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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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お風呂2 *

 ミドリアの転移魔法陣を使い、朝一番に王都の風呂屋に来た俺達。


 風呂焚きの仕方を風呂屋に見せて貰いに来た。


 風呂屋に入ってすぐの受付では番頭さんらしきおっさんが忙しそうに掃除をしている。


 そんなおっさんを捕まえて話し掛ける。


「すいません」


「今掃除中で開店はまだ先なんですわ。もう少し経ってから来てもらえます?」


「いや、風呂に入りに来たんじゃなく、風呂屋の設備を見せて貰いに来たんです」


「むー? 風呂の設備を見に?」


「見学させてもらえませんか?」


「あんたらアレだろ? 綺麗なお姉ちゃんをこれだけの数揃えてるって事は、お姉ちゃんたちが裸でおっさんにご奉仕するいかがわしい風呂屋でも開こうとしてるんだろ?」


 それを聞いた石川とミドリアが大喜びしてる。


「ねーねー、タカヤマ聞いた? わたしの事を綺麗なお姉様ですって!」


「そんな事いったか?」


「そんな綺麗なお姉ちゃんが一緒に居てくれてあんたは幸せよね」


 何ボケまくってるんだよ!


 おまけにミドリアも負けずにボケまくってるし!


「我が君、わたくし綺麗で美人で器量好しだと言われましたよ?」


 フハハハ!と二人して怪しい笑い声をあげる石川とミドリア。


 変な誤解されると困るからそういう笑い声はやめてくれ。


 俺は番頭のおっさんに誤解を解く為に説明する。


「いや、そういう事じゃなくて普通に自分の家に風呂を作りたいんですよ。あくまでも自家用の風呂を作りたいのであって、商売するつもりなんてこれっぽっちもありません」


「それならタライに湯でも張ればいいだろ」


「僕達みんなで一緒に入れる位のサイズの大きなお風呂を作りたいんですよ」


「ほらやっぱり業務用じゃねーか。そんな大人数が入れる風呂なんて個人宅じゃ必要ねーだろ。ささ、営業の邪魔だ。とっとと帰ってくれ!」


 結局ライバル業者と間違われてホウキで掃き出される様に店を追い出された俺達。


 やっぱりこういう物は建築業者に作って貰わないとダメなのかな?


 引き下がったものの、みんな不満たらたらだ。


「追い出されたな」


「企業秘密はやっぱり教えられないか」


「セコイおっさんですわね」


「けち臭いおっさんですぅ」


「でも、わたしの事を綺麗って言ってくれたからいい人だと思うよ」


「はいはい。キレイキレイ」


「むうっ! その雑な扱いな言い方がムカつくんですけど!」


 ここで素直に綺麗とかかわいいとか言ってしまうと図に乗るのが石川だから、口が裂けてもそういう事は言えない。


 それにしても、湯沸かしの方法を教えて貰えなかったのは痛かったな。


 別の風呂屋を当たってみるかな。


 帝都に風呂屋は一軒だけという訳じゃないだろうしな。


 それともロココさん経由でお風呂を作れる建築業者を紹介してもらうしかないかな?


 そんな事を考えていると見知らぬクールビューティーな感じの綺麗なお姉さんが声を掛けて来た。


「おや? シェリーさんのとこの店員さん達じゃないか。今日は食堂の開店前に朝風呂にでも入りに来たのかい?」


「お風呂を作ろうと思って参考にする為にここのお風呂屋さんの風呂焚きの設備を見せて貰おうと思ったんですけど、断られてしまって……他の店に行こうかと考えてました」


「なんだ、そんな事かい。着いて来な」


 お姉さんに連れられて、再び風呂屋の中に。


 俺の姿に気が付いた番頭が血相を変えてやって来た!


