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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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お風呂4 *

 キャンプ場に戻ると、早速大工さんが泊まる小屋の建築を始める事にした。


 わざわざ作らなくても俺達の小屋みたいに空き家を探してきて改修すれば良かった気もしたんだけど、この前見た感じだと四軒も五軒も状態のいい空き家はなさそうだったし、ミドリアとエリザベスが手伝ってくれるなら新築で建ててもそれ程時間は掛からないだろうと判断して新たに作る事にした。


 レイアウトは基本的に今住んでいる俺達の家と同じ。


 その方が図面無しで家を建てるのにイメージが沸きやすいからだ。


 材料はアイテムショップから買った木の板。


 それを俺の木工スキルで接ぎ木して柱にして骨組みを組み立てる。


 小屋の四隅の四本の支柱と梁だけは木の棒の接ぎ木では強度的に不安なので山から木を切り出して柱とする。


 ちょうどいい感じの杉の木の様な木が生えていたので五十本ほど切り出しアイテムボックスの中にしまい運搬。


 キャンプ場に一〇〇本近い杉の木を並べるとかなり壮観だ。


 柱の加工はミドリアとエリザベスに任せた。


 エリザベスの弱いブレスの温風で杉を乾燥させ、ミドリアが柱へと加工する。


 かなり綺麗な柱が次々と出来上がる。


 これを四隅に立てて支柱にする予定だ。


 俺は木の板をアイテムショップから買い、接ぎ木細工で次々に角材へと加工。


 支柱を立てた後、梁を通し骨組みとし、壁と屋根を作る。


 間取りは俺達の家と同じくリビングと寝室とキッチンの三室を持つ高床式の住宅を次々に建てていった。


 建屋が完成するとインテリアの搬入。


 二段ベッドやソファーセットに小物入れになるサイドテーブルやタンスに、調理はしないと言っていたがお茶ぐらいは飲めるように薪オーブンも設置。


 ちなみに井戸とトイレと風呂は共用だ。


 換気扇の無いこの世界で小屋の中にトイレを作るのは不衛生。


 翌日の夜明け前には即入居可能な五軒の新しい小屋が建った。


「ふー、やったな」


「さすが我が君です」


「何を言ってるんだよ。ミドリアとエリザベスが手伝ってくれなかったら完成しなかったぞ」


「じゃあ、わらわにご褒美をくれ!」


「ほれ、頭をなぜてやる。よしよし」


「くーっ! たまらんな!って違ーう! 違うぞ! こんな物じゃない! 騙されないぞ!」


「なんだよ?」


「ミドリアと一夜を共にしたのにわらわとの子作りはまだだぞ!」


「あれ? そうだったっけ? 最近色々有ったからすっかり忘れてたわ」


「そういう事で、今すぐ新築の小屋で始めよう!」


 いきなり服を脱ぎだすエリザベス。


 俺は慌ててエリザベスを止める。


 さすがに徹夜明けの朝一番からそんな事をやる気は起きん。


 それにやらないといけない事がまだまだある。


「今日はダメだ。これから王都に戻って建築資材の運搬をしないといけないから」


「うぐぐ、そんな仕事が残ってたな。でも、嫁が寝てやると言っているのに断るのか? 結婚したというのに未だに生娘だぞ。タカヤマはわらわの事が嫌いなのか?」


「嫌いな訳が無いだろ」


「じゃあなんで尻尾を消したわらわを抱いてくれないのじゃ!」


「しっ尻尾を消したのか?」


 エリザベスは後ろを向くとスカートをまくり上げた。


 そこにはあれ程存在感を示していた極太の尻尾が綺麗サッパリ無くなっている。


 どう見ても普通の女の子がパンツを履いただけのお尻だった。


 すごくいい!


 いいよ!


 エリザベス!


