冷蔵庫作り7 *
クーラーボックスの完成を祝い、宴となった。
宴と言っても大量に獲れたカニの料理とお酒だけの質素な宴会だ。
カニはむき身にして小麦粉を付け、卵液を通し、砕いたパンを衣として付けた物。
エビフライならぬカニフライである。
それがまた大好評であった。
「うまうま! タカヤマ! うまうま! これは美味しいぞ! サクッとしていて、うまうま!、ジューシー。ちょっと薄味だけど、うまうま!、そこがいいな!」
相変わらず口から食べかすをまき散らしながら話すエリザベス。
汚いから食うか喋るかどっちかにしてくれ。
でもまあ、今日は祝いの席だから細かい事を言うのは無しだ。
「おいしいだろ?」
「ああ、凄くおいしいな。このカニフライと前に言っていたエビフライはどっちの方が美味しいんだ?」
「同じぐらい美味しいと思うぞ」
「そうか! エビフライも期待してるぞ!」
「おう、期待しとけ!」
「我が君の作る料理はいつも最高です! 惚れてしまいます!」
エリザベスもミドリアもカニフライがお気に入りだったようで、すさまじい勢いで食べている。
ロココさんは食べながらも色々と商売の事を考えてるようだった。
「カニって食べられるんだな。今まで買い出しに行ってた時にカニを見た事は有るんだがマグロと同様にすぐ腐る足の早い商材と思って避けていたんだ。でも、ここまで美味しいとなると定番商材として考え直した方がいいかもしれないな」
「クーラーボックスが有れば、王都まで腐らずに運搬出来るので十分に売れますよ」
「そうなるな。シェリーの店でこのカニフライを試作で出してみよう」
宴は続き、エリザベスはお酒を飲み過ぎて酔いつぶれてしまった。
「わらわをここまで酔い潰すカニフライ、恐るべし……むにゃむにゃ」
仕方ないので三階のベッドまでセーレと二人で運んだ。
「エリザベスが寝るとなるとベッドの空きが無いから家に帰るかな」
「そうですね。エリザベスさんはこのベッドをお借りして寝て貰う事にしましょう」
すると、エリザベスは酔っぱらいつつセーレの腕をつかむ。
「セーレ、お前は残るんだぞー。私と寝るのだ。抱き枕にしてやる」
「えー! 抱き枕ですか?」
「めちゃくちゃ可愛がってやるから。うふふ」
「それはちょっと……私帰ります」
「だーめ。今日はミドリアはタカヤマと二人だけにさせてやるんだ。今日は見せたいものが有るらしいぞ」
「見せたいもの?」
「楽しみにしておけ」
そういえば今晩はミドリアと一緒に寝る日だったな。
エリザベスは気を使ってくれてるのか。
前はコウモリとかトカゲとか罵り合う仲だったと思うんだが随分と仲良くなったもんだな。
二階のキッチンに戻ると食器を片付け終わったロココさんに一声かける。
「申し訳ないんですが、酔いつぶれたエリザベスを置いていくんでよろしくお願いします」
「お、おう。じゃあまた明日な」
「はい。それじゃ俺とミドリアは寝る場所が無いみたいなので家に帰ります」
ミドリアの転移魔法陣を使って小屋に戻る。
誰も居ない真っ暗な部屋。
今まで大勢が住んでいて騒がしいぐらいだった小屋だが誰も居ないとなると少し寂しい。
ランプを灯した後にミドリアと二人でソファーに座るが二人だけだとなんか会話が続かない。
ミドリアはじっと俺の顔を見つめるだけで満足してるのか一言も喋らない。
なんか空気重い。
そりゃな、ミドリアは俺に抱かれるのを期待してるんだろうからな。
それ以外の事は求めてないんだろう。
まあ約束だから抱きしめてやる位の事はしないとな。
そんな事を考えているとエリザベスから話し始めてきた。
「あのー、我が君」
「なんだ?」
「私、我が君に見せたいものが有るのです」
ミドリアは服を脱ぎ始め、着ていた服をソファーの上に折りたたんで置く。
形のいい胸のふくらみ、引き締まった腹部、そして股間の陰り。
素晴らしい裸体のミドリアが目の前にいた。
「今日は添い寝する約束の日だったな」
「ええ、その前に見て貰いたいものが有るのです」
そう言って振り向いて背中を見せるミドリア。
ほっそりとした背中だ。
その背中からは小さなコウモリの羽が消えて、悪魔のような短い尻尾も消えていた。
どこをどう見ても人間の女性の裸体にしか見えない!
完璧な裸だった。
「あれっ! 尻尾どうしたんだよ! 切り落としたとかじゃないよな?」
「そんな事していません。我が君が尻尾が嫌いと言うので必死に人化の訓練をしてどうにか完璧な人間に化けられる様になったのです」
「そうか! よくやった!」
「これならわたくしを抱いてくれますよね?」
「もちろんだ! そこまでやってくれるとは思ってなかったよ!」
「わたくしを助け出してくれた我が君の為ならどんなつらい事もします」
尻尾さえ生えて無ければミドリアと寝ない理由なんてどこにもない。
こんな愛らしい娘を放置しておく理由が無かった。
その日、俺はミドリアと熱い一夜を過ごし童貞を捨てて男となった。
*
翌朝、ミドリアは俺の腕枕の上ですがすがしい顔をしていた。
俺が起きたのに気が付いてほほ笑む顔が可愛い。
「ついに我が君との初夜を過ごせたのです。これで名実ともに念願のお嫁さんになれます」
「すまないな。俺のせいで今まで精神的な負担を掛けてしまって」
「いいのです。わたくしは我が君の事を信じていますから」
「でもさ、俺って妻のミドリア以外に石川とエリザベスまで嫁にしようとしている最低の男だろ? そんな男で愛想尽かないのか? 軽蔑されても仕方ないぐらいの最低男だろ?」
「何言ってるんですか。力ある男性は何人も嫁を持つのが当たり前じゃないですか。女を何人も侍らせられない魅力の無い男はダメだと思います」
「本当にそれでいいのか?」
「わたくしの事を愛してくれるならそれでいいのです」
俺誤解してた!
ミドリア、凄くいい娘だった!
こんないい娘を今まで蔑ろにして避けてたのかよ!
俺最低だな!
俺は愛らしいミドリアをベッドの上で再び抱き締めた。