「おいおい! ここには二度と来るんじゃねーとついさっき言ったばかりだろ? 商売の邪魔だ! すぐに帰ってくれ!」


 するとそのおっさんと俺の間にお姉さんが割り込む。


「お前の店は随分と了見の狭い商売をしてるんだな?」


「カ、カリンさん!」


「こいつらは私の連れなんだ。私の紹介でこの風呂屋を教えてやったのに、風呂焚きの仕組みを見せるのを断ったそうじゃないか?」


「いえ、そんな事は御座いません」


「じゃあ、私は一番風呂に入って来るから、この子達に風呂焚きの仕方を教えてやってくれよ」


 お姉さんは俺達に手を振って「じゃあ、またな」と言うと、女湯の中へ消えていった。


 番頭のおっさんはさっきまでと違ってやたらかしこまっていた。


「カリンさんとお知り合いとは。これはとんだご無礼を致しました。カリンさんとお知り合いなら最初から言ってくれたらいいのに」


 エリザベスがおっさんに聞こえる声で陰口を言う。


 それ声大きすぎて陰口になってねーから。


「さっきと態度が全然違うな」


「強い者に媚びへつらうゴミの様な人間ですわね」


 おっさん、額から冷や汗を流してるよ。


「そんな冷たいこと言わないでくださいよ。変な業者がまたエッチなお風呂屋でも開くと勘違いしただけなんですから」


 ヘコヘコするおっさんに石川が無遠慮で聞く。


「カリンは何やってる人なの?」


「カリンさんはこの辺りじゃ有名なまとめ役でして、この辺りの治安の良さはカリンさんが仕切ってるからなんです」


「ほう」


「彼女に歯向かった者はこの街で商売出来ないんですよ」


 カリンさんは街を裏から仕切ってるボス的な人なのかな?


 シェリーさんやロココさんに迷惑が掛かりそうなので怒らすような事をするのだけはやめておこう。


「それではボイラールームに案内します」


 かしこまってそう言って連れて来られたのはボイラールーム。


 階段を上った先に有ったのは巨大な水槽が二つだった。


 湯に手を入れてみると一つはかなり熱い湯が張られた大きな水槽で、もう一つは半分ぐらいのサイズで冷水が半分ほど張られていた。


 ボイラーは地下にあるイメージだったので物凄く意外だ。


 ボイラールームの中は機械の類はほとんど無く魔導士が数人働いているだけだった。


「この魔導士達に湯を沸かさせています」


「魔導士が湯を沸かしてるのか。薪とかじゃないんだな」


「さすがに薪で湯を沸かすのは時代遅れで、この店では初代が開業した時から魔法を使っていましたね。この巨大な水槽に魔法で湯を貯めています」


 番頭さんは冷水の水槽の近くに行くと、魔導士を紹介し始めた。


「こちらが水汲みの魔導士です。そこの大きな水槽に水魔法で水を溜めます。さすがにこのサイズの水槽に水を貯めるとなると井戸から汲んでいたんじゃ日がくれますからな、ハハハ!」


 魔導士が魔法を唱えると直径1メートル弱の水球が手から放たれる。


 水球は冷水の水槽の中に叩き込まれた。


 水球が水柱を上げる度にサブン!と音を立てて水位が徐々に上がっていく。


 番頭さんは既に水が溜まった隣の水槽へと俺達を連れて行く。


 既に魔導士が火球を水槽に向かって撃ち込んでいた。


「こちらが温水用の水槽です。水が溜まったらあとは温めるだけなんですわ。水槽目掛けて火球の魔法を撃ちこんで、少し熱いかな?ってぐらいまで温度を上げるんですわ。お湯が沸いたら後は簡単。この水槽の底に付いているバルブを開けて管を使ってお湯と水を下の階の浴槽やシャワーに運ぶだけです」


