がんばれサイトウ
俺は朝7時に起きて、まず最初に目覚ましテレビをつける。そして歯を磨きながら目覚ましテレビをチェックする。
俺は歯ブラシを口に入れた大体この辺で急激にう○ちしたくなる。それを、時より力を入れて我慢しながら完璧に磨き終えた所でトイレに駆け込むのだ。これがサイトウサトシのルーティーンワークなのさ。
しかし、今日はまるで暴れ馬(その名もディープインパクトと命名)が今にも飛び出しそうだ。
俺はディープインパクトの手綱を握りながらサイトウ家唯一のトイレにたどり着いた。
しかしそこには誰よりも早くおばあちゃん(サトノダイコンオロシと命名)が出走の準備をしていた。
くそ、たまに二人のルーティーンワークのタイミングが被ることはある。今日に限って、、今日だけは、、俺はたまらなくなっておばあちゃんに声をかけた。
あのー後何分くらいで出てこれます?できれば急いでもらってもいいですか?
おばあちゃんは昔から俺にだけはすごい優しい。だから俺はおばあちゃんのことが大好きなのだ。思い出すと色んな事があった。あれ、何も思い出せね。。。
おばあちゃんは俺がトイレに入りたいんだと気付いた様子だった。突然雄叫びをあげた。
サトシ、ごめんよ。間に合ったかい?今日は学校かい?
う、うん。急いでくれてありがとう。流すの忘れてるよ。
今朝は食欲が全く湧かなかったので俺はすぐに支度を済ませて学校に向かった。
親父はまだハワイから帰ってきていない。おばあちゃんは親父に対してお怒りの様子だった。まあいつ帰ってくるのかはわからないがあの親父なら大丈夫だろう。
学校に向かう途中で俺を待ち伏せしている奴がいる。そいつの名はタケシ。俺とは同級生で数少ない親友である。彼の特徴としては顔に大体の確率で何かしらをつけている。
「サトシお前どこにいたんだ。一週間は待ってたぞ」今日のタケシは鳥の羽のようなものが口の周りに付いていた。
そうだったのか。待たせたな。タケシよ。
俺たちは学校に向かって歩き始めた。いつもの生活が始まってしまったんだ。俺は早くこの学校を卒業したい。
そして素晴らしい未来に向かって進みたい。
学校の中では俺がいなかった一週間で新しい先生が来たみたいだった。その教師はどうやら午後になったら会えるらしい。そして俺がいなかったこの期間に学校ではとんでもない大事件が起きていたようだ。
俺とタケシが2ーa組のクラスに入るとそこにいた全員の軽蔑した視線が向けられた。
「おいタケシ。ちょっとこっちこいや」そう言ったのはこのクラスを取り仕切る女番長リカとその仲間3人で構成された通称<F-4>と言われる四人組だ。ちなみに金持ちではない。
「お前リカがトイレ入ってるところ下から覗きやがったろ?」タケシはクラス中に響き渡るような大声でものすごい恥ずかし目を受けた。タケシは「和式便所だからってそんなことしないよ。」と意味深な発言をして釈明していた。
その事件はちょうど昨日の話らしく、女番長リカは隣のトイレから異様な気配を感じ誰かが隣のトイレにいる。誰だと声を荒げた。すると勢いよくトイレから飛び出していく後ろ姿を見たのだという。その後ろ姿がこのタケシそっくりだったと言うのだ。その時点では確実に追い詰める事ができないので女番長リカは<F-4>ネットワーク(舎弟)を使ってその日のタケシの行動を突き詰めた。そして犯人はこの男だと断定したらしい。そこからタケシはものすごい恥ずかし目を受ける。タケシは俺じゃない、俺じゃないい。と叫び声をあげた。親友として助けてあげようか迷った。すると一人の男が立ち上がった。
「その事件があった時間を聞いてもいいかな?リカさん。」
彼の名は、シゲル。このクラス1の秀才で勉強だけはできる男だ。<F-4>の視線を一斉に集めたシゲルに向かって、朝のHRが終わったちょうど今の時間だと言った。昨日のその時間はタケシはクラスにいなかった。なぜならいつもの路地で俺の事を朝のギリギリの時間まで待っていた為だ。タケシが昨日学校に来たのは一時間目が始まった10分くらい後だったのだ。それが逆に怪しいんだよ。シゲルは半分脅されるような格好で責められていた。しかし、シゲルは冷静だった。
「タケシ君昨日の朝のこの時間きみは何をしていたんだい?」
「昨日のこの時間はサトシを待っていたんだ」
全員の視線が俺に集まった。俺は昨日の夜にハワイから帰って来たんだ。俺を巻き込むんじゃねークソが。
シゲルは「今日中に真犯人を見つけ出して捕まえる。タケシ君は何もしていない。だから先生に言うのを待ってくれないか?」
<F-4>の連中たちは女番長リカの反応を待った。
今日中に犯人を見つけられるなら待ってやると、その代わり見つけられなかったら覚悟しとけと言い放つのだった。
