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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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ドワーフ商人の弟子4

 魚を買い付けると宿に戻って来た俺達。


 宿では相部屋を取っている。


 ドワーフと人間と言えど男女なので同室で泊まるのもどうかと思ったが、同じ会社の上司と部下、師匠と弟子が同室しないでどうする!とロココさんに言い切られて相部屋することになった。


 女のロココさんが着替えの時に俺に裸を見られてもいいって言うならそれでいいんだろ。


「ところでタカヤマ。あの黒鮫を3匹も買ったんだがどうするんだ?」


「もちろん食べるんですよ」


「黒鮫を食べるのか?」


「俺らの世界じゃあの魚はマグロと呼ばれていて高級魚なんですよ」


「黒鮫が高級魚って信じられないな」


「おいしいですよ。食べた事ないんですよね?」


「いや、私も食べないでマズいと言ってるんじゃない。一度興味本位で食べてみたことが有るが、血の味がして私には食べれなかったな」


「ああ、血の混じる部位とそうじゃない部位が有るんですよ」


「そうなのか?」


「ちょっと食べてみます? 美味しいと思いますよ」


「お、おう。お前がそこまで言うなら食べてみてもいいぞ」


 俺はマグロをアイテムボックスから取り出すと、一番おいしいだろう大トロの部位を切り出す。


 そして木の棒から作った木皿の上に乗せる。


 脂がのってて見るからにおいしそう。


「さあ、どうぞ」


 ロココさんは皿を受け取ると、アイテムバッグの中からフォークを取り出して食べ始める。


 でも、表情を見るとあまりおいしそうな感じで食べてなかった。


「どうです?」


「う、うん。確かに血の味はしないんだが……脂がしつこくて味がさっぱりわからないな。あくまでも商人としての感想だが、これは売り物にならないと思う」


「マジですか?」


 俺はロココさんの持つ皿からマグロの切り身を摘まむとそれを口に運ぶ。


 口の中でとろけるマグロ。


 うん。


 美味しい!


 マグロサイコー!


 でも、なんか違うな。


 いつも食べてる刺身となんか違う。


 なんていうかなー、シツコイ。


 口の中に魚臭さが残って脂が口の中に残ってベタベタする。


 そういう視点で見ると確かにおいしくないわ。


 なんだろこれ?


「あんまりおいしくないだろ?」


「ええ。そう言われると確かに。俺の住んでた世界のマグロと違うのかな?」


『いえ、同じものですよ』


『なんか明らかに味が違うんだが?』


『それならば醤油とわさびじゃないでしょうか?』


『それか!』


『わさびと醤油を出してくれ』


『すいません。ショップレベルが足りなくて出せません』


 俺はロココさんに頭を下げる。


「醤油とわさびが無いからおいしくないみたいです。ごめんなさい」


「醤油とわさびか。それなら持ってるぞ」


「持ってるんですか!?」


「東方に行った時にサンプルとして手に入れたんだが、こっちの国の食べ物にはどれも合わずに使い道に困ってたんだ」


 ロココさんはアイテムボックスの中からわさびと醤油の入った小さな容器を取り出す。


 味を確かめてみると醤油は味が薄く、ワサビは西洋ワサビの様に癖が有った。


 日本の物と違って粗削りで風味が足りなくて少し癖が有るが許容範囲の味だった。


「わさびは、向こうの国じゃ焼いた肉に乗せて料理の調味料として使ってるみたいなんだけど、辛いだけで私の舌にはあんまり合わないんだよな。醤油もしょっぱいだけで今一つ私には合わなかった」


 そんなひどい言われ様のわさびを刺身の上に少しだけ乗せて、醤油を少しだけ垂らして再びロココさんに勧める。


 ロココさんは再び刺身を口に運ぶと表情が変わった。


「こ、これはウマい! なんだろう? ワサビのおかげでさっきまで出ていた魚臭さと脂のしつこさが消え失せて、刺激が有りながら清涼感の有る味に! 醤油も魚の味を引き立てているぞ! これはウマい!」


 俺も食べてみる。


 西洋ワサビにも似た結構癖のある醤油とワサビの味だった。


 日本の物とはかなり風味が違う。


 出来ればアイテムショップからちゃんとしたワサビを手に入れたいものだ。


『醤油はアイテムショップレベル10、わさびはアイテムショップレベル11で開放になります』


『今のショップレベルは?』


『5です』


『5か。あれ? この前よりだいぶショップレベルが上がってる気がするんだが?』


『今日マグロを買い入れしましたからね。それで上がりました』


『なるほど』


 刺身を食べ終えたロココさんが目を輝かしていた。


「これは売れる! 間違いなく売れるぞ! タカヤマ! お前物凄い商材を見つけたな!」


「そ、そうですか?」


「これなら間違いなく売れる。ただ、このマグロにはいろいろと問題もあるな」


「問題ですか?」


「マグロは足が早い。アイテムボックスから出すとすぐに腐ってしまう。そのせいで流通にはのらないのだ。今は獲れたてを食べているからおいしく食べられているが、店に並べて売るのは難しいと思うぞ」


 そうだった。


 マグロは冷凍保存技術が発達するまではあまり食べられない魚だった。


 日本でもそうなのだから、保存技術が全く発達してないこの異世界じゃ扱える代物じゃない。


 これはやっちまったかな?


 俺が落ち込んでいると、ロココさんはニコニコしている。


「でもな、私には解決する方法がある。全てを私に任せてくれないか?」


 俺はロココさんに全てを任せる事にした。

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