女教師佐川の念願の仲間2 *
佐川 女。踊り子。ランクC。教師
町方 男。剣士。 ランクB
津島 女。魔女。 ランクB
藤浪 女。聖女。 ランクB
一人ぼっちを続ける佐川だったがついに転機がやって来た。
いつもの様にルームメートがレベル上げに出掛け誰も居なくなった部屋でゴロ寝をしていると神官やって来た。
「今日からCグループの補充要因として参加してくれ」
「ほんとですか!」
佐川の顔がパッと明るくなった。
補充要因としてレベル上げグループに参加できる事になった佐川。
補充と言う言葉に佐川のプライドが一瞬引っ掛かったが暇を持て余した佐川には願っても無い言葉だ。
勇者召喚に生徒と共に巻き込まれた教師佐川は心の中で狂喜乱舞していた。
空きの出来たグループメンバーの補充としてレベル上げに参加することが出来たのだ。
「ついに勇者として狩りが出来るのね!」
この嬉しさは教員試験に受かった時と同じ、いやそれ以上に嬉しかった。
神官に連れられて大聖堂へ来るとそこには三人の生徒が待っていた。
男子生徒一人に、女子生徒二人。
Bランクグループの生徒だ。
確か名前は……男子生徒が町方君、女子生徒が津島さんと……あと誰だったかな?
必死に名前を思い出そうとするけど思い出せず。
困り果てていると神官による自己紹介が始まった。
「皆さんご存知だとは思いますが、こちらがサガワ先生で職は踊り子となります。強化魔導のフチダカ君の代わりとして参加することになりました」
すると唯一の男子生徒の町方が頭を下げる。
その生徒は短髪が少し伸びた感じの髪型をしている。
たしか陸上部だったはずだ。
元はスポーツ刈りだったと思う。
引き締まった体をして好青年な感じの見た目。
性格もそんなに悪く無かったはずだ。
「俺はこのパーティーのリーダーをやっている町方で剣士をやっています。先生は戦闘訓練への参加は初めてとの事なので解らない事が有ったら何でも僕に聞いてください。よろしく!」
次はちょっと化粧っ気が濃い感じの女生徒の津島さんだ。
染めた金髪の髪が伸びて頭のてっぺんだけが黒で他は黄色のプリンみたいな頭をしている。
「私は魔女をやっている津島です。正直戦闘とかいまだに解ってないので教えられることは何もないけど、よろしくね」
もう一人の女生徒は俯いて何も話さなかった。姫カットの生徒だ。
影が薄いのか授業で顔を見た記憶がないし名前も思い出せなかった。
「…………」
「なんか話しなよ?」
痺れを切らした津島が声を掛けながら背中を押すとやっと話し始めた。
「聖女の藤浪です」
藤浪はそれだけを言うと黙ってしまった。
代わりに佐川が話し始める。
「皆さん知っているかと思いますが、英語教師の佐川です。今までずっと待機していたんですが、今回皆さんと一緒のパーティで戦闘訓練に参加できる事を感謝しています。あのまま部屋の中でずっと引きこもりみたいな生活をしていないといけないかと思ったので物凄く嬉しいです! 楽しみです! よろしくお願いします」
その時、ずっと黙ってた藤浪が佐川の前に身を乗り出して叫んだ!
「何が嬉しいのよ! あんたなんか望んでないんだから!」
すごい剣幕で佐川に突っかかって来た。
教師時代になにか恨みみたいな物を買うが事が有ったのかもしれないが、佐川は何の心当たりも無いので返答に困った。
それを見かねた町方が藤浪を止める。
「おい、やめろよ! 先生は何にも悪く無いんだから」
「そうよ! 先生は悪く無いから」
「でも!」
無理やり町方に頭を押さえられて頭を下げさせられる藤浪。
最悪な雰囲気で佐川のレベル上げパーティが始まった。
騎士さんを入れて5人のパーティーだ。
さっきの事で気を使ってか町方君と津島さんは私に色々とフォローを入れてくれる。
戦い方が解らないと丁寧に教えてくれて休憩時間には声を掛けてくれる。
なんだか失われた学生時代の青春を追体験してるみたいな感じに襲われる。
こんな学生時代が有ったら私はもっと素直になれたのかな?
