11.安全第一
うちのクラスの子達もあの場へと向かったとはいえ、あのメンバーには駅構内でのことを知っている柏木君も付いているし、強行突破しようということはしないだろう。
帰り際に「ダメだったら鯛焼き食いながら戦略会議しようぜ」なんて話をしていたから大丈夫だろうとは思う。
きっと彼らのことだから途中で『鯛焼きの中身は何が一番か問題』に話がずれてしまったり……なんてこともあるだろう。
なんなら鯛焼き問題に熱を出して、そのまま帰ってくれればいいが、さすがにそれは期待できそうもない。けれど彼らのことだ。危険なことはしないでくれるはずだ。
なにせ彼らは安全をとるために、池袋ダンジョンに足を運ぼうとしていたのだから。
なにかと僕のことをおじいちゃん扱いしようとしてくるが、いい子達であることだけは確かなのだ。
だからうちのクラスの子達は大丈夫だろうな~なんて思いを馳せていると、沈黙を貫いていた教頭先生が口を開いた。
「私は、休校でいいかと思います。理由がわからない以上、次にどこが『ダンジョン化』でしたっけ? それが発生してしまうともわかりませんから。今回は昼ということで生徒達の中で危険な目にあった子はいないと思いますが、通学中に同じようなことがあったら困るでしょう」
確かにそうだ、と先生達は教頭先生の言葉に相づちを打つ。
災害でもないのに、電車は動いているのに、とのクレームは入ってくるだろうが、それは個別に対処していけばいいだろう。
学校としては生徒達に降りかかるかもしれない障害は未然に防ぐのが一番だ。
命を落とすリスクもあるかもしれないと柏木君は訴えていた。
彼みたいにたまたま居合わせてしまったのならばともかく、そんなの侵さないのが一番だ。
安全第一! 命は大事!
脳内で大事なことを繰り返してから、ハッと思い出す。
「あ、それなんですが!」
「どうしました、鈴木先生」
教頭先生は生徒達の中に遭遇者? ダンジョン被害者? はいないとしていた。
だがそれを前提として話が進められては困るのだ。
「うちのクラスの柏木君がダンジョン発生場所に居合わせました」
「は?」
「連絡、来たんですか? あの状況で」
あの状況というのはテレビに映っている人たちのような状況を指しているのだろう。
モンスターに襲われ、命カラガラ生き延びて出てきた状態。
やっと日の光を浴びることが出来たとホッとしたところで、今度はマスコミからの襲撃だ。
自衛隊や警官が守ってはいるものの、押し寄せるマイクやカメラは彼らの精神を一層すり減らす原因になっているのは間違いない。
あの状況でたかだか担任に連絡するか、と疑問に思うのも無理はない。
だが彼は僕に連絡をしてくれた訳ではない。
「いえ、登校してきました」
モンスターと戦ってきたその足でここまでやってきたのだ。
おそらく徒歩で。
そう考えると、柏木君が池袋を突破した時にマスコミが騒動を嗅ぎつけていたかどうかは別としても、よく学校まで登校してきてくれたものだ。
「登校? 嘘でしょう?」」
「いえ。来て、僕たちにダンジョン内でのことを教えてくれました」
この場の誰もがごくりと息を飲む。
「池袋駅に一歩でも入ればそこは非現実の世界が広がっています。けれど肉体は現実のままです。なのでゲーム感覚でこの中に入れば間違いなく死にます」
タイミングよく流れたのは、池袋ダンジョンを生きて突破したという、とある青年のインタビューだった。
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