「お、おまえどうしたんだ? いつの間に?」


「あれからずっと人化の訓練をしていたからな。昨日やっとしっぽを消すことが出来たんだ」


「よくやった! エリザベス」


「じゃあ、さっそく!」


 再び服を脱ぎだすエリザベス。


 いや、俺もそう言うのしたくない訳じゃないけど今日は仕事あるからマジ無理だって。


「いや、今は無理だ。これから運搬作業をしないとお屋敷が建てられないからな」


「じゃあ、いつならいいんだ? 運搬終わったらか?」


「今夜かな?」


「よし、今夜だからな! 約束だぞ」


 どうやら今夜で納得してくれたようだ。


 石川達も今夜は王都泊まりで居ないのでまあ大丈夫だろ。

 

 *

 

 ミドリアの転移魔法陣で王都へ戻って来た俺達。


 早速メモに書かれていた住所に行く。


 するとカリンさんが事務所の外にうず高く積み上げられた資材の横で職人たちと待っていた。


「おう、来たか。基礎工事の資材は用意しておいたんだけど、本当にこれだけの物がアイテムボックスの中に入るのか? 無理なら馬車を呼ぶぞ」


 資材は小屋一軒分。


 一度で楽々取り込める量ではないがまあ楽勝だ。


「任せてくれ」


 俺は開いた手の平を目の前に突き出すと次々と資材をアイテムボックスに取り込む。


 なんていうか掃除機でゴミを吸い込んでる感覚に近い。


 半信半疑で見ていた職人たちから歓声が上がった。


「すげー!」「まじかよ!」「次々に取り込んでるぞ!」「こんな事が出来る奴が居るんだ!」


 ここまで驚かれると正直悪い気はしない。


 全ての資材をアイテムボックスの中に取り込むと、俺の横では目を丸くしたカリンさんが口をぽかんと開いていた。


「口から出まかせじゃなかったんだな」


「勇者ですから、これぐらいの事当然です」


「もしかすると、家を取り込んだって言うのも冗談ではなく本当なのか?」


「はい」


「それなら、試しにこの石造りの事務所を取り込んでみてくれないか? もし、そんな事が出来るならわざわざ現地に行って屋敷を建てないでここで建ててから持っていけば済みそうだ」


「なるほど」


 日本で言うならプレハブ工法というかユニット住宅工法みたいなもんだな。


 俺は早速事務所を取り込んでみる。


 石造りで重量が有るせいか取り込みがかなり大変だったが手の中に収まる。


「ふー、どうです?」


「あががが、本当に事務所を取り込みやがったよ」


 カリンさんは腰を抜かして失禁しそうなぐらい驚いていた。


「じゃあ、郊外に建築できる場所を探してそこに建築かな? あ、事務所は元通り戻しておいて」


 俺が事務所をアイテムボックスから戻そうとアイテムボックスから事務所を取り出すと、ザラザラ―と音を立てて事務所のレンガの床が抜けた。


おまけに置くときの衝撃で壁にヒビが入る。


「あちゃー!」


「ごめんなさい」


「いいっていいって。老朽化してたのと宙吊に対応して無かったんだな。石造りだから一階の床は地面の上にレンガ並べただけだから地面が無い状態だと床が抜けて当然だな。今のでアイテムボックスに石造りの建物を取り込む事が出来ても、無事には取り出せない事が解ったから、予定通り向こうで作るぞ」


「でもこれじゃ、事務所が使い物にならなくなったんだけどいいの?」


「一ヶ月は向こうに泊まり込みだから気にすんなって。その間にこっちに残った職人たちにどうにかさせるさ。ハハハ」


 そう笑っているカリンさんだが目は泣いていた。


 そりゃ事務所が壊れたら泣くよね。


 完成した時の成功報酬を事務所の修繕費込みで増やしておこう。


 *


 カリンさん達をミドリアの転移魔法陣を使って運搬しようと思ったが、さすがにこの世界で一般的になってない転移魔法陣を使うのはマズいだろうなという事で馬車で移動して貰う事にした。


