8.スキル会議
若い子ってこんなにも臨機応変に対応出来るものかと感心してしまう
だがだからといって僕のスキルを勝手に決めていいという話にはならない。
柏木君が一つまた一つと挙がるたびに黒板へと書き出していったスキルをキッとにらみつける。
「なんで僕のスキルを君達が決めるんだよ!」
けれどそれは全く効果を発揮することはなかった。
それどころか呆れたような目でなだめられる始末だ。
「だってスーさんちょっとでも傷ついたら死にそうだし」
「去年の体育祭後1週間くらいヨボヨボ歩いてたし」
「言っとかないと魔法系で固めた挙句、調子乗って魔力切れでへばりそうだし」
「あ、それあるわ」
「だろ? 誰かスーさんがへばってんの見つけた時用に身体強化とっとけよ?」
「そんなの取らなくても、スーさん一人ぐらい余裕で担げんだろ」
「それより『索敵』とか重要じゃね? スーさんって困ってる人見つけるとすぐ突っ込んでくし」
「それな! じゃあ俺、スキル候補に『索敵』とかそういう系あったら取っとくわ」
「あ、俺も!」
「じゃあ俺は『トラップ解除』とか取っとく」
俺は……と続く言葉はどれも僕を補助するためのスキルを取得すると宣言するものばかり。
おかしいな、僕が先生なんだけど……。
なぜ守ってもらう方向に話が進んでいるのだろうか。
もし僕が女性の教師とかだったら分からなくもないが、僕は彼らよりも一回りも歳が上の男である。
守ってもらうほど弱くはないつもりなんだが、だからといって自分はいかに立派な大人か、主にどれだけ肉体面で優れているのか彼らに語ることは出来ない。
筋トレ知名度トップ3の腹筋・背筋・腕立て伏せはどれも10回が限界だし、運動をすればしばらくは筋肉痛に悩まされてしまう。
去年の体育祭り後の2週間は湿布にお世話になりっぱなしだったし、上の方の階の授業が入れば憂鬱でしかない。
正直エレベーターを設置してくれないかと本気で願っているほどだ。
こんなんだから生徒たちに呆れを通り越して心配されるんだろうな。
自分の情けなさを噛みしめる。そして今度の休日には駅前のジムの一日体験を申し込むことを心に誓った。
自己反省を切り上げ、顔を上げると話し合いをしていたはずの生徒達は揃って僕へと視線を向けていた。
「ねぇ、スーさん」
「な、何?」
「とりあえずみんなで池袋ダンジョンに行って初期作業だけ済ませとこうって話になったんだけど、スーさんって今日部活の日?」
「今日からテスト前週間だから部活はお休みだよ……ってダメだよ! 危ないでしょう!」
「あ、もしかしてスーさん……池袋の階段すらアウトだったり? 手すり大丈夫かわかんねぇもんな。じゃあモンスターと対峙中以外のやつがスーさんを支える形で!」
「賛成!!」
「僕はそんなおじいさんじゃありません!」
どうやら僕は老人扱いされているらしい。
アラサーだけどまだそんな歳じゃないのに……。
大きな笑いが起きると同時に授業終了のチャイムが学校中に鳴り響いた。
その後、そのまま突入した終礼でもう一度だけ「危ないことはダメだからね!」と釘を刺してはみた。
だがおそらく効果はいまひとつだろう。
彼らは連絡もろくに聞かずにどの入り口から入ってどのルートを攻めていくか、脳内シミュレーションを繰り返しているのだから。
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