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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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再び勇者召喚6

 しばらくすると、神官たちが大聖堂に大きな箱をいくつも運んできた。


 どうやら俺達への装備の支給が始まるようだ。


 箱が積み上げられると高ランクのクラスメイトから呼ばれ始める。


「それでは装備の支給を始めます。まずはAランクの田中様と吉田様、こちらへ」


 二人は神官達によって大聖堂からそれぞれ別の部屋に連れていかれた。


 吉田さんには女神官がついていたみたいだし、Aランクなので神官達に着替えさせてもらうんだろう。


 まるで貴族や王族並みの扱いだな。


「次はBランクの22名様。装備一式の入った箱をお渡ししますので、こちらにお並び下さい」


 次は最大勢力のBランク勇者だ。


 Bランクともなるとさすがに人数が多いので神官が着替えを手伝ってくれることは無いようだ。


 それぞれ装備の入った木箱を渡される。


 箱の中に収まらなかった装備が顔を覗かせていた。


 見た感じ聖銀装備っぽい。


 色が白くて清潔感がある装備だ。


 聖銀装備とは騎士団や魔導士団のエリート部隊が使う装備だ。


 魔を退ける高価な貴金属の聖銀で作られた装備は耐魔性能に優れ、重量も軽く非常に高価な物。


 日本円で例えるなら1セット1億ぐらいの価値があると思う。


 こんなもん、よく22人分も集めたと感心するわ。


 そりゃ、こんなもの用意したら俺ら底辺勇者の食事にシワ寄せがくるわな。


 箱を受け取った生徒が神官達から簡単な装備の使い方のレクチャーを受けると、男子生徒は次々制服のブレザーとズボンを脱いで着替え始める。


 次々と女子から上がる悲鳴のような黄色い声。


 それは本気で泣き叫んでるのではない。


 目を手で覆っている様に見えて、ちゃっかり指の隙間から男子の下着姿を覗き見してる女子の多いこと多いこと。


 女子も異性の裸には興味津々なようだ。


 男子達が着替え終わると即席騎士様の出来上がりだ。


 結構様になってるぞ、お前ら。


 結構かっこいい。


 鎧を着たせいか、すげーテンション上がってチャンバラごっこ始める奴も居るし。


 でも、それ、真剣だからふざけてると死ぬからな。


 女子は大聖堂で着替えるのは流石に周りの視線が気になるのか、別の部屋に移動した。


 クラスのアイドルの京子ちゃんの生着替えが見られないのはちょっと残念。


 そんな事をやっていると着替えに行ってた田中君と吉田さんが戻って来た。


 着ているのは金銀宝珠が散りばめられた真っ白い装備。


 田中君は板金の甲冑の装備で、吉田さんは布のローブだ。


 どちらも仄かに光を放っていた。


 周りから上がる感嘆の声。


 すげーな、おい!


 キラキラ光ってるよ。


 英雄装備かよ!


 これ以上のグレードだと伝説装備ぐらいしか無いといった、かなりの高性能装備だ。


 1セット10億ゴルダ位するんじゃないのか?


 さすがに俺はこれを着た事がない。


 俺の場合、地のステータスが高いから、装備なんて誤差範囲だからこだわる必要はない。


 でも、目の前で英雄装備を見せつけられるとちょっと着てみたくなる。


 正直羨ましいわ。


 耐魔性能が高く、やたら軽いうえに、腕力ブースト、魔力ブースト、命中ブースト、経験値ブーストまで掛かる優れもの。


 王族のみが袖を通す事の許される装備だ。


 そんなものを貰えるなんて、田中君と吉田さんはどこまで期待されてるんだ?


「Cランクの11名様、集まってください」


 Cランクもいいもの貰えるかと思ったら、急にグレードが下がった。


 真っ黒い色をした漆黒の鎧、黒鉱装備だ。


 割と高めな装備ではあるが武器屋で買える。


 割と高めと言っても冒険者が頑張れば買えるレベルの装備なんで性能はお察しだ。


 防御力は聖銀装備の半分ぐらいあるんだけど、やたら重くてステータスブーストが無い。


 よく見ると佐川先生もCランクだった。


 明らかにBランクと比べて見劣りする装備を見て恨めしそうだった。


 結構葬式ムードが漂うCランク。

 

 すぐにDランクも呼ばれた。


「Dランク3名と、Eランク1名集まりなさい」


 Eランクという言葉を聞いて大聖堂中の高ランクからすげー注目集まってる。


 なんか恥ずかしいわ。


 Dランクの女の子と間違われると困るので、大きな声で言ってやった。


 それはそれは堂々と胸を張ってな。


「Eランクの高山です!」


 後ろのクラスメイト達からクスクスと笑い声が起こったが無視だ。


 俺に渡されたのは汚い銅の短剣一本と、ボロボロの旅人の服だけ。


 旅人の服はポンチョみたいな上下一体型のローブみたいなもの。


 かなり使い込まれた感じでボロボロでどう見ても中古品だ。


 これを着ると丈が短いので太ももの中央辺りから足首まで素足をさらけ出して結構カッコ悪いんだよな。


 絶対バカにされるぜ。


 あとで素足を隠すズボンを用意しないとな。


 とりあえず今は制服のズボンをそのまま履いておこう。


 短剣も中古品らしくて刃こぼれしまくりで、どう見ても手持ちの10徳ナイフの方が切れ味良さそう。


 きっと間に合わせにどこかの廃品置き場から拾って来た装備だ。


 女の子達の装備は、茶色の麻のコートと麻のチュニック、木の杖だけ。


 武器屋でセットで3000ゴルダで買えるぐらいの安物だ。


 一応新品ぽかったがこっちもかなり酷かった。


 それを見て石川が吠えた。


「なによ! 田中も吉田もクラスじゃ浮いてたくせに、Aランクだからってなんであんな綺麗な装備なの? 田中はキラキラ光る鎧だし、吉田は真っ白いドレスみたいな綺麗なローブ。それに比べて私たちのは浮浪者が着るような服じゃない! Dランクだからって待遇違い過ぎよ!」


