冷蔵庫作り3 *
ロココさんの家に戻るともうすっかり日が暮れていた。
カニを何匹か取り出してガレージの机の上に並べる。
カニの甲羅にはカニのアワアワがビッシリこびり付いていた。
それを無理やり引き剥がしてバケツに集める。
なんていうかカニアワアワは軽石に似てる。
断熱材なのでまな板サイズを想像してたんだけど、これどう見ても小さいよな?
剥がす時にボロボロ割れて石鹸サイズしかない。
小さすぎるんだけど、これ本当に断熱材になるのか?
綺麗に並べて貼り付けても隙間だらけになりそうなんだが?
ちなみにカニ本体は食材になるとの事なので明日シェリーさんに渡すこととし、再びアイテムボックスへと収納する。
「よし、これを材料に使ってクーラーボックスを作るぞ」
「この素材自体は確かに断熱効果が有りそうだけど、これを並べて貼り付けても隙間が多くて断熱効果は低そうですよ」
「まあ、見とけ」
得意げな顔をしたロココさんはカニアワアワの欠片の入ったバケツの中に酒と石灰を入れる。
すると軽石状だったカニアワアワがドロドロと解けてペースト状になった。
「どうだ? このドロドロを箱に塗りたくるんだ。すぐに乾くから急いで塗るんだぞ」
木箱と蓋にコテで塗りたくるとすぐに乾いてクーラーボックスの試作品が完成した。
普通だったら乾燥に数日は要するのにさすがは異世界の素材だけはある。
「よし出来たな。早速、冷却材と飲み物を入れて試してみよう」
ロココさんは水を注いだグラス三個と小さめの氷結晶を入れて蓋を閉じる。
「今入れたのは二〇分ぐらいで解け消えるサイズの氷結晶だ。一時間後に水がキンキンに冷えていれば、ちゃんと冷温保存が出来ているという事でひとまずは大成功だな。今夜は私が食事を作る事にしよう。二人はのんびりと待っていてくれ」
ロココさんは二階のキッチンへと消えていく。
待っていろと言われたが何もする事が無いので手持ち無沙汰でカニのアワアワ取りを続けていると、セーレも手伝ってくれた。
二人で黙々と作業をするのもつまらないので話を振る。
「そろそろ海が懐かしいんじゃないのか? 俺がミドリアに話をつけてやるから帰ってもいいんだぞ」
「海に帰っても特にやる事は無いので帰りたいと思う事は無いですね。皆さんと居ると色々と楽しい事が有りますし。店員さんやったり、今日みたいに狩りやったりして楽しいです。ただ……」
「ミドリアだろ?」
「えー、どうして解るんです?」
「あれだけ虐められてたらな。誰でも解るよ。俺が原因みたいな物だから、今度言い聞かせておくから」
「高山さんが原因なんですか?」
「既に話してたかもしれないけど、ミドリアは俺の最初の嫁なんだ。こことは別の世界で結婚して、いざ初夜を迎えるという時にミドリアの尻尾見て俺萎えちゃって。それからずっとミドリアを抱いてないからあいつ俺に抱いてもらおうと必死になっちゃって、それでも俺が抱かないから怒りのやりどころが無いからセーレに当たってると思うんだ。すまん」
「そうなんですか。高山さんは尻尾が嫌いなんですか?」
「ちょっとしたトラウマがな」
「あれだけかわいいミドリアさんを抱けないという事はよっぽどのトラウマなんですね」
これ以上、この話を続けると嫌なトラウマを思い出しそうなのでこの話はもうやめて別の話を振った。
「そう言えばなんでお前はポーティアの海に来て漁場を荒らしてたんだ?」
「荒らしてたのではないのです。彼を探してたんです」
「彼って海で拾って育ててた子か?」
「はい。海で遭難してた時、漁師の息子だったから漁師になってるんじゃないかなーと思って漁船の船員の顔を調べてたり、港町に居るんじゃないかと思ってじーっと住人を観察してたんです」
「あー、それで漁場や港町の近くに出没してたんだな」
「そうなります」
「で、まだ見つかんないんだよな?」
「はい……」
「俺思うんだけどさ、なんで人間の状態で探さないでリバイアサンの状態で探してたわけ? 人間の状態で探してれば騒ぎにも何にもならなかっただろ?」
「えっ!?」
「どうした?」
「そんな方法が有ったなんて! タカヤマさんは天才ですね!」
「いや、普通解るって」
「私思いつきもしませんでした!」
バカだろ。この娘。まあ天然系な気はする。色々とな。
「俺の知り合いに漁師が居るから、彼氏の事聞いてみるよ」
「ありがとうございます」
そんな感じの話をしていたら、料理が出来たとの事でロココさんが作業場に皿を持って来た。
カニ肉団子のフライだった。
カラっと揚がっていてとってもいい匂いがする。
一つ摘まんで食べてみると外はカリッと上がっていて、中は肉汁たっぷりのジューシーな味わいですごく美味い!
こんなおいしい料理は久しぶりだ。
俺は手が止まらなくなり次々とフライを食べているとロココさんに止められた。
「こらこら、待て待て!」
「あ、すいません」
「主役と一緒に食べなくてどうする?」
「主役?」
「さっきクーラーボックスに入れただろ?」
ロココはクーラーボックスを開ける。
蓋を開けると同時に白い霧のような冷気が箱から溢れた。
そして取り出したコップはキンキンに冷えていて、氷結晶もまだ残ってた。
「冷た!」
コップを持ったセーレが驚く。
「こんな冷たい水、北洋にでも行かなければ有りませんね」
「実験は大成功だな。冷えてるだろうとは思ったけど、水がキンキンに冷えた上に氷結晶まで残ってるとは予想外の出来だな」
「ええ、これだけ冷たければ大成功です」
冷水は氷になる寸前ぐらいまで冷やされていた。
早速冷水を飲んでみると予想してたカニアワから移った臭いの魚臭さやカニ臭さは一切なくとても美味しい。
試作品は大成功だ。
「おいしいです」
「おいしいな」
セーレもロココさんも成功だと言ってる。
「耐久度の実験は後々試験運用の時にするとして、次は冷却期間の実験だな。今のコップの実験で氷結晶が残っているからたぶん問題なく長期間の冷却が出来ると思うんだが、それの実証実験だ。カニの肉を生の状態でこのクーラーボックスに入れて明日の朝食べてみて問題なければ成功という事になる」
「じゃあ、今夜は泊まりで実験ですね」
「あー、それがなー。この家に泊まってもらうのは一向に構わないんだが、ベッドがその……一つしかなくてな。それでもいいなら泊まっていいぞ」
「じゃあ、俺、この倉庫で寝ます」
「あ、いやベッドは有るんだよ」
「今一つって言いませんでした?」
「キングサイズのベッドなんだ。三人一緒に寝れるぞ」
「という事は俺たち三人で寝るってこと?」
「そうなる」
「でもいいんです? 俺、男なんだけど?」
「師匠と弟子なんだから問題ないだろ。それとも師匠と寝るのは嫌か?」
「そ、そんな事ないです!」
という事で、川の字になって三人で寝る事になった。