意識して藤浪さんに声を掛けるが彼女は聞こえてるはずなのにずっと口を聞いてくれなかった。
町方君に相談すると事情は知ってるようだけどどうもはっきり言ってくれない。
「反抗期みたいなものだから、藤波の事はそっとしておいてやって下さい」
そう言われたので佐川は自分から藤浪に関わる事をやめた。
佐川のジョブは踊り子。
レベル依存の強い職だ。
主にすることはパーティーメンバーの強化と敵の弱体。
敵の弱体は自分と敵のレベル差が大きく関わるのでレベルが1に近い佐川の弱体は入る事も無くほとんど役に立たなかった。
訓練を続けてレベルの上がっていた他の生徒達とのレベル差は40と絶望的に開いている。
殆ど役に立たない、立てない。
でもレベル上げに参加できることが嬉しかった。
最初は全く役に立たなかった。
町方と津島に励まされながら戦闘を続ける。
レベルが上がってくると徐々に弱体が入るようになった。
立ち回りも自分でもハッキリと解る位動けるようになっている。
弱体を入れ、仲間を強化して敵を切り刻む!
理想の動きが出来るようになる。
すると今までとは段違いに敵の殲滅速度が上がった。
レベルも他のメンバーより5レベル低いところまで上がって来た。
他のメンバーはレベル四七、佐川はレベル四二になる。
開始直後の絶望的なレベル差はもうそこには無い。
佐川はレベル上げが楽しくてたまらない。
今までの人生ではいなかった仲間、いや友達と言うものがここには居る。
語る事の出来る仲間がいる。
今の自分は一人ではない。とっても幸福な時間だった。
「ねーねー、私の動きどう? だいぶいい感じになって来たでしょ?」
「ああ、悪くないとは思うよ」
「前に居た人よりずっと使えるでしょ? ふふふ」
「そ、そうだな」
上機嫌で自分の居る事の優位性を語りつつ、メンバーたちの長所を褒めたたえる。
ムードメーカー。
今の佐川はそんな感じでパーティーを盛り上げ引っ張っていた……つもりであった。
レベルが上がると今まで相手にもされなかった敵からダメージを受ける事が増えた。
でも敵からダメージを受けても佐川には回復魔法がなかなか飛んでこない事に気が付いた。
今の戦闘では騎士さんからの回復が飛んでこなかったら危うく死んでいたところだ。
回復役の聖女の藤浪を問い詰める。
「なんで私を回復してくれないのよ!」
「あんたがウザいのよ!」
「私はパーティの中で一番役に立ってるのに、なに言ってるの?」
「あんた、学校じゃいつも一人で浮いてたのに、なに今更私達にすり寄ってくるわけ? マジキモいんだけど!」
「それはメンバーだから……」
「あんたなんてメンバーじゃないよ!」
それを聞いた佐川は逆上!
「メンバーじゃないですって!」
聖女の藤浪の胸倉を捕まえて強烈なビンタをする。
藤浪の口の端が切れて血が滲んだ。
「わたしがこんなに頑張ってるのに、文句を言ってるのはその口? それが歳上に言う態度? それが先生に言う態度? みんなもこの女に言ってやりなさいよ! 私が居るからこのパーティーがうまく回ってるんだって!」
掴んだ胸倉を振り回す佐川。
藤浪の顔は恐怖に怯えていた。
「佐川やめろ!」
「先生やめて!」
佐川はその手を町方に振りほどかれ、地面に叩きつけられた。
「なんで? この女が悪いのに、なんで私が責められるの?」
「今まで黙ってたけど、俺達仲間が罠に引っ掛かって死に戻りして居なくなって悲しんでるとこに、あんたは自分の居場所が出来たと喜んでパーティーに入って来たんだろ? 最初は先生に罪はないと思ってたけど、最近の『渕高より私が入ってよかったでしょ?』と、仲間の死を冒涜するような言葉を何度も何度も聞かされてたら我慢できなくなったんだ!」
「そんな……」
「藤浪さんはね、死んで抜けた渕高君と結婚を誓い合った仲だったの! それを自分の方がいいと、何度も言って! あんまりにも繰り返すから、わたしもうんざりで聞いてられなかったわ!」
「悪いんだけど先生の言葉を聞いていると居なくなった仲間の事を思い出して辛くなるから、このパーティーから出て行って欲しいんだ」
「私は望まれてないの? こんなに頑張ってる私が?」
「そうだよ! 仲間に手をあげた奴をこのパーティーに置いておく訳にはいかない! 二度と顔を見せるな!」
佐川はその日、大切な仲間だと思ってた者達に絶縁を言い渡されパーティを追い出された。




