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さまざまな短編集

戦争の中の日常“畑”

作者: にゃのです☆

 最後最後とはやし立てる。

 何も最後じゃないじゃんか……。

 戦争も恋も……。

 戦いは日常的に行われている今日この頃。

 国は“最終戦争”と謳っているが実際はどうだ?

 日々死人が増え続けているだけじゃないか。

 戦線もこの町に目掛けて迫ってきている感覚がする。

 一般市民のウチには関係ないが、死にたくはないなぁ。


「ちょっと、アニー! なにぼーっとしてるの?」

「ん、ああ、ごめんごめん」

「やっぱり気になる?」

「そうね。戦争始まってからだんだん近づいていると思うんだけど」


 畑仕事しながらでも聞こえてくる咆哮音と炸裂音。

 そんな音に交じって人間がわめき叫ぶ声が聞こえてくる気がしてならない。

 それなのに今日も空は青い。


「アニー、これ運んで!」

「あ、はーい」


 収穫し終えたイモを木箱に詰めて荷台のあるところまで運ぶ。

 一箱数キロある物を持ち上げるのは骨が折れる。

 細身のウチには力仕事は似合わないんだけどなぁ。

 どっかの調理場でイモを切っているほうがウチに似合っている気がする、のは望みすぎか。

 今の時代は女性でも兵士やっている時代だからね。

 こうして戦線後方でのんびりイモ掘りがウチには合っているのかも。


「これここに置きますね」

「あらアニーちゃん。お久しぶり!」

「となり町のシャウディアさん! 久しぶりですね!」

「元気そうで何よりね」

「ところでシャウディアさん。旦那さんは……」

「ふふ、そんなこと聞くのはあなただけですわ」

「すみません」


 シャウディアさんの旦那さんはあの咆哮の中にいる。

 いつ戦死の報が届くかわからない。

 ウチも仲がいいだけに気になる。

 

「まだ届きませんね。元気でやっていると思うんだけど」

「普段の状態でも手紙はなかなか出せないですからね」

「あまり心配はしていませんわ。ひょっこり帰ってくるかもしれません」

「何事もなく帰ってきてほしいですね」

「それはそうと、アニーちゃんは?」

「そんな話はないです。第一泥んこの女を欲しがる人はいないでしょう」


 ふふふ、と笑われてしまう。

 泥んこで会うのは冗談だ。ちょっと、でもきれいにして会いたい。

 だけど、そんな人がいたらの話だけどね。

 

「そうね。それじゃあまた来ます」

「ええ、お待ちしていますよ」


 いつもこう。

 イモを買いに来てちょっと世間話、ほとんど身内話だけどこれが今を楽しんでるってことになるのかも。

 いつ終わるかわからない日常を楽しむために今日を生きる、って変なの~。


「アニー! 早く来て!」


 ん? どうしたのかな?

 呼ばれたとこに向かって小走りで向かう。

 畑の場所まで戻ると作業していた人たちが集まって空を指さして何かを見ている様子だった。

 ウチも見上げてみると、ぽつぽつと黒い点が列をなしてこっちに向かって来ている。

 初めて見るものにみんなは何にもできないでいる。

 戦争中であり、前線に近い。そのキーワードだけで想像できるのは何かが起こっているということ。

 危険なことには変わりない。


「みんな! なんかわからないから逃げよう! あっちの洞窟にでも行こう!」


 ウチがそう言うとみんなもそうかもと言いながら、町のみんなにも声をかけて洞窟に向かって行く。

 そうしていると空飛ぶ黒いモノから何か落とされて誰もいない町が爆発し始めた。

 粉々に吹き飛ぶ家、みんなが耕した畑にも穴が開いてイモたちが吹き飛ぶ。

 道にも穴ができて、周りには瓦礫(がれき)が散らばる。

 これが戦争。

 ウチがいた町が壊されていく。

 全員が避難していたからよかったが、少しでも遅れていたら死人が出ていたことは間違いなかった。

 

 これは世界大戦で初めて空襲された事例である。

 これを含め戦線はなおも拡大していく。


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