黒衣の剣士2
もうダメだ!
わたし死ぬ!
そう諦めた時、田中君が動いた!
田中君はフロアを蹴ると物凄いスピードで落とし穴に飛び込む!
そして奈落の底へ落ちるわたしを抱き抱えた。
「お前を守るって言っただろ」
「田中君!」
嬉しかった。
彼がわたしのナイトさん。
わたしは田中君にギュッと抱きつく。
すると田中君はわたしの腕を解き解いた。
「悪いが抱きつくのはもう少し待ってくれ。今は抱きつかれている暇は無い」
田中君は片手でわたしを抱え、片手で剣を振るう。
いくつもの光刃が落とし穴の底の着地地点の棘を薙ぎ払う。
これで着地しても安全だ。田中君はわたしをギュッと抱きしめて耳元で囁いた。
「今度は僕にしっかり抱きついてくれ」
「うん!」
田中君は剣を落とし穴の壁に突き刺す。
剣は火花と物凄い砂煙を上げて、わたし達の落下速度を徐々に落とし始める。
頭上から剣によって剥がされた岩壁がゴロゴロと音を立てて私達目掛けて降り注ぐ。
田中君はわたしを胸で覆う様に庇ってくれていた。
田中君はトン!と壁を蹴ると地面に着地。
わたしは落とし穴の底で田中君に支えられていた。
「約束通り、吉田さんを守ってやったぜ」
「ありがとう!」
わたしは田中君に抱きつき、キスをした。
でも、田中君の息が荒い。
はあー、はあーと息を切りながら呼吸をしている。
「どうしたの?」
「ちょっとミスった」
それと同時に崩れ落ちる田中君。
背中には大きな棘が突き刺さり、胸へと貫通していた。
田中君は、ケハッ!と音を立てて口から血の塊を吐くと動かなくなる。
「なんで! どうして! 起きてよ! 起きて!」
田中君はそれっきり動かなくなった。
そして私は、頭上から落ちて来た大きな岩壁に押し潰されて死んだ。
*
気が付くとわたしは地面に横に寝かされていた。
誰かが助けてくれたみたいだ。
その誰かを私は薄れつつある意識の中に見た。
真っ黒な瘴気を纏う黒衣の剣士。
その人がわたしを助けてくれた。
黒衣の剣士が立ち去ると同時にわたしの意識は完全に遠退いた。
*
気が付くと田中君がわたしを揺り起こしていた。
「起きて! 吉田さん!」
目の前には田中君が居た。
目に大粒の涙をためている。
わたしが目を開けると田中君は安どの表情をした。
「よかった! 生きてた!」
「あれ? ここは?」
「あの罠部屋の前の通路みたい」
「わたし達死んだんじゃないの?」
「ああ、僕も死んだと思ったけど、ここに寝かされてた。それに騎士さんも」
死んだはずの騎士さん達も通路に横にされていた。
皆、息が有る様だ。
どうなってるんだろう?
落とし穴の惨事がまるで無かったかの様子。
田中君は落とし穴フロアの床の深緑の部分を強く押す。
ずずーん!と音を立ててフロアの床が抜けた。
「夢じゃないな」
「そうだね」
でも、田中君の鎧には棘が突き刺さった後は無くて、傷一つついてなかった。
夢なのか現実なのか解らない状態。
残っているのは記憶だけ。
そう、黒衣の剣士の記憶。
「わたし、黒衣の剣士に助けて貰った」
「ぼくも、そんな気がする」
騎士さん達も同じような事を言っていた。
これ以上進むのは危険だという事で、今日のレベル上げは取りやめ。
わたし達は大聖堂に戻る事となった。