 なるほどな。


 水槽が2階に有るのはマンションやビルの貯水槽と同じ原理なのか。


 高低差で水やお湯を運ぶ。


 水を井戸から2階にあげるという手間がない魔法によって水を生成する手法だからこそ出来る、ポンプ無しで給湯する上手い方式だった。


 すると石川が俺に耳打ちする。


 周りにも聞こえる、無駄に大きい声でなんだが。


「ふーん、高山聞いた? ここの世界のお風呂って随分と魔法に頼りっきりなのね。魔導士を沢山雇ってる訳だわね。これは魔法を使えない番頭さんみたいな人じゃダメだわね」


 魔法を使えないのは石川、お前もなんだけどな。


 それを聞いてカチンときた番頭さんが慌てて弁解する。


「私は湯沸かし以外の事でちゃんと働いてますし! 掃除もするし、接客もしますし、金銭勘定もしますし! こんな使える番頭は居ませんから!」


「あ、こいつバカなんで思った事をすぐ口に出しちゃう痛くて頭の弱い子なんで気にしないでください」


「は、はあ」


「何よそれ! それがお嫁さんの私に言う言葉なの? 私が惚れてるから捨てられないと思って、言いたい放題ね! あんた頭おかしいんじゃないの? 大体ね、あんたは──」


 俺に突っかかって来そうな勢いの石川。


 それを慌ててなだめる番頭さん。


 アホな嫁ですいません。


「薪と魔導士を使わずにお湯を沸かすには炎結晶が有れば簡単にお湯を沸かす事が出来るんですが、これだけの量のお湯を丸一日の間沸かし続けるとなると金貨100枚分ぐらいの炎結晶が必要で、どうしてもコスト的に厳しいんですわ。なのでうちでは炎結晶の代わりに魔法使いを使っているのです」


「ほほう、魔法の代わりに炎結晶を使う方法も有るんですね。番頭さんから話を聞いた事でこのお風呂屋さんの大体の仕組みは解りました。ありがとう。助かりました」


「お役に立てましたか? カリンさんによろしくお伝えください」


 風呂屋から出た俺達は見学の結果を話し合う。


「結局は魔法なのね」


「魔法はこの世界じゃ当たり前の物で、俺達の世界のガスや電気みたいな物なんだろうな」


「炎結晶使えばお湯を沸かせるみたいですけどぉ、それだと高くつくみたいですねぇ」


 するとエリザベスが鼻をふんふんと鳴らして得意げな顔をしていた。


「それなら、わらわが作れるぞ! しかもあれぐらいの水槽なら一瞬でお湯に出来るぞ!」


 エリザベスの手の中にはいつの間にか野球ボールサイズの丸くて赤くて僅かに光る玉が握られていた。


「これか! これが炎結晶なのか!」


「本当は魔法を使えない者が使う炎系の武器なんだぞ。これを投げると炎が出るんだぞ」


「へー。もしかして氷結晶もそんな感じなのか?」


「さすがですわ、我が君。氷結晶も魔導士が氷魔法の魔力を貯めたもので、本来は攻撃用の物なのです。それを保存用に使った我が君は素晴らしいですわ!」


 相変わらずブレずに俺の事をもち上げまくるミドリアたん。


 嫁とはやっぱりこう有るべきだよな。


 石川も俺を敬う様に調教せねば。


 なんて事を考えていたら、いつの間にかエリザベスが噴水の目の前に行って炎結晶を噴水の中に叩きつけていた。


 ド! ガ! ン!


 辺りにとんでもない爆音が鳴り響いた!


 そして20メートルぐらいの高さの水柱が上がる。


「わらわの炎結晶はすごいだろ!」


 どや顔をして俺を見るエリザベス。


 ちょい!


 まてよ!


 これ、お湯沸かすとかそんなレベルじゃなくてどう考えても爆弾じゃねーか!


 手榴弾並の破壊力じゃねーか!


 噴水の吹き出し口が原型をとどめない位吹っ飛んでるし!


 おまけに物凄く濃い霧みたいな湯気がモクモクと上がってるし!


