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床で寝るか………

 


 俺としたことが、勇者ちゃんのあまりの可愛さに思わず心の中でエセ関西人になってしまった。いかんいかん、こんなことを考えてる場合じゃない。仲間になってもらうためにも現状を説明しなければ。そのために勇者の記憶がどこまであるのか確認する必要がある。


「俺が君を召喚したんだが、どこまで覚えてる?」

「また召喚………魔王を倒したところまでは覚えてる。その後急に意識が朦朧として、いつの間にかここにいる。どゆこと?」


 召喚と聞いてもううんざりと言いたげな様子だ。ノアの話の通り、魔王を倒して油断したところを自称神に殺されたんだろう。こんな状況でも落ち着いてるし死んだことを伝えても問題なさそうだ。それにしてもこの子、独特な喋り方するな。


「落ち着いて聞いてほしい。魔王を倒した後、勇者召喚の召喚陣を用意した自称神によって君は殺された。で、今はそれから1000年後」

「そう………でも、なんで私はここに居る?蘇生するにも体がないとできない。それにあなたは召喚と言った。意味がわからない」

「俺が特殊な方法で蘇生させた」


 肝心なところは伏せて話す。特殊な方法と聞いただけじゃ俺のユニークスキルの能力だとは確信できないだろう。仲間になるかわからない相手に迂闊に手の内は見せられない。


「なんの目的で蘇生した?理由があるはず」

「俺の仲間になってほしい」

「なぜ?」


 なぜ、か。なんて答えたらいいだろう。異世界から召喚されたことを隠す必要はないけど、知られて目立つのも嫌だ。同じ異世界人だから無闇に言いふらしたりはしないだろうけど、念のためにそれを言うのは仲間になってくれたらにしておく。

 俺が異世界人だと隠した上で仲間になってもらうにはなんて言えばいいだろう。俺は世界を見て回りたい、でも弱いから護衛してほしいとかが無難だろうか。


「俺はーー」

「この国に召喚された日本人だから?」

「っ!………よくわかったな。俺は佐々倉 春樹。ついさっきまで日本で高校生をやってた。勇者として召喚されたわけじゃないけどな」


 なぜか俺が日本人だとバレてしまったので、大人しく白状することにする。ここで嘘をついたところで後々不利になる。

 それにしてもなんで俺が日本人だってわかったんだ?黒髪黒目はこの世界でも普通に見かけたぞ?

 《マスターはそこの元勇者にカマをかけられたんですよ》


 俺はこの元勇者にまんまと嵌められたのか。そりゃあそうか、いくら強くても頭が悪かったら勝てる勝負も勝てない。ましてや魔王なんて倒せるわけがない。伊達に魔王と戦って勝ったわけじゃないってことか………


「春樹……私は朝霧(あさぎり) ユウ。自宅警備中に召喚された」

「え?それって引きこもーー」

「自宅警備員」

「………いや、引きーー」

「自宅警備員」


 いや絶対引きこもってたろ。どんだけ認めたくないんだよ。言い切る前に食い気味に否定して来やがった。これ何回言ってもダメだな。俺が自宅警備員って言わない限り無限ループしそうだ。

 それにしても勇者が、元引きこもりかよ。この変な喋り方はコミュ障の名残と見て間違いないだろうし、伝説の勇者はただの残念美少女だったか。


「それで朝霧。俺の仲間になってーー」

「わかった。春樹の仲間になる。それと朝霧じゃなくて、ユウでいい」

「即答!?ユウ、理由を聞いてもいいか?」

「春樹となら、面白そうだと思った」


 面白そう、か。ちょっと曖昧な答えだけど、今の俺としては仲間になってくれるだけで十分だ。最悪、この国からさえ出れれば問題ない。その後はありきたりだけど、冒険者にでもなってこの世界を見て回ろうかなんて考えてる。ずっと仲間でいてくれるならそれに越したことはないけど、心変わりする可能性もある。いつユウがいなくなっても大丈夫なようにレベルは上げておかないとダメだな。


「じゃあこれからよろしく頼む」

「よろしく」


 俺たちは向かい合って握手をする。なんかいいな、こうゆうの。できることならユウにはずっと仲間でいてほしいものだな。

 《そうですか。でしたらSPが溜まったら、契約系のスキルを買って契約でマスターから離れられないように縛りましょう》


 そんなことしねえよ!どこの鬼畜野郎だよ俺は。

 《そうですか、それは残念です》


「そういえば。春樹は勇者じゃないって言ったけど、どうゆう意味?」

「ん?ああ、なんでも大規模な召喚をするとかで俺はその召喚の実験で召喚されたらしい」

「実験で召喚………春樹、可哀想」


 大規模召喚の方じゃなくてそっちに反応するのか。俺のことを仲間と思って本当に心配してくれてるようで、俺としては嬉しい限りだ。やっぱりユウはいい子だな。

 《そうですね。とってもいい子です。やっぱり契約で縛りましょう》


 絶対しないからな。


「俺はもう気にしてない。気にしたところで何も変わらない」

「そう。ならいい。大規模召喚はどうする?止める?」

「いや、今は自分のことで精一杯だから無理だ。他人のことまで心配していられない」

「確かにそのとうり。自分より他人を優先してたら生きてけない」


 ここで召喚を止めようなんて言われたらどうしようかと思ったが、心配いらなかったようだ。明らかに俺より年下なのにしっかりしてる。

 《確かにユウさんは年齢より幼く見えますが、マスターと1つしか違いませんよ》


 マジか。このなりで高校生とか詐欺だろ。どう見ても中学生にしか見えないんだけど。なんて本人に言ったら怒られそうなので絶対に言わないでおこう。頭の中でそんなことを考えてる間もユウとの話は続いていく。


「春樹は街の外に出た?」

「いやまだ出てないが、どうしてそんなことを聞く?」

「街の外は春樹の想像と違う」

「それは一体どうゆう意味だ?」

「実際に行って見れば分かる。今日はもう遅いし寝る」


 そう言ってユウはベットに寝転がる。ユウの言ってることの意味がわからない。ユウは何が言いたいんだ?そう聞こうと思ってベットに横になってるユウを見るがもう寝てしまったようだ。寝つき良すぎるだろこいつ。ものの数秒で寝やがった。お前は何処ぞの眼鏡をかけた、のびのびしてる少年か!

 まあ、無理に起こすのも可哀想だから明日起きてからじっくりと聞くことにして俺も寝よう。


 あっ。そういえばベット、ユウに使われてるじゃん。

 俺、今日どこで寝よう………



読んでいただきありがとうございました。

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