女教師佐川の念願の仲間4 *
誤字修正の見直しが終わって無いのに、日刊1桁に入って変な汗が出てきました。
ブクマしてくださった方、読んでくださった方、ありがとうございます。
最近感想が結構もらえるようになって嬉しいです。
「宝珠を落とす敵ってレアモンスターよね?」
「そうさ、物凄く強い」
「そんな強い敵、よく一人で倒せるわね?」
「普通に戦ったら倒せないな。俺は先生みたいに強く無いから罠を仕掛けてひたすら待ってる」
「大変そうね」
「雑魚のモンスターさえ罠の所までなかなか来てくれなくてな。数の少ないレアモンスターともなると滅多に罠に掛かる事は無くて大抵の日は待ってるだけで一日が終わるんだ。だから少しでも狩りの効率を上げようと思って先生を仲間にしようと思ったんだ。詳しい事は明日話すから今日は寝かせてくれ。食料補充に大聖堂迄行って疲れ果てた」
そう言うと隅田は寝息を立てて寝てしまった。
佐川もそのまま寝る事にした。
翌朝起こされた。
正確には翌朝ではない。
深夜3時、まだ朝ではない。
寝てから5時間後だった。
「先生、起きてくれ。先生!」
「おはよう。随分と早いのね」
「そりゃゴブリンの朝の狩りに合わせて罠を仕掛けないといけないからな。ゴブリンが寝込んでいる間に準備を済ませないと、ゴブリンに囲まれて大変な事になるんだ」
隅田に連れて来られたのは登り坂の上に作られた長い直線の細い坂道だった。
丸い大きな石を隅田は汗を流して押していた。
その石は直径一メートルぐらいで重さは百キロをくだらない。
二〇メートルぐらいの坂道の頂上に向けて石を押し上げていた。
「この石をあの坂の上まで押し上げて、レアゴブリンが来たらこの石で押しつぶすんだ」
「そんな重そうなものをあの坂の上に押し上げるの?」
「これぐらい重くないとレアゴブリンは倒せないからな」
「手伝うわね」
「いや、手伝わなくていい。これは俺が持ち上げるから先生は俺の護衛をして欲しい」
「護衛? 私は手伝わなくていいの?」
「この石を押し上げてると雑魚ゴブリンによく絡まれるんだ。押し上げてるのを止めて雑魚を倒してたいら石が転げ落てまた最初からやり直しになるだろ? そうならない為に護衛をして欲しい」
「解ったわ」
隅田は力持ちだ。
額に汗しながら必死に坂の上まで石を押し上げる。
ゴロゴロと少しづつ、そして確実に押し上げる。
隅田の事はあまり知らない佐川であったがそんな彼の地道に努力する姿を見ていると好感が持てた。
隅田は三〇分ぐらい掛けて坂の上まで石を押し上げた。
「ふー、疲れたぜ」
「お疲れ様。お水でも飲む?」
「ありがとう」
佐川はアイテムバッグの中から水筒を取り出すと、隅田に渡した。
「うんくっ! うんくっ! ぷはー! 生き返るわ!」
水を数口飲むと、隅田は急にばつの悪い顔をする。
「水、腐ってた?」
「いや、美味しかったよ」
「何かマズい事あった?」
「いや、この水筒先生が普段飲んでるのだろ? 俺何にも考えないで水筒に口付けちゃったけど、これって間接キスになるんじゃないのかって思ってな」
「おばさんと間接キスなんて嫌よね」
「いや、そうじゃなくて男の俺が口飲みした水筒だと先生が嫌なんじゃないかと思ってさ。まだ飲んでない水筒を返そうかと思ったんだけど、俺結構ダンジョンに潜ってから長いからもう飲みかけの水筒しかなくて返せないんだ。ごめん」
「何謝ってるのよ! 先生そう言うを全然気にしないし! 隅田君が飲んだのなら何の問題も無いわ」
隅田に渡した水筒を取り返し自分も口飲みする佐川。
そういう佐川であったが他人の口飲みした飲み物を飲むのは生まれて初めての事だった。
少し気持ち悪い気もしたけど隅田に嫌な思いをさせる訳にもいかないので無理して飲んだのだ。
でも飲んでから気が付いた。
異性が口を付けた水筒だってことを。
異性の飲んだ水筒を口飲みした事で変に意識して顔が真っ赤になりそうになる佐川。
無理して平然とした態度を取り続けた。
一休憩して息が収まった隅田は坂を降りていく。
「先生とパートナーを組んだ事だし、待ってるのも暇なんで敵を連れて来るよ」
「大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。俺が坂に敵を連れて来たら、先生は石を落としてくれ」
「うん」
隅田は五分ぐらいすると叫びながら物凄い数のゴブリンを連れて来た。
その数三〇匹ぐらいは居そうに見える。
「うひゃー! 手違いで敵に絡まれてとんでもない数になってしまった!」
汗とツバキをまき散らしながら、必死の形相で坂を上ってくる隅田。半泣きの状態だ。そんな隅田が坂を上りながら言う!