 辺りは湯気で真っ白だ。


 騒然とする噴水周辺。


 怒声の中、女の人の悲鳴も聞こえる。


「なんだなんだ!」「たすけてー!」「何が起こった?」「爆発事故か?」「魔物の襲撃か?」「衛兵を呼べ!」


 とんでもない事になってしまった。


「逃げろ!」


 俺は噴水の横で高笑いをするエリザベスを抱き抱えると、キャンプの小屋へと逃げ帰った。


 *


 王都の噴水周辺を混乱の渦に巻き込んだ俺達魔王様御一行様はキャンプ場の小屋へと舞い戻った。


「エリザベスさん、何て事してくれたんですか! 危うく捕まって王都出入り禁止になるとこじゃなかったですか!」


「なあに、捕まったら捕まえた奴を牢獄ごと焼き尽くせばいいだけの事!」


「おい、エリザベス! お前が言うと冗談にならないからやめろ。それとも、」


「わかったわかった、ごめんなさい。わらわは反省したぞ」


「本当に反省したのかよ?」


「本当ですかね?」


 まあ、いいか。


 エリザベスも本気で人間を殺すと言ってる訳じゃないだろうし。


 それにしてもあの炎結晶の威力は凄かったな。


 さすが魔王様だけはあるな。


「それにしてもエリザベスの炎結晶の威力は凄かったな」


「えっへん!」


「でも、あれじゃ火力が有り過ぎて風呂焚きには使えないな」


「あれでも十分小さいと思ったんだが、それならこれぐらいのでどうだ?」


 エリザベスは手に力を込めると、豆粒サイズの炎結晶を手のひら一杯に出した。


 大きさ的にはビー玉の小さい粒みたいな感じで、赤くて透明なガラス玉みたいな感じだった。


 それを一粒摘まんだミドリアは感心した表情をする。


「なかなかいい濃度と純度の炎結晶ですね」


「わらわの作ったものだからな」


「これぐらいのサイズでもこれだけの出来なら、風呂屋の水槽サイズならば水槽に3個ぐらい入れておけば十分沸かすことが出来ますね。割らずに入れておけば長い時間お湯を温め続ける事も出来ると思います」


「こんなちっさいのでいいのか。凄い火力だな。これを使えば湯沸しは解決かな? これなら魔法を使えない石川達でもお湯を沸かすことが出来るな」


「じゃあ、風呂は完成か?」


「いや、まだだ。肝心の給水の問題が残っている。水をどうやって汲むかだ。魔法を使わないで給水するとなると水結晶を使うしか無いのかな? セーレなら水結晶を作れるかな?」


「多分作れるとは思いますが、セーレさんはまだ戻って来てないですわね」


「ロココさんとマグロの仕入れに行ったきりか。そろそろ戻って来てもおかしくない頃なんだけどな。後で様子でも見に行くか」


 石川がつぶやくように言う。


「やっぱりこの世界って何でもかんでも魔法頼りになるんだね。私たちの居た世界だとガスコンロの栓を捻れば火がついて、水道の蛇口の栓を捻れば水が流れ出す。そんなのが当たり前だったけど、こっちの世界はみんな何から何までも魔法。魔法をあんまり使えないわたし達だと肩身せまいわね」


「石川達も魔法を習ったらどうだ?」


「そうね。リリィさんの修業が終わったら魔法習ってみるわ」


「でも水ぐらいなら魔法を使わなくてもどうにかなりますよ」


 そう言ったのは長野さんだった。


 そんな事は出来る訳が無いと思った俺だが、長野さんは自信ありげだ。


「マジで魔法使わなくて水を汲めるのか?」


「はい。川の水を使えば汲めます」


「汲むって言ってもバケツの中に汲むんじゃなくて、2階の水槽に汲むんだぞ。そんな事出来るのか?」


「出来ますよ。水車を使うんです」


「水車? 水車って川のほとりで回ってるあれか?」


「はい、あの水車です」


「水車で小麦を粉にするとかなら知ってるんだけど、あれでどうやって水を汲むんだろ?」


「今絵を描くからちょっと待って下さいね」


 長野さんは手慣れた感じで絵を描く。


 その絵は大きな車輪の様な水車の外周部にバケツを取り付けた感じだ。


 動作は次のようになる。


 川の流れで水車を回転させる。


 バケツの部分で水を汲む。


 更に川の流れで水車を回転させる。


 高いところまで水を持ち上げたところでバケツから汲んだ水が流れ出る。


 そして水路へと水を流す。


 こんな感じの仕掛けになっていた。


「これならば水車だけで水を高いところに持ち上げることが出来ます」


「これは面白い。セーレが水結晶を作れると決まったわけじゃないからな。試作の水車を作ってどこまで水を汲み上げられるか試してみよう」


 俺は木工スキルを駆使して水車を制作。


 キャンプ近くの川の流れでどこまで水車で水を汲み上げられるか試してみた。


 だが水を汲み上げられたのは2メートル弱。


 人の身長よりも多少高い程度だった。


 水車での水の汲み上げは思っていたような結果は出せなかった。


「水汲み水車は思ったよりも難しいな。水車を大きくすればかなり高いところまで水を持ち上げられるんだけど、そうするには水車の直径を大きくしないといけない。結果としていくつものバケツを抱え込んだ水車は重くなる。重くなった水車を回そうとするとそれなりの水流量は必要で、この川の深さではちょっと足りない感じだな」


