1.前略お母様 僕は元気にやってます
☆ご要望にお応えして、本作の数話分を1話にまとめた『日用品でモンスターと戦う世界になりました【合話版】』の連載を開始しました。内容は全く同じです。
・通常版だと文字数少ない!
・まとめて読みたい!
→『日用品でモンスターと戦う世界になりました【合話版】』(https://ncode.syosetu.com/n5470fo/)
・スマホでサクサクと読みたい!
・最新話をすぐ読みたい!
→『日用品でモンスターと戦う世界になりました』(こちら)
と読み分けていただければと思います!
前略お母様
早いもので、関東全域で電波障害が起きてから半年が経過しました。
テレビ中継で観たかもしれませんが、スカイツリーには『サンダーバード』とありきたりな名前を付けられた大きな鳥が未だ巣を作ったままで、撤去及び討伐の目処は立っていないそうです。
それでも限定的とはいえ、一般人による手紙の配達が許可されたのは嬉しいものです。欲を言えばこの手紙があなたの元へと届き、僕の安否だけでもお知らせできるとなお嬉しいです。
返事はおそらくこちらへ届くことはないと思うので不要です。
ただあなたの息子は元気に過ごしているということだけ知っていてくれればそれでいいのです。
鈴木 陽介
すでに10通以上は書き上げた手紙と同じ内容、いや次第に簡素になってきた内容を支給された便箋へと認め、封をする。
今度は届いてくれるだろうか――と微かな祈りを込めながら。
1年前、突如池袋駅・所沢駅・横浜駅・浦安駅の計四か所、ほぼ同時にダンジョンが出現した。
正確には駅がダンジョン化したというべきか。
その場にいた人達の情報によると、視界が歪み、気を失ったのだという。
そして気づけばダンジョンが発生していた、と。
言葉だけでは到底信じられないことではある。
だがその日生徒達が見せてくれたツブヤイッターには、秒単位でその出来事が大量に流れていた。
中には人がモンスターに襲われている動画まで載せてあった。
あまりにグロテスクな映像にそれからすぐにアカウントは凍結されてしまった。そのため今は閲覧することが出来ないが、多くの人の目に映ったことだろう。
それでもやはり信じ難いものではあった。
ダンジョンなんてそんなの、ファンタジーの中のものだ。
動画に写り込んでいたゴブリンによく似たモンスターっぽいものもきっと美術系の大学の学生の卒業制作か何かだろう。
そう、笑って過ごしていた人も多かったことだろう。
実際、僕もその一人である。
笑ってはいなかったが、最近の美術学生はレベル高すぎやしないかとマジマジと見入ってしまっていた。
そして「これってどうやって作っているんだろうね」なんて美術部の生徒に思わず尋ねてしまったほどだ。
ちなみにその回答は「多分この皮膚とかは薬品使って溶かしたりしてるとは思うんすけど……。何使ってるか全くわかんないの、悔しいんで調べときます!」だった。
なんとも真面目な生徒である。
だがそれが作り物なんかではなく、現実であったことを思い知らせされたのは、ダンジョン発生から4時間が経過した時のことだった。
だけどあの時の僕は、まさかこんなに大事になるとは思っていなかったんだ。
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