13.待機
自宅待機をするように、と二重線を引いた文章を最後に付け加えたメールを作成する。
休校期間は未定。
対応が決まり次第、連絡をする予定である。
なにせ学校側も詳しい情報が伝えられるのを待機している状態なのだ。この対応も仕方がないことである。
もちろん1週間後に迫っていた定期テストも延期だ。
一部の生徒は学校に来なくてもいい上にテストも遠ざかったことを喜んでいることだろう。
うちのクラスの子達はすでにテストなんて頭の隅にすらあるかどうかは怪しいけれど。
一応自宅待機中は自主学習をするようにと書いてはいるものの、正直外出を控えてくれればなんでもいい。
このチャンスにテーマパークの絶叫系全制覇してやるぜ! なんて意気揚々と出かけて出先でダンジョン発生に遭遇しましたなんてことにさえならなければ。
想像してみると、授業を受け持っている生徒の中に該当しそうな子が何人かいる。
だが学校からはメールでの注意喚起以上のことは出来そうにはない。
だから僕は大人しくしておいてくれよ~と願うしかない。後は親御さんの領分だ。
生徒達が変なことに遭遇しないようにと願いつつ、送信ボタンを押した。
矢印の上に出現したサークルがしばらくクルクルと回ると『完了しました』という文字が出現する。
こういう時、連絡網の他に学内一斉メールシステムがあると便利だ。
主に災害時に作られたシステムだが、これも災害といってもいいだろう。突発的かつどこで起きるかもわからないのだ。
ただ他の災害と違って、起きてからどのような対処をすればいいか全くわかっていない。
またそれがどのくらいの被害をもたらすのか、予想すらも出来ない。
どの国でも『ダンジョンが発生した時用マニュアル』なんて用意していないし、過去の事例も存在しない。
本当に厄介なことになったものだ。
想像もつかない未来に思いを馳せながら、備蓄確認を終えた先生達の報告を黒板に記していくのだった。
それから先生達は持ち回りで学校に滞在することになった。
お子さんがいる先生や遠くから来ている先生はなるべく状況が把握出来るまでの数日間は担当から除く。代わりに僕のように独り身か家が近くの人を優先して表に組み込んでいく。
僕は独り身かつ家が近い。
だから率先して回数を入れるようにする。
「ごめんなさいね、鈴木先生」
「気にしないでください。先生の家のお子さん、まだ3歳になったばかりでしょう? それにうちのクラスの子達、休校にしても来そうなんですよね」
「ああ。あの子達、鈴木先生大好きですもんね!」
「好かれているのは嬉しいんですけど、なぜか心配されているので複雑でもあります……」
いなかったらいなかったで文句を言ってはこないだろう。
けれどせっかく来てくれたのに会えなかったら申し訳ない。
気持ちとしては田舎に孫が遊びにくる感じだ。
僕はまだそんな年ではないけれど、あまりにみんながおじいちゃん扱いをするものだからこんな考えになってしまうのも仕方がないのである。
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