「先生! 今だ!」
「今落としたら隅田君巻き込まれるよ?」
「大丈夫! 俺を信じてくれ!」
隅田の怪我が心配だったが言われた通りに石を落とした。
結構な勢いで落ちる石。
隅田はその石を器用にジャンプして避ける。
隅田を追っていたゴブリン達は目の前から落ちて来た石に身の危険を感じで道を戻ろうとするが既に手遅れ。
皆、石の落下に巻き込まれてペチャンコになった。
肩を抱き合い喜び合う二人。
「ふー! やったな」
「すごい数倒したね」
佐川も隅田も異性と抱き合う事なんてした事ないので、素に返ると二人とも急に恥ずかしくなって俯いてしまった。
しばらく沈黙が続いた後、隅田が口を開く。
「二人で組んだら倍じゃなく10倍ぐらいになったな」
「うん、凄かったね。レアのゴブリンはいた?」
「いたけど……宝箱落ちてないからハズレだな」
「あら残念」
「宝珠は滅多な事じゃ落とさないらしいんだ」
「そうなんだ」
「でも、武器をいくつか落としてるな。銀の剣に銀の鎧。みんなペチャンコだから使い物にならないけど素材としては売れると思う」
「じゃあ、これ集めて神官さんに買い取ってもらいましょう」
その後も何度か狩りを続け山のような屑鉄を集めた二人は大聖堂へ戻る。
ちょうど終礼が終わった直後で何人かの生徒が残っていた。
「あ、佐川だ」
女生徒が佐川の姿を見つけると絡んできた。
あの食堂で佐川に虫入りシチューを食べさせて笑っていた生徒だ。
「隅田と一緒じゃない?」
「チーム『嫌われ者』を本当に結成したんだ」
「マジマジ? 超ウケるんですけど!」
「お祝いに、また虫入りのシチューでも食べさせてやろうかしら?」
「今度は毛虫とか毒虫がいいわね」
「ビタミンミネラルたっぷりで美味しいわよ。あははは!」
「ちょーうける!」
佐川は女生徒達を見つけると背を丸めて小動物の様に怯えるが、隅田が女生徒の一人の胸倉を掴むと怒鳴り返した。
「先生が何したって言うんだよ! 何もしてないだろ!」
女生徒は隅田の剣幕に怯えてそれ以上は何も言わずに退散した。
「胸糞悪い女どもだ!」
「助けてくれてありがとう」
「気にすんな。先生は俺のパートナーだからな。守ってやるさ」
「隅田君……」
神官に屑鉄の買い取りを頼む。
さすがに素材扱いなので一個一個は高値では売れなかったが、量が有ったので結構な額になった。
その金額20万ゴルダ。
二人の初狩は大成功だった。
読んでくださいましてありがとうございます。




