街の外は予想外
異世界生活初日の夜を床の上で過ごした俺は昨日のユウの発言について詳しく聞くために、ユウが起きるのを朝からずっと待っていた。
待ってる間にノアに確認したところ、1日は24時間で1ヶ月30日、1年は360日と地球と大して変わらないらしく。御都合主義バンザーイ。
「いつになったら起きるんだ?………」
現在時刻は13時を回った。ユウが起きる気配は一切ない。どうしたらいい、この状況。昨晩硬い床の上で寝た俺はいつもより早く起きたため、かれこれ8時間は待っている。と言ってもずっとここで待っていたわけではなく、朝食を食べに食堂に行ったり服を買いに行ったりしていた。そのため俺の服装は制服からこの世界の服に変わっている。服は【空間魔法】で倉庫がわりに創った亜空間に全部入れておいた。
いつ起きるかわからないユウをこのまま待ってるより、いっそのこと1人で街の外にでも行って見るか?直接見れば意味がわかるってユウも言ってたし。どうだろうノア。
《あまりオススメはしませんが、この街の近くの森には足が遅いゴブリンくらいしかいないので遭遇しても逃げれます。なので行っても大丈夫だと思います》
そうか。そうと決まれば早速街の門に行こう。この街は魔物の侵入を防ぐための高い壁で囲われてるので、東西南北の4つの門からしか出入りできないようになっている。今回はここから一番近い北門に向かおう。ノア、案内お願い。
《わかりました》
北門に着くと俺と同じく街から出る人達が小さな列を作っていたが、列自体が短かったためすぐに俺の番になり門番の青年に声をかけられる。
「次の方どうぞ。この水晶に手を乗せてください」
門番に言われたとうりに右手を水晶に乗せる。すると、水晶が青く光る。この水晶は何なんだ?
《これは手を乗せた相手に犯罪歴、つまり犯罪系の称号がないか調べるための水晶です。なければ青く、あれば赤く光ります。LV8以下の隠蔽まで看破できます》
そりゃあすごいな。この世界の犯罪者は随分と生きずらいだろう。自業自得だけどな。
「はい。もう行って大丈夫です」
「街に入る時はどうすれば?」
「ああ、初心者の冒険者でしたか。今日中に戻って来るならこのカードを持って行ってください。そのカードを門番に見せれば街に入れます。カードをなくした場合また、今日中に帰ってこない場合は街に入るのに銀貨5枚かかるので注意してください」
そう言って門番は銅っぽい金属でできた手の平サイズのカードを渡してきた。俺はカードを受け取りポケットから倉庫がわりの亜空間に、万が一にも無くさないよう仕舞っておく。
それにしても、銅でできたカードを作るって結構金かかるんじゃないのか?
《この世界ではそこまで価値はありません。銅くらいなら錬金術で創れますから》
そうゆうもんか。
「そうか。親切にどうも」
「いえ、仕事ですから。では、気おつけて行ってください」
俺は門番に見送られて街から出る。あの馬鹿な豚が収めてる国にしてはルールがしっかりしてるんだよな、この国。俺を召喚した奴が本当に国王なのか怪しくなって来るわ。
門から出ると綺麗に整理されている街道があり、両サイドは森に囲まれている。俺は街道から外れて森の中へと入っていく。地球では見たこともない植物がそこかしこに生い茂っている。そんな植物達を見ていると、自分が異世界に召喚されたのを改めて自覚させられる。
そんな植物達を鑑定のレベルを上げるために片っ端から鑑定していくが、残念なことにレベルが低いため名前しかわからない。
そうやって鑑定していくと、異世界の定番植物である薬草の群生地を発見した。一応全て鑑定して見たが、全て薬草だった。
《マスター、それは違います。ここは確かに薬草の群生地ですが、今マスターが鑑定した薬草の半分以上が毒草です。マスターにもわかるように毒草の上に赤いアイコンを表示します》
「なんだよこれ………?」
ほとんどの薬草の上に赤いアイコンが表示される。毒草と判定されたうち1つを手に取るがどう見ても薬草にしか見えない。
どうゆうことだ?ここに生えてるのは全部鑑定で確認したら薬草だった。どう見ても同じ薬草にしか見えないのに。半分どころか、3分の1近く毒草かよ……
《毒草は主に薬草に擬態し、隠蔽を使って紛れ込みます。鑑定のレベルが4以上ないと見抜けません。そのためギルドなどでは【鑑定 LV4】以上を持っていない冒険者からは薬草の買取及び薬草集めのクエストはできません》
薬草集めの難易度高過ぎだろ!薬草集めのクエストなんて、ゲームだったら初心者が最初に受けるようなクエストだぞ?この光景を見れば納得だけどさ?やっぱりゲームと現実は違うってのを思い知らされるなぁ………
ガサッ
「っ!?」
突然、近くの茂みから俺の頭目掛けて武器が振り下ろされた。なんとか避ける避けることに成功し、大きく飛び退く。どうやら【回避 LV1】が効果を発揮したようで、なんとか反応することができた。買っててよかった〜買ったの俺じゃないけど。
ガサガサッガサガサガサッ
茂みから音を立てて姿を現したのは、120センチ程の小柄な体格に緑色の肌。醜い顔にムッとした臭いを漂わせ、5体ともお粗末な武器を持っている。ファンタジーでお馴染みの雑魚モンスターのゴブリンの特徴と完全に一致する。肌の色がちょっと違うのを除けばだが………
「………ゴ、ゴブリンか?これが?」
いやいや、ちょっと待て!肌の色おかしいだろ!蛍光色のゴブリンとか気持ち悪!なんだよあいつら。色以外は模範的なゴブリンのくせにどんなもん食ったらあんな色になるんだよ!予想外過ぎるわ!?本当にただのゴブリンか?特殊な個体だったりしないか?一応鑑定しとくか。
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LV4
ゴブリン
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5体のうち1体を鑑定すると本当にただのゴブリンだった。ユウが言ってたのはこれのことだったのか。とゆうことは地球のファンタジーゲームや小説なんかに出てくる定番の魔物は全部こんなのしかいないってことか?マジかよ………
そんなことよりゴブリン臭過ぎるだろ!この距離でこれだけ臭いとかヤバイ!鼻が曲がる!そう思って思わず鼻を塞ぐ。
《なにしてるんですか!?マスター!ゴブリンからの攻撃が来ます!》
うおっ!俺が鼻をふさいだ隙をついて攻撃して来た。あ、危なっ!咄嗟にノアが教えてくたおかげでなんとか避けることができたが完全に油断した。ゴブリン達は息つく間もなく次々に攻撃を仕掛けて来るのをなんとか避け切る。
《今です、マスター!全速力で街に走ってください》
おう!わかった。
俺は言われたとうりに全力で街へと走り、なんとかゴブリン達を撒くことができた。
こうして俺は難を逃れたが、蛍光色のゴブリン達の姿が俺の脳裏に焼き付いて離れないのだった。
異世界の魔物は、俺の想像以上にぶっ飛んだ存在でした。
やっとフラグ回収できた。
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