 俺達は一足先にキャンプ場へと戻る。


 資材を屋敷の建築予定の河原の近くに積み上げて、小屋で仮眠をしていると昼前ぐらいに馬車に揺られてカリンさん達がやって来た。


「おまたせ!」


 カリンさんの後に続いて職人さん達も馬車から降りて来る。


 俺はカリンさんに長旅を労う。


「それでは寝泊まりする小屋に案内します」


 職人さんはカリンさん以外全て男だったのでカリンさんだけが一人で小屋に泊まり、他の職人さん達は四人ずつ泊まってもらう事にした。


 俺がカリンさんを小屋に案内すると驚いていた。


「小屋が有ると聞いていたから世話になると決めたんだけど、まさか一日で建てた小屋だとはな」


「もしかして、建てるとこを見てました?」


「いや、見てないよ」


「じゃあなんで、突貫工事と分かるんです?」


「そりゃ、見ればわかるよ。入り口に出入りした足跡のシミが無いだろ? 雨が降った日に小屋に出入りすれば掃除しても消えない泥汚れの足跡が入り口の階段に残るからな。それが無いって事はつい最近に出来たって事さ。なによりこの木の香り、とてもいい匂いがしている。加工してすぐの材木だろう?」


「よくそこまで解りましたね」


「そりゃ長年大工をやってるからな。それにこの小屋の作りもすごい。階段を歩いても全然(きし)む音がしなかったし、ドアもスムーズに開いた。これだけの技術を持っている人の屋敷を作るとなると本気で気合入れないとまずいな」


 女性とは思えない程仰け反って豪快に笑うカリンさん。


 荷物を置くとまずは建築現場を見たいとの事なので河原に案内する。


 河原では俺が作った水車が水をまき散らしていた。


 するとカリンさんが顔をしかめた。


 水車がまずかったのかな?


 俺は恐る恐る聞いてみる。


「水車がダメですかね?」


「いや、水車じゃなくてこの場所がダメだな」


「ここがダメ?」


「あそこに有る大きな岩を見てくれ。岩の途中で色が変わってないか?」


 確かに岩を見ると高さ1メトル弱の所で下と上で色が違っていた。


 上の方が明るい色で、下の方が若干濃い色をしていた。


「確かに変わってますね」


「あの色の変わり目は川が増水してあそこまで川の水面が上がった痕跡なんだ。


ここに家を建てたら増水した時に流されるぞ」


「石造りの家でもダメです?」


「ダメだな。むしろ流されてきた流木とかが屋敷の壁に当たって大穴が空けば倒壊の原因になる。川から離れて魔法メインの給水設計にするか、もっと高台に家を建てて川が増水しても浸水ないようにするしかないな」


 さすがに水車の実証実験が終わってるのに、ここまで来て魔法メインの設計にはしたくないな。


 ならば盛り土でもしてそこに屋敷を建てるか。


「その高台ってどのぐらいの高さが有ればいいんです?」


「そうだな。増水が1メトル弱なので最低でも1.5メトルぐらいの高さは欲しいな」


「わかりました。厚さ1.5メトルですね。今すぐ盛り土します」


「あ、盛り土じゃダメだぞ。土だと川の流れで削り取られるからな。石とかじゃないとダメだ」


 土だと流されるからダメなのか。


 日本だったら盛り土をした後に外周をブロックとコンクリートで塗り固めればいけるんだけどな。


 こっちの世界にコンクリートが有るのかよく解らない。


 いや俺が以前迷宮に監禁された時、コンクリート詰めにされたから有るはずだ。


 でもコンクリートで家の土台を作るとなると相当の乾燥期間が要るから建築に取り掛かれるのが相当遅れるな。


 むー。


 そうなると一枚岩を岩山から切り出してくるしか無いかな?