 それを聞いて神官がなだめる様にフォローする。


「そんなに怒りなさるな。訓練で実績さえ上げればランクも上がると思うから。そうなればもう少し待遇が良くなると思うぞ」


「そうなの? 私がんばるっ!」


 簡単な言葉で機嫌を直す石川。


 ちょろい女である。


 Dランクの三人娘は部屋に戻って着替えて来た。


 うん、みすぼらしい!


 スゲーかっこ悪い。


 ロリッ子の香川ちゃんのKAWAIIオーラも失われて、ただのこ汚いストリートチルドレンに。


 装備が全員に行き渡った所でアウラ王女が現れた。


 手にはバレーボール大の透明で丸い盟約のクリスタルを持っていた。


 俺達に盟約させるのか。


 ちょっと面倒な事になりそうだ。

 

「これから盟約のクリスタルで血の盟約をして頂きます。皆さんは4人でグループを作って盟約を行って貰います。Aランクは二人だけなので吉田さんと田中君だけで盟約して下さいね」


 真っ白いローブを着た吉田さんが手を上げて質問した。


「血の盟約とはどの様な契約なんですか?」


「隠したり嘘言っても仕方ないので本当の事を話しますわね。運命共同体と言う言葉は知ってるかしら?」


「はい。どんな事が有っても運命をともにするグループの事ですね」


「そうです。よく知ってましたね、いい答えです。それと全く同じことなのです。血の盟約を結ぶと一人が経験値を稼ぐと盟約を結んだ他の人も同時に同じ経験値を稼げる様になります。だからメンバーの誰かが敵を倒せば他の人にも経験値が入るから、単純に言うと4人で盟約をすれば経験値が4倍に増えるのです」


「ほほー!」「マジかよ!」「それは凄い!」


 クラスメイトから感嘆の声が上がる。すかさず吉田さんが再度質問をする為に手を上げる。


「何かデメリットはありますか?」


「普通に努力をしてくれればデメリットは何も無いわ」


「そんな美味しい話は無いと思うんですが? デメリットが無いという証拠は有りますか?」


「この私の後ろに有る青い宝珠、これは審判の宝珠と言って嘘を見抜く宝珠なの。この宝珠の前で嘘を言うと宝珠が赤く光り、真実を言うと青く光ります。赤く光って無いと言う事は私が嘘を言って無いって証拠。嘘だと思うならこの宝珠の前で何か嘘を言って貰うといいわ」


「では私が試します!」


 吉田さんは宝珠の前に立つ。アウラ王女が質問して吉田さんが答える事になった。


「では吉田さん、私が質問するからすべて『はい』で答えてください」


「わかりました」


「では始めるわよ。あなたは女の子ですか?」「はい」


 宝珠は青い。嘘ではない様だ。


「あなたは彼氏がいますか?」「はい」


 宝珠が赤く光った。嘘だった。現在彼氏募集中らしい。少し気恥しそうにする吉田さんである。


「あなたは好きな人が居ますか?」「はい」


 宝珠は青いが、代わりに吉田さんの顔が真っ赤になった。


 吉田さん、田中君の事が本当に好きらしいからな。


 恥ずかしいのと、フラれるのが怖くてまだ告白出来てないみたい。


「その人は田中君ですね?」


 うわ! なんて質問するんだよ! 乙女の恥じらいとか完全無視かよ! それを聞いた吉田さんは『はい』とは言わずに怒鳴り声を上げる。


「な!なんで私がそんな事言わないといけないの!?」


 吉田さんは答えずに逃げるように大聖堂を出ていった。


 宝珠の代わりに顔が真っ赤になった田中君が吉田さんの後を追って部屋から出て行った。


 吉田さんは本当に田中君が好きみたいだな。


 大聖堂からは笑い声が上がった。


 それにしても王女さん、吉田さんを泣かせるような質問するなよ。


 吉田さんは一推しの勇者さんなんだろ?


 あんな事、大勢の前で言われたら俺なら泣くかも。


 アウラ王女はそんな吉田さんの気持ちも気にせずに、面倒なのが居なくなって良かったといった感じで笑顔で話を進める。


「みなさん、今ので私が嘘を言って無い事がお判りになりましたか?」


 俺は知っていた。


 アウラ王女は嘘は言ってなかった。


 でも、本当の事も言ってなかった。


 血の盟約、それは経験値を共有するとともに目的を達成するまでグループを抜けなくさせる(かせ)である。『魔王を倒す』という目的を捨ててグループから抜けたり、逃亡できなくなる呪いでも有る。


 王女は『普通に魔王を倒すために努力してくれればデメリットは何も無いわ』と言った。


 つまり、魔王を倒す努力をやめればデメリットが有ると言う事だ。


 さらに言うのならばそのデメリットは『逃亡したメンバーの死』でも有る事を。


 この王女は明らかに胡散臭いと異世界転移のエキスパートとしての俺の経験が警告した。

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