もつかないし……。
前日にテレビ見ながら使っていてよかった~と安心しつつ、相棒となったそれは一体どこが変わったのかを観察する。
実はこの孫の手、ハサミや水筒のように大きくなっていないのだ。
パッと見た感じだと何も変わっていないようにさえ思える。
だが『武器』に設定した以上は何かあるはずだ!
そんな根拠のない思いを胸に、時間を気にせずに弄ってみた訳だが――。
何も変わっていなかった。
正確に言えば、僕にはどんな変化があったのか見つけることは出来なかった。
昨日、背中をかくために使ったのと同じ物である。
もしかして変化するものとしないものがあったりするのだろうか?
もしそうだとすれば、柏木君とテレビに青年は運が良かっただけということになる。
いや柏木君の場合、ハサミとはいえ一応刃物だから完全にどうにも出来なかった訳ではないだろうが。それでも大きさが勝利する確率を上げた可能性は極めて高いといえるだろう。
「僕、これから生きていけるのかな?」
頼る人のいない家の中で、僕の泣き言は妙に響いたのだった。
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