 岩の切り出しは俺の剣技でしてもいいけどミスると山が消失とかに成りかねないから出来れば避けたい。


 ここはミドリアたんの空間転移の出番だ。


 空間転移を使えば岩の採掘なんて楽勝だろう。


 俺はミドリアとエリザベスに指示を出す。


 二人とも「待っていました!」という感じで俺に駆け寄る。


「ミドリア、すまない。これから岩山で空間転移を使っての岩の切り出しを手伝って欲しい」


「わかりました、我が君。お任せください」


「わらわはどうすればいい?」


「エリザベスはここの地面の整地をしてくれ」


「整地ってなんだ?」


「地面を踏み固めた後に、地面を平らにすることだ」


「そんな簡単な事か。わらわにまかせろ!」


「やる事は単純だけど、真っ平らにしないといけないから簡単じゃないと思うぞ。水が流れないぐらいに真っ平らにするんだぞ」


「わかった! わらわに任せるんだ」


「それと、カリンさん。ここに大岩を持って来ますので、危ないので職人さん達にこの辺りに立ち入らない様に伝えて下さい」


「石じゃなくて岩を持ってくる? 家の土台になるような厚さと硬さが必要なんだぞ? そんな物を持って来れるのか?」


「大丈夫です。任せて下さい」


 俺とミドリアは転移魔法陣の中に消えた。


 岩山に着くと俺達は手ごろな岩盤を探す。


 家の土台になるような岩なので粘土質の岩はダメだ。


 固く締まった陶器のような岩を探す。


 岩はすぐに見つかった。


「これでいいでしょうか?」


「これでいいな。よし、ミドリア。厚さ2メトル、縦横200メトルの板状になる様に岩を切り出して欲しい。ただし切り出しても転移はさせないでくれ」


「解りました」


 岩山が輝くと切り出しが終わったようだ。超巨大なタイルが切り出された。


「出来ましたよ。我が君!」


「ありがとう」


 俺はそれに手を添えてアイテムボックスの中にしまい込んだ。


 予想より重くて腰が曲がりそうになった。


 転移魔法陣を使い川原に戻るとエリザベスが建設予定地の整地を終えていた。


 エリザベスは仕事が早い。


 さすが高スペック。


 伊達に魔王やってる訳じゃないな。


 俺の指定通り水平に整地されていた。


「こんな物でどうだ?」


「完璧だな。ありがとう」


「ふふふ。魔王であるわらわにとっては整地などと言う単純作業は造作もない事!」


 エリザベスはどや顔をしながら凄くカッコいいこと言ってるつもりらしい。


 だけど、それ全然カッコよく無いから!


 俺はツッコミたい気持ちが喉元から溢れ出そうだったが、親切でやってくれた事だしあえて突っ込むのは止めておいた。


 俺はアイテムボックスから一枚岩を取り出すと川原に設置。


 しっかりと整地が行われていたので岩は殆ど沈み込むことは無かった。


 その様子をずっと見ていたカリンさんが信じられない物を見たといった感じで狼狽(うろた)えていた。


「おい、君らは一体どうなってるんだ? 普通は一週間は掛かる様な整地を一瞬でやったかと思ったら、こんな巨大な岩を切り出して来て設置までする。これを五分ぐらいでするってどうなってるんだよ!」


「勇者ですから」


「勇者だからなのか……? 勇者ヤバ過ぎだろ」


 俺の言葉を聞いてエリザベスも得意げに続ける。


「どうだ人間よ! わらわも魔王だからなっ! こんな事は造作もない事! おほほほ!」


「魔王様なんですか?」


「そうだ。わらわは魔王だ」


 ちょい!


 エリザベス!


 おまえはバカかよ!


 おまえ、なにドヤ顔しながら一般人に魔王だってカミングアウトしてるんだよ!


 俺は慌ててエリザベスの口を塞ぐ。


 まだ言い足りないのかエリザベスは俺の手の中で口をモゴモゴさせている。


「この子、自分の事を魔王と思ってる厨二病真っ盛りの痛い子なんです」


「は、はあ」


 俺達に押されっぱなしのカリンさんだったが、土台を見るとやたら感心していた。


「この土台なら間違いなくあのお城の様な屋敷が作れると思う。建築は私に任せてくれ!」


 そこへ血相を変えて飛び込んで来たセーレ!


 かなり急いできたのか息も絶え絶えな感じだ。


「ろ、ロココさんが!」


「ロココさんがどうした!?」


「大変な事に! 助けて下さい!」


 セーレはロココさんの危機を俺に伝えた。

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