9.テレビのニュース
職員室のドアを開けると、中からは今年で人気ランキング1位を3年連続で獲得した、有名なテレビアナウンサーの声が聞こえてくる。
校長先生の隣にテレビが設置されてはいるものの、主な活躍時は長期休みの間だけである。
後はよほどの事態があった時……。
もしやと思い、そのままテレビの見える位置へと移動する。
テレビ画面に映っていたのは予想通りの場所だった。
「私は今、池袋駅に来ております。本日の昼頃、池袋駅・所沢駅・横浜駅・浦安駅が突如として『ダンジョン』と呼ばれる異空間に飲み込まれてしまった模様です」
異空間に飲み込まれてしまったとは面白い表現をするものだ。
おそらくこのアナウンサーは『ダンジョン』というものの名称も存在も知ったのは初めてなのだろう。
クラスの子達があたり前のように知っていたから錯覚しそうだが、きっと国民の半数以上が『ダンジョン』を知らないのだろう。
実際、テレビの前を陣取っている校長先生と剛力先生は「ダンジョンってなんです?」「さぁ?」と首をひねるばかりだ。
「この『ダンジョン』と呼ばれる空間には未確認生命体が生息しているようです。実際に見た方によるとゲームの中に出てくるモンスターに似ているとのことです。
それらが駅の外に出てきたという情報はありませんが、詳しいことはわかっておらず、現在自衛隊が中に入って調査を進めている状況です。そのモンスターですが見た方の証言を元にお借りしたイラストがこちらです」
マイクを持つのとは逆の手で出されたフリップに描かれていたのは、僕が必ず発売日にゲットすることにしている人気RPGシリーズのゲームキャラクターだった。
スライム、ゴブリン、オークの三体。
ゲーム内では比較的初期のフィールドでも遭遇する、なんとも王道なモンスター達だ。
初めて出現したダンジョンだから、ゲームでは比較的弱いとされるモンスターが出現するのか。
はたまた分かりやすいようにと、これらのモンスターを選んだのか。
わかりやすさで選んだのならばその判断は正しいと言えるだろう。
実際、ダンジョンやモンスターについて知識が浅いどころかゼロに近い校長先生や剛力先生も「CMで見たことありますね」と呟いているのだ。
まず第一の段階、敵を認識させることに成功している。
その強さまでは伝わらないだろうし、この報道を通して「スライムとか余裕じゃん」と突撃し出す阿呆もいるかもしれない。
だがそんなのはほんの一握りだろう。
なにせ報道中に画面に映っていたのは現場に駆けつけたアナウンサーだけではないのだ。
頭から血が流れだす女性。
親の胸に震えながら必死でしがみつく子ども。
割れたメガネで駅から這い出てきた男性のスーツは破けてしまっていた。
中でのことを思い出して、胃の内容物を吐き出してしまっている人さえいる。
スタジオの声も途切れてしまうほどの光景。
けれどそれはまさしく今、池袋駅で起こっていることなのだ。
駅の中の映像はテレビでは流れることはないだろう。
だがこのニュースを目にした一定数の人はおそらくスマホでSNSを開くことだろう。
そして絶望するのだ。
フリップに描かれたそれと全く違うモンスターがいる映像に。
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