「我が君の技術的な検証には非常に目を奪われましたが、やはり水汲みは利便性と安定性を重視して水結晶を使った方がよろしいのではないでしょうか?」


「そうかもしれないな」


 そこにどや顔をした石川が現れる。


「ふっふっふ! 高山ってホント馬鹿ね」


「うるせーよ! 最近お前、妙に俺に突っかかって来るな?」


「高山が変な事ばっかりするから、突っ込まずにいられないのが原因なの!」


「あー、そうですか」


「おつむが虚弱体質の高山に代わって、脳細胞が瑞々しくてピチピチ新鮮筋肉質なわたしが教えてあげるわ! こうすればいいのよ! じゃじゃーん!」


 石川は俺の鼻先に一枚の図面を突き付ける。


 あ、やべ!


 なぐりてー!


 俺を小ばかにしてどや顔する石川の顔見てるとまじムカついて殴りてー!


 まあ、女の子は殴らんけど。


 男だったら間違いなく反射的に殴ってた。


 そう得意気に言う石川であったが、こいつはバカなので脳みそ筋肉質の事を巷では脳筋と馬鹿にされているのを知らない様だ。


 石川が俺に突き付けた図面には二つの水車が書いてあった。


 一つは大きな水車。


 もう一つは小さな水車。


 これをどうすればいいんだ?


「この大きい水車で水を汲むの」


「それは解る。でもこの小さい水車はなんなんだ?」


「これね! いいところに気がついたわね! 高山でも解ったのね。えらいわ」


「むか!」


「なによ? 聞きたくないの?」


「聞きたいよ」


「じゃあ、お願いしますは? 石川さんお願いしますは?」


 むかーー!!!


 ムカつく!


 まじムカつく!


 でも、水車の為だ。


 ここは素直に頭を下げるしかないか。はあ。


「お願いします」


「いいわ。教えてあげるわ。この小さい水車を補助動力にするの。大きい水車はこの川の水流じゃ直接回せないから、この小さい水車を回して、歯車、いやギアね。ギアでこの小さい水車の回転を大きな水車に補助動力として伝えてゆっくりと回すのよ。どう? 凄いでしょ?」


 すげー!


 こいつ天才だよ!


 馬鹿と天才は紙一重と言うけど、石川がそうだったのか!


「お前、アホだと思ってたら天才だな! よくそんなすごい物を思いついたな!」


「これは長野さんから……じゃないわ! 自分で考えたのよ! どう? わたしの事見直した?」


 あ、長野さんの発案ね。


 納得。


 石川が賢いと思った俺がバカでした。


 俺は長野さんのアイデアのギア式水車を制作。


 動力水車の回転をギアを通して水汲み水車に伝えて回す。


 するとゆっくりだが4メートルの高さまで水を汲み上げることが出来た。


 すげー!


 これは凄いかも!


 異世界にスチームパンクならぬ水車パンクの時代がやって来るかも!


「我が君! さすがですわ! あの落書きの様な図面からこのような水汲み装置を仕上げるとは、さすが我が君です!」


 おれはキャンプ場の小屋に戻ると図面を引き始める。


 1階が風呂で2階が水槽だ。


 俺が図面を書いていると石川が口出しをしてくる。


「ねー、これ何で作るつもり?」


「これか? 俺は木工が得意だから木で作ろうと思ってるんだけど?」


「死ぬ」


「えっ!?」


「死ぬわよ! そのお風呂」


「ええっ!? なんで死ぬんだよ! 訳わかんねーよ!」


「水槽に水を入れたら重さで二階の床が抜けて潰れて死ぬ。それに炎結晶を水槽に入れたら燃えて火事になって死ぬ! 石で作りなさい」


「石で?」


「うん、石で作るの」


 図面を引き直しているとまたしても石川が口を出してきた。


「ねー、この建物、お風呂だけ?」


「そのつもりだけど?」


「ダメね」


「えっ!?」


「ダメっ! もったいないわ! そのお風呂」


「ええっ? もったいないってどういう事? 訳わかんねーよ!」


「せっかく石造りの丈夫で立派な建物を作るのよ。それなら食堂も寝室も居間もトイレもクローゼットも付けられるものは全部付けてお屋敷にしなさいよ!」


「いや、そんなの作ったら大変だし」


「大して手間変わらないから、お屋敷にしなさい!」


 石川に強引に押し切られてお屋敷を作る事になった。

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