三つの願い5 *
俺は改まって神聖国セレスティアの第一王女アウマに聞く。
「神官長はなぜ王族皆殺しをしようと思ったのでしょうか?」
「それならば大体の予想はついています。タカヤマ様、この国がなぜ神聖国と呼ばれているかご存知でしょうか?」
「いえ、全く解りません」
「実はですね、この国は一度崩壊したのです」
「崩壊ですか?」
「ええ、なぜか敵が攻めて来た訳でもないのに一夜にして王族が皆殺しに遭ってしまいました。そして混乱する国政を教会が引き継いだのです。その時に元の国名のセレスティアの前に神聖国が付いたのです」
するとシステムちゃんが俺に怪しい目を向けながら聞いてくる。
『なんだか聞いた事のある話なんですが?』
『システムちゃん、俺も激しいデジャヴ感に襲われてるんだ。それもかなり前の話じゃなくほんの二分か三分前の話だ』
『これって勇者様がブチ切れて王族を皆殺しにした時の話ですよね?』
『すまん、たぶんそうだ』
部屋にいる全員の鋭い視線が俺に集中する。
もうやめて!
そんなに見つめないで!
俺がやりました!
俺がやりましたよ!
犯人はこの俺です。
すいません、もうこれ以上、過去の黒歴史をほじくり返さないでください。
俺のライフはもうゼロです。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか王女は話を進める。
「そのせいで元々王族だったナザレの祖先は国を追われたそうなんです。そして虎視眈々と王族の復活の為に機会を伺っていたナザレですが、先代の神官長が引退して新たに神官に就いた事により計画の実行にでました。王族を滅ぼす為に勇者を召喚するという計画です」
「それって、タカ……」
出席者の文官の一人が途中まで言って慌てて口を押えた。
何とも言えない気まずい雰囲気が辺りを包む。
誰もハッキリとは口にしなかったが、俺が王族を滅ぼした事が原因である事は明らかだった。
今回の召喚の原因を作ったのは俺なのか!
因果応報って奴だ。
悪かったな!
全ては俺のせいだよ。
諸悪の根源は俺でした。
これでいいんだろ?
あまりの衝撃の事実に俺の目の前が真っ暗になる。
俺は狼狽えながら、王女を見つめる。
「な、なるほど。今回の事件は旧王族の復活の為なのですね?」
「そう思います」
「これからが本題になるのですが、王家としては第二王女アウラに関しては神官長ナザレに利用されたとはいえ、国家の転覆に手を貸したという事で死罪が相当との結論に至りました」
「死罪だと? 騙されて利用されただけなのに、それは重すぎる処分なのではないか?」
「騙されたとはいえ、その様な者が王族の中に居たのでは他国に示しが付きません。幸い今回の事件については国の中の極一部にしか知る者はおりません。そこで、アウラ王女は処刑してその存在自体を消すか、どこかの国の妃として身受けをして頂きたいと考えています」
『これってもしかしたら?』
『二択に見えて選択肢の余地の無い一択ですね。勇者様にアウラ王女を押し付ける気満々なのでは無いでしょうか? 王族と親戚関係になる事で神聖国セレスティアに謀反を起こさせないと言う、従順の首輪を付けようとしていますね』
『処刑とするよりも、外交の駒として再利用するという事か』
「アウラの命を助けると思って身受けの件を真剣に考えて頂けないでしょうか? もちろんアウラを第一夫人とする必要は有りませんし、神聖国セレスティアの属国として国も用意いたします」
『やっぱりこういう事なんだな』
『またお嫁さん増えて良かったじゃないですか』
『いやいや、もう十分過ぎるぐらい嫁は要るからもう要らないし。面倒な事に巻き込まれるのも嫌だしな。ここは上手く断るしか無いな』
『でも、断ったらアウラ王女が殺されちゃいますよ?』
『そこは何とか上手くするさ』
俺はアウラ王女に断りの返事を入れる。
「大変嬉しい申し出なのですが、俺は異世界人なのでいつ元の世界に戻るか解りませんので、アウラ王女を妻として娶る事は出来ません」
「それならば大丈夫だと思いますよ。先程もお約束してくれた様に、タカヤマ様が召喚の願いを叶えるつもりは無いと言ってくださいましたので元の世界に戻る事は無いと思います。それにこんな可愛い、魔王のお嫁さんを二人も残して元の世界に戻る事は無いですよね?」
「はい。間違いなく無いと思います!」
「タカヤマ……」
「我が君……」
その言葉を聞いて目をウルウルとさせる魔王ツインズであった。
「それなら答えはもう出た様なものですね」
王女はニコリとほほ笑んだ後、続ける。
「そしてもう一つ大きな懸念材料が有ります。突如この世界に現れたとても大きな力を持つ集団です」
「召喚勇者のクラスメイトの事ですね。確かにこの力は厄介ですね」
「この勇者たちが元の世界に戻る為にはセレスティア王国の滅亡が必須。どうしても元の世界に帰りたいと思った者が私達王族を滅ぼそうと考えるかもしれません。そこでタカヤマ様にはこの国から離れた新たな国で勇者たちの監督をして頂きたいのです。よろしいでしょうか?」
『なんか面倒な話になってきましたね』
『ああ、謀反を起こすクラスメイトは俺に始末させるつもりなんだろうな』
『でも、こう言われてしまうとクラスメイトを隔離する国の設立は避けられないですね』
『またも厄介事に巻き込まれてしまったな』
『ですねぇ』
するとミドリアが笑顔で答える。
「その様な心配は要りませんわ。今夜、異世界に戻りたいクラスメイトはわたくしが全て送り帰します」
「そ、そんな事が出来るのですか?」
「ええ、これでも魔王ですから」
ミドリアは満面の笑みを浮かべ、とんでもない事を平然と言ってのけた。
遂に日本への帰還です!