ようやくタケシは<F-4>から解放された。そしてシゲルにありがとう。お前は命の恩人だ。一緒に犯人を探そうと固い約束を俺の目の前でするのだった。ちょっと待て。俺は協力するつもりはない。シゲルとタケシは早速、作戦会議だと言って俺の机を囲んだ。
こうして俺たちの女番長リカのトイレ覗き見事件の犯人探しが始まるのであった。
タケシはそもそも俺が興味あるのは妹だけだ。と言った。それはそれで問題になりそうだったが軽く聞き流した。まずはタケシがその時間何をやっていたかが重要だ。
「サトシをギリギリの時間まで待っていたんだけど、全然来ないからいつもの路地でぼーっとしていたんだ。ただぼーっとしてるのもあれだから暇つぶしに一人しりとりをしてたんだ。」こいつの脳みそはまるで少年のようだ。
そうこうしてる間に一時間目の授業開始のチャイムがなった。
シゲルは安心してくれ、必ず犯人を捕まえよう。そういってみんな席についた。俺は絶対に無理だろうと思った。だがタケシは嘘をつける程の脳みそではない事は間違いないだろう。
授業が終わって俺たちは現場検証に向かう事になった。女番長リカの話では4階の美術室の隣の奥にある普段使うことの少ないトイレだ。シゲルはトイレットペーパーの減り具合を見て
「ここはう○ち専用トイレだ。間違いない」といった。
同級生ながらあっぱれな推理力だ。タケシはここのトイレを過去1回だけ使ったことがあるという。それは中学1年の時友達が全くいなかったタケシは誰かにう○ちしているところを見られたくないと思い普段だーれも使わないトイレを事前にリサーチしてここにたどり着いたらしい。使ったのはその一回きりだと言った。
シゲルは「それだ。思春期なら誰もが通るその道の上でこの事件は起きたんだ」そう言った後、
「よし、次の休み時間はここを使用する人間を張込みするぞ。」
とりあえず俺たちは教室に戻った。
次の休み時間になって俺たちは張込みを開始した。しかし、今日のこの時間に限ってこの上の階の音楽室で次の授業があるらしく、人通りが激しい。更に5階にももちろんトイレはある。これだけの人の中でここを使用するのは思春期の犯人にとって考えづらい。だが俺たちは張込みを続けた。するとタケシが出走準備中だと言った。
シゲルは「よし現場で実際に犯人が見ていた映像を俺たちで確認しよう」と言った。
タケシは恥ずかしそうに和式便所に駆け込んだ。この和式便所にはほんの少し下に1センチ位の隙間がある。そこの隙間から女番長リカは覗かれたんだと言っていたが実際に隣のトイレから覗き込むとそこにはタケシの足のほんの一部しか見えない。なるほどこれでは覗きにはならない。シゲルはトイレから出て正面から覗き混んだ。するとちょうどあのタイミングだったらしく、シゲルは慌てて起き上がった。「横からでは覗きにはなりませんね。」そう言ったシゲルは涙目だった。
スッキリした様子のタケシは「俺たちだけの秘密な。」と恥ずかしそうに言った。
名探偵シゲルは
「現場検証の結果、犯人は覗いていたわけではないですね。そろそろ休み時間も終わりだし教室に戻ろう。」
俺たちは教室に戻ることにした。
次の作戦会議ではシゲルが犯人の絞り込みをしようと言った。
しかし、犯人の絞り込みなどできるのだろうか?事件が起きた朝一のあの時間を狙って利用する思春期の奴は結構多いのではないだろうか。くそ、この学校はいやこの街は無法者しかいないと思ったその時
名探偵シゲルは一つだけ方法があると言った。だがまずは昨日の全クラスの時間割りを調べると言った。
昨日の時間割を見たシゲルは何かに閃いた様子だった。
「なるほど。どうやら犯人はこのクラスにいる。」
そうして俺たちにこのクラスの人間から目を離すなそう言ったのだ。俺はまさかタケシなのかと思ったが、タケシは「わかった。絶対につかまえてやるぜ」そう言っていた。
そして給食の時間がやってきた。まずは<F-4>達から給食を後の人間のことなど考えず大盛りにして持っていく。
俺たちは事件の影響なのか<F-4>の舎弟に邪魔され給食を取れたのは最後になった。<F-4>の奴らはいただきますなど言う事はない。自分で勝手に用意して食べ始める。担任も黙認している。決して金持ちではない。
俺たちはクラス全員に軽蔑の視線を向けられながら給食を食べる。
名探偵シゲルは「昼休みに全てが動きだす。今のうちにいっぱい食っとけ、みんな」そういった。
しかし、シゲルの給食は一人一個与えられるパンすらもないかわいそうな給食だった。
<F-4>達が給食を食べ終わったのを見計らってシゲルが<F-4>達の元へ向かって行き何やら話をしているようだ。
