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神の継承者  作者: 夢世操
Introduction
8/45

dr-3

 

「それで?なんで私が狙われてるのさ」


 時刻は深夜、何時(いつ)ものように彼女達は公園に集まっていた。


「さぁ?そんなこと言われても、分からないものは分からないわ。分かるのは貴女(あなた)が次の標的だって事だけ……良かったわね、あなたに危害が及ぶのは避けられなさそうよ」


 狙われている女、トリは大きな溜息をつく。


「良くありませんよ。………アンタとこうして会ってるから、という事はありませんかね」


 相変わらず失礼な物言いだが、別にジェーンは気にもとめなかった。いちいちこんな事に腹を立てても仕方が無い。そもそも、彼女は自分に礼を尽くす意味は無いのだ。その点で言えば彼女はわざわざジェーンにある程度の礼節(れいせつ)を保っている分、立派ですらある。


「無い…とも言いきれないのがどうしょうもないところだけど…一応、音は漏れないようにしてるし、この辺りに他人(ひと)は居ないというのは、まず間違いないわ」


 そりゃ、ここに来るまでの行動を監視されていたり、それこそ遠方から監視されていればその限りではないのだが、こればかりはどうしようもない。


「まあ、そうでしょうね。私もホントにそんなこと気にしてたわけじゃないし」


 そして、トリは真面目な顔になる。何時も気だるげな顔をしている彼女からしたら珍しい。


「敵は誰なんですか」


 単純にして明解な質問。単純が(ゆえ)に全くの嘘をつくほかに、誤魔化(ごまか)しも効かない訊き方。別にジェーンに誤魔化す気は無いのだから関係ないが。


「そうねぇ、良く分からないのだけれど…分かることと言えば『異能持ち』だって事かしら?それも、かなり強力なのが…少なくとも一人」


 組んだ腕の中から、人差し指だけ立ててトリへと示す。


「それは、アンタが正体を掴めないほど…という事でいいのでしょうか」


「ん、そうね。私達(・・)の領域内にいながら『空間移動』を平然と使う程だもの、相当なものよ」


 これは誇張(こちょう)でもなんでもない、実際にジェーンは"領域"と呼ばれる力場(りきば)を展開していた。この領域内では他の『異能持ち』は少なからず制限を受ける。能力発動に時間がかかり、力量差が大きいと、そもそも発動さえできない。しかし、あの仮面の男は何の障害も受けずに能力を行使していた。


「少なくとも、素人では無い訳ですか」


「無いわ、私も油断してたってわけじゃないし……貴女は今も能力使えるわよね」


「ええ、不便でない程には。不快ではありますが」


「領域を解く訳にはいかないから、少しぐらい我慢なさいな」


 少なくとも、トリがあの男に遅れをとることはないだろう。


「ただ、貴女の部下さん達が問題よね…『異能持ち』は居たかしら?」


「そんな便利な奴は居ないですよ、そもそも私が超能力者(・・・・)だなんて知ってるやつ自体がいないしね」


 鼻で笑うように言い切る彼女の言葉は、随分と皮肉めいているが、どこか寂しげでもある。


「それは…貴女だけじゃ大変な事になるわね」


「正直、そうですね。空間移動さんだけなら何とかなる気もするけど…流石にそれ以外もいるとしたらかなり微妙ね。私の能力はそもそも対異能戦闘用じゃないから」


「……助けてあげたいとこだけど、こっちにも人員がいる訳じゃないのよね」


「いっその事、逃げ回りますか。ずっと飛んでればいい」


「それじゃ根本的な解決にならないわよ。それに相手にどんな能力者か居るかも分からないのに、そんなの上手くいくかも分からないでしょうに。」


「何で私を狙うのか、それを考えた方が良さそうですね」


 いよいよ行き詰まった所で、トリが話の方向転換を行う言葉を口にした。

 既に、考えるのに疲れたのか、投げやりな口調に変わっている。彼女らしいと言えばらしい。


「さっきも言ったけど、それは難しいわよ……」


 これでは、本当に逃げていてもらった方がいいかもしれない、それ位彼女達は行き詰まっていた。

 ただ一つ言えることは、トリは口では戦えないと言うが、実際はそんな事は無い。いや、むしろ戦闘面に特化していると言っていいほどだ。


「貴女が多人数を相手にするのが苦手だってことは承知で訊くけど」


「何ですか」


 彼女のそれはもはや質問ではなく、そのキツイ言い方は明らかに猜疑(さいぎ)に満ちた、もっと具体的に言えば、面倒な事を言わないで欲しい、という声音のものである。


「撃退くらいできないの?」


 そんなトリの様子は完全に無視し、ジェーンはいかにも当然な事を言うかのように軽い口調で逆に問い返す。


「……………、正直に申しましょう。結論から言えば、可能(・・)です」


 長い間を空け、大きく息を吐いてからトリは切り出した。


「ただし、私は最悪、部下(・・)を全て失うことになるでしょうね」


 トリの態度は今までの態度とは打って変わった瀟洒(しょうしゃ)な態度で、驚いた事に柔らかい笑すらも浮かべていた。本来、彼女の立ち位置はそれとは正反対なはずなのだが。

 そして、ジェーンにはその顔を知っていた。


「そうね…それは、確かに避けるべきなのでしょうね、我々の今後の為にも、貴女の為(・・・・)にも」


「おや、私の為とは、アンタらしくもない。アンタはもっと冷酷(・・)じゃなきゃ」


「なに、言ってみただけよ。少なくとも、前者は建前では(・・)ないわ」


 何ら表情も変えず、適当な返事を返す。


「アンタのそういう所が嫌いですよ。まるで人間味を感じない」


 言葉とは裏腹の満足そうな顔のトリに笑い返し、ジェーンは一つの案を示す。


「一つあるわ、貴女が喜びそうな案が」


「それは?」


 (いま)だ笑を顔に浮かべたまま、トリは訊いてくる。



アイツ(ルド)を使いましょう」




なんか、学生生活始まると忙しくなったので、当初の予定通り週一投稿になります。さらに進行が遅くなりますが…

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