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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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ロココさんの危機5 *

 俺達はクララが作ってくれたカニアワを持ってロココさんの工場に戻る。


 工場では加工前の木製のクーラーボックスの箱が有った。


 その箱と石灰とアルコールを持って架刑場へやって来た。


 既に架刑場ではロココさんが処刑機械『ギルティー・イン・ザ・ウォール』の石柱下の十字架に(はりつけ)にされている。


 有罪判決が下りればすぐにでも圧殺される状況である。


 既に刑場には多くの観衆が詰めかけ、有罪判決が下りて惨劇が起こる事を心待ちにしていた。


 趣味の悪い観客どもめ!


 俺はロココさんに声を掛ける。


「遅れて申し訳ございませんでした」


「ちょっと心細かったがお前がここに戻ってくるのは解っていたから安心してたぞ」


「材料はすべて揃いましたから安心して見ていて下さい。きっと無罪判決を勝ち取りますから」


「ああ、期待してるからな」


 俺は裁判長に挨拶をするとクーラーボックスの制作を始める。


 カニアワにアルコールと石灰を混ぜペーストを作りクーラーボックスに塗りたくる。


 いつもはアルコールでカニの甲羅についているカニアワを溶かす所から始まるが、今回はクララがバケツに吐き出したカニアワなので元々固まっていないので少し勝手が違った。


 液状のアワを素材に使ったので上手く固まるか少し心配だったが、石灰を混ぜて塗りたくって一〇分ほどでしっかりと固まってくれたのでほっと胸を撫で下ろす。


「被告代理人、クーラーボックスは完成しましたか?」


「はい! 完成しました」


「ならば性能検証の準備はよろしいでしょうか?」


「お願いします!」


「では炎結晶で断熱効果の検証を行いたいと思います」


 今なんて言った?


 炎結晶だと!?


 なんでクーラーボックスなのに炎結晶で検証なんだ?


 訳わからないんだが?


 俺はすかさず異議を唱えた!


「裁判長! 異議あり!」


「なんですか? 被告代理人!」


「これは断熱材で冷気を逃さず冷凍保存する箱です。それなのになぜ炎結晶で検証を行うんですか?」


「それは原告から出された検証方法仕様書に書かれているからです」


「なんだって!」


 俺は裁判長の持つ検証方法仕様書を見る。


 既に裁判長に証拠として採用されている仕様書であった。


 そこにはこう書いてある。


 ――――――――――

 クーラーボックスとは断熱効果を持つ箱である。

 それの断熱効果の検証を以下の様に行う。

 

 1.握り拳大の炎結晶をクーラーボックスの中に入れ発熱させる。

 2.断熱箱が発火しない事で断熱効果が有ると認定する。

 

 ※なお比較対象としてダスティー商会の保管箱でも同様の検証を行う。

  被告のクーラーボックスが燃え、ダスティー商会の保管箱に異常が見られなかった場合、明らかな詐欺と認定し被告に極刑を求める。

 ――――――――――


 ハメられた!


 クーラーボックスは断熱箱と言っても冷気を断熱する箱である。


 その為、クーラーボックスのベースとなる箱の素材は木材だ。


 カニアワで断熱しているとはいえ、木箱が握り拳大の炎結晶の発熱に耐えられる訳がない。


 しかもダスティー商会の保管箱はどう見ても金属製だ。


 握り拳大の炎結晶程度では壊れる訳がない。


 やられた……。


 始まる前から、この裁判は終わっていた。


 気が付いた時には裁判が始まっていて何もかもが手遅れだった。


 衛兵が炎結晶を俺達に持ってくる。


 これをクーラーボックスの中に入れたら燃えだしてロココさんの命は無い。


 箱の中に入れる事はロココさんを殺す事と等価だ。


 俺がロココさんに極刑を突き付ける。


 俺の炎結晶を持つ手が震えた。


 その時!


 凛とした声が上がった!


「異議あり!」


 声の主はミドリアだった。


 でも、この罠に完全にハメられた状態で何を言うんだろうか?


 クーラーボックスが、今更冷気の断熱しか出来ない箱だと言っても検証方法仕様書が証拠として受理されている状態では裁判長は聞く耳を持たないだろう。


「被告弁護人、何ですか?」


「原告側の炎結晶ですが細工が見られます!」


「どういう事ですかな?」


「では証拠をお見せしましょう!」


 ミドリアはダスティーの前まで歩み寄ると、手刀でダスティーの持つ炎結晶を真っ二つに割る。


 するとそれの断面は炎結晶を模したガラス玉だった。


 ざわめく観衆達。


 裁判長もこれには驚いていた。


「一体どういうことですかな? ダスティー殿!」


「こっこれは何かの手違いでして、それにこの結晶を持って来たのは衛兵です! わたくし共には関係御座いません!」


「なにを言ってるんですか、ダスティー殿! この炎結晶を検証方法仕様書と一緒に納入したのはあなたでは無いですか!」


「むむむ! しかし、もうここには炎結晶は無いですから……今回の比較検証は無しという事でよろしいでしょうか?」


「仕方ないですね、炎結晶が無いのならば比較検証は無しという……」


「お待ちください! 裁判長! 炎結晶ならここにあります」


「そうですか。では提出をお願いします」


 ミドリアはエリザベスにほほ笑む。


「エリザベスさん、とびっきり上質の炎結晶をお願いします。とびっきり上質でね」


「最上級の炎結晶だな。わかったぞ……ホレ出来た!」


 あっという間に炎結晶を生成するエリザベス。


 それ、普通の魔導師だったら作るのに一ヶ月ぐらい掛かるんじゃないのか?


