4. 運命の3分間②
「ステータスはこちらでよろしいですか?」
初期ステータスポイントが0になった時点でそんなアナウンスが流れた。
そして目の前には『YES/NO』のアイコンが表示される。
僕は迷わず『YES』の方を押し、武器設定に移る。
数値が1ずつしか動かせなかったせいで意外とステータス設定に時間を消費してしまったが、まだ時間は60秒ほど残っている。
後はあのリュックの中から、武器にする予定のピコピコハンマーを取り出せばいい。
使用方法はただ振るだけ。
柏木君とテレビに映っていた青年の武器を見ていると、どうやら巨大化するようだし、やはり軽いものが一番だろう。
軽さに特化したもので言えば、リュックの中にあった最軽量物はかんざしだった。
けれどかんざしが巨大化したところで、主な用途はおそらく棒のように振り回すだけ。
中国に古から伝わる棒術を習得していればそれも立派な武器になるが、僕には無理だ。
だからといってスタンガンは大きくなったら、自分も感電しそうで怖い。
折りたたみステッキはあの倍以上の大きさになったことを想定すると、開いてステッキ状に出来るという確信がなかった。
だからピコピコハンマー。
あれならブンブン振り回したり、振り下ろせばいいだけだ。
このアナウンスがいつ来るか分からなかったが、靴箱の横に置いておいたリュックサックの一番上に積んである。
それを手にするために早足で移動しようとした。
……のに、身体は思うように動いてはくれない。
「なんで? なんでだよ!」
なんで動いてくれないんだよ! と自分の足を叱責しても、まるで筋肉痛のピーク時かとばかりに足を動かそうとする度、筋肉がそれを拒否する。
筋肉痛?
もしかして『筋力』の数値を元の三倍ほどに上げたから?
筋肉痛が起こるなんてそんな話は聞いていないが、柏木君は若い。僕みたいに運動不足でもない。だからきっとある程度数値を増やしてもそんな弊害は起こらなかったのだろう。
まさかこんなところにも現実要素が出てくるなんて……。
武器候補になるものは全て玄関にまとめて置いてある。
せめて台所にいる時に起きてくれれば包丁とかお玉とか、そんなものが武器設定できたのに。
なんで今なんだよ……。
自分の運のなさに思わず涙が頬を伝う。
けれどそんな状態でもなおカウントダウンは続いている。
すでに残りは30秒を切っていた。
僕の手の届く範囲にあるものはちゃぶ台にリモコンと新聞くらいなものだ。
どれも武器には出来無そうなものばかり。だが設定をしない訳にもいかない。
そう思い手を伸ばすも体重移動に失敗して倒れ込んでしまう。
ああ、いよいよ終わりだ。
――そう思った僕の前にたった一つだけ、武器に出来そうな物が転がっていた。
それは一人暮らしには必須のもの。
伸ばした手でそれをつかむ。
「武器はこちらでよろしいですか?」
それに続いて発生した『YES/NO』のアイコンの『YES』を力強く押す。
するとカウントダウンはわずか1秒を残して止まった。
1秒って……すごいギリギリだ。
けれどそのおかげで武器なし、もしくはランダムに選ばれた武器を使うということは逃れることができた。
とっさの判断だったため、手の中にあるものは自分でもすごく予想外なものではあるが、ピコピコハンマーよりもずっと使い慣れていることだけは確かである。
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