俺たちの元へ戻ってきてこの昼休みが犯人確保のチャンスだ。そう言って俺たちに作戦を発表した。
俺とタケシは名探偵シゲルに言われた通りに事件が起きた現場のトイレに入った。事件が起きたのは女子トイレだったが男子トイレで鍵を閉めて俺が出てきていいよというまで待機していてくれと言った。俺たちは言われた通り待機した。しばらく待機しているとなんか臭い。あのクソタケシのやろう。と思ったが我慢をして作戦を続行した。
すると誰かが入ってきた様でトイレの入り口が開く音がした。ものすごい慌てた感じで俺が入っているトイレのドアに突っ込んできた。当然鍵をしているのでドアが開くことはない。しばらくするとそいつは慌ててトイレを出て行った。
今のはなんだったんだ。するとシゲルの声でみんな犯人を確保した。そう言って、出てきていいよ。と言ったのだ。
外に行ってみると<F-4>に囲まれる様にして一人の男がケツを抑えながら土下座をしていた。
その男は我がクラスメイトの岡部だった。岡部は「許してください。悪気はなかったんです」と苦しそうにしていた。
今からこの事件の真相をご説明します。そう言って名探偵シゲルは語り出した。
「まず、最初にリカさんにこれだけは伝えておきたいのです。この男は決してリカさんのおトイレを覗く目的でトイレにいたわけではないということです」
そう言って<F-4>達を男子トイレに呼んだのだ。そして女番長リカに
「リカさんは隣のトイレから誰かが出て行くのを最後に見たと言いましたよね?ではこのトイレに入って横からご覧になってください」女番長リカは言われるがまま覗いて見た。誰かわからないが確かに足のほんの一部しか見えない。
「では一度トイレから出て正面から覗いて見てください」
言われるがまま覗き込む。女番長リカは慌てて起き上がり「誰がここでくそしてんだこら」ひー。恥ずかしそうなタケシの声がトイレに響き渡った。
名探偵シゲルは
「この様にここのトイレで覗く方法はたった一つしかありません。そうです。今の様に正面から正々堂々覗くしか方法がないのです」
女番長リカは覗き目的ではないということに少し安心した様子だった。
続けて名探偵シゲルは
「次に昨日の全クラスの時間割を見てください。一時間目には我々2ーa組の音楽の授業がありました。そしてこの3ーe組の一時間目の授業を見てください。彼らは一時間目に美術の授業があるのです。事件があった朝このトイレを利用する可能性が高いのは2ーaと3-eのどちらかのクラスだと私は思いました。しかし事件が起きたのは女子トイレです。女子トイレから男子が出て行く様子をリカさんあなたは目撃しましたよね?我々男子が女子トイレに入るという行為は中々、思春期の男にはできないものです。しかし一度でも女子トイレに入ってしまったことがある人間はどうでしょうか?その時誰もいなかったのだから今回もバレないだろうと錯覚してしまう。つまり犯人はその壁を乗り越えた経験のある変態なのだということです。そして注目するべきところはこのトイレは普段使うにはとても不便なところにあるということです。人がう○ちをするタイミングはそれぞれですが可能性が一番高いのは、、そう。朝とこの時間。昼休みです。犯人は普段からこの人里離れたトイレをこっそり利用している可能性が高い。まあこんなに早くきてくれるとは思ってもいませんでしたが。そして私はタケシ君とサトシ君に2つしかない男子トイレに先に入ってもらうという状況を作ってもらいました。ここで普通の人間なら5階のトイレ、もしくは別の男子トイレに移動するでしょう。ただ昨日の事件の犯人を除いてですが。そして岡部君がきてすぐ出てきたと思ったら彼は女子トイレに飛び込んでいきました。つまり昨日の事件の真犯人は岡部君。あなたです」
岡部は何かいうまでもなく泣き叫んでいた。もう多分漏れているだろう。
こうして名探偵シゲルの名推理によってタケシの冤罪を証明することができた。岡部は<F-4>たちによってどこかに連行されて行った。
シゲルとタケシはまぎれもない親友になった。全くもってくだらない事件だったが、タケシ一人では解決させることは間違いなく出来なかったであろう。もうこんなとこにいる意味もない。俺たちはクラスに戻った。
次の授業が始まった。俺はすっかり忘れていたがあれが新しく入る教師の様だ。彼の風貌は普通の教師とかけ離れていて金髪で筋肉がむきむきで血管が浮き出たおっさんだった。そいつは俺たちに向かって
「明日から始まるマラソン大会のコース説明を行う。全員体育着に着替えてグランドに集合」
そう言って俺の目の前にわざわざやってきて「急げ」と言ったのだった。