「なかなかいい結晶ですね……純度も透明度も最高です! 見ているだけでゾクゾクしますわ」


「では被告代理人! それをダスティー殿に渡して下さい」


 ミドリアから炎結晶を受け取ったダスティーは腹心の男と耳打ちをする。


「なんか雲行きが怪しくなって来たんだが大丈夫なんだろうな?」


「大丈夫ですよ。こちらの保管箱は分厚い金属製です。事前の試験で炎結晶を五個入れた状態で壊れない事を確認しています」


「そうか。それならいいんだが、向こうの方は大丈夫なのか?」


「安心してください。あの炎結晶は普通の結晶に見えて導師級魔導士に作らせた逸品で普通の炎結晶の十倍の火力が有ります。昨日行った実験ではすべての木箱が一分以内に発火していました」


「そうか、安心していいんだな」


「安心してください。五分も経てばクーラーボックスの権利を含めロココ商会の利権は全てダスティー様の物です。フハハハ!」


「そうか、お主も悪よのう! ブハハハ!」


「フハハハハハ!」


「ブハハハハハ!」


 二人して不気味な笑い声をあげていたので裁判長はドン引きだった。


「では、検証の開始をお願いします」


 俺はヤケになって炎結晶を箱の中に叩き付けて蓋を閉める。


 もし箱が燃えるようなことがあったらロココさんを強引に助け出して国から逃亡。


 そして流浪の生活でも始めればいい!


 俺はそう覚悟を決めてクーラーボックスの蓋を閉めた。


 ダスティーも炎結晶を箱の中に叩き付け蓋を閉めた。


 だがダスティーの保管箱は異常な状態になっていた。


 開始早々、箱の蓋の隙間から白煙が上がっていた。


「これはどうした事だ!」


「凄まじい熱風が蓋の隙間から噴き出しています!」


 そりゃな。


 エリザベス特製の炎結晶だ。


 雑に作ったものでさえ、風呂屋前の噴水を吹き飛ばす威力だ。


 本気で作ったものなら半端な火力じゃすまない。


 ダスティーは慌てて腹心に蓋を抑える様に指示を出す!


「蓋が吹き飛ぶぞ! 死ぬ気で押さえつけろ!」


「はい! でも、何か……凄く熱くなってきてるんですが! うわっ! あちちち!」


 箱がエリザベス製の炎結晶の火力に耐えられず赤白色に発光し始めていた。


「ヤバい! このままでは爆発するぞ!」


 ダスティーと腹心は頭を抱えて地面に屈みこむ!


 それと同時に赤熱した保存箱は姿を残さず炸裂した。


 ダスティー側の騒動にすっかり気を取られていたが、こっちの箱は大丈夫なんだろうか?


 見た感じ外見は何も起こって無かった。


 触ってみても全く熱くない。


 クララのカニアワは半端ない断熱性だな。


 さすがレアモンスターのカニの出したアワだけある。


 裁判長は既に勝負が有ったと言う感じで俺に聞いて来た。


「そちらの断熱箱の様子どうですか?」


「特に異常はありません」


 蓋を開けると熱気が陽炎(かげろう)となり夕日を揺らす。


「という事は、断熱効果が認められたという事で、詐欺ではない。つまり無罪という事で判決を下したいのですが、よろしいですかな? ダスティー殿!」


「はい。無罪で結構でございます」


「では判決を言い渡します! 本件の詐欺容疑は立証されなかったという事で、無罪となります!」


 観衆から沸き上がる歓声! 極刑を期待していたはずの観衆は皆ロココさんの無罪を祝っていた。


「すげーな! ロココ商会の断熱箱は!」「クーラーボックスを買うならロココ商会以外ありえないな!」「ダスティー商会の製品はゴミだな!」


 観客たちは口々にロココ商会を絶賛している。


 ロココさんはすぐに(はりつけ)から解放された。


「助かったぞタカヤマ! 途中、処刑されるんじゃないかと少しドキドキしたが今となってはいい思い出だ」


「すいません、検証方法がこんな事になってるとは思いもしなかったので」


「ああ、あいつらの事だから汚い手段に出るとわかってたさ」


「そう言えば、今回の勝負に勝ったのでダスティー商会から土地が貰える事になったんですよ」


「ほほー、土地か。何処の土地だ?」


「この契約書に書いてある土地なんですが……」


 契約書に書かれている書かれている土地の場所を見たロココさんは顔をしかめる。


「タカヤマ、おまえとんでもない土地を掴まされたぞ。やられたな」


 どうやら俺はダスティー商会にまたもや、ハメられたようであった。

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