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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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冒険者ギルド3

 主な登場人物

 高山亜流人(タカヤマ アルト) 男 主人公 クラス唯一のランクE

 石川 女 口うるさい ランクD

 長野さん 女 特に特徴がない、いい人 ランクD

 香川ちゃん 女 ロリッ子 ランクD


 リリィ 女 盗賊 冒険者ギルド長の娘、俺達の訓練の教官

「ぅんくっ! ぅんくっ! ぅんくっ! ぷはーっ! うまー!」


「炭酸サイコーですね」


「甘くてシュワシュワしててぇおいしいですぅ」


「こっちの世界に来てから大して日数経ってないのに10年振りぐらいにジュース飲んだ気がするね! もう死んでもいいわー」


 アワアワドリンクを飲んで満足気な石川と長野さんと香川ちゃんのDランク三人娘。


 アワアワを一気に飲み干した石川は変な薬物でも盛られたかのようにアへ顔して机に突っ伏してる。


「ジュース美味しかったー」


 俺達は冒険者ギルドの酒場で朝食をとっていた。


 リリィさんとの約束で朝食と夕食を出してもらうことになったからだ。ベーコンエッグと柔らかいパンとアワアワの軽い朝食。


 ベーコンエッグはこっちの世界だと高級料理迄はいかないが、俺達の世界のステーキや廻らない寿司相当の割といい方の料理らしい。


 分厚いベーコンに新鮮な卵。


 それに軽く胡椒をかけフライパンで両面をこんがり焼いた料理。


 今まで食べてた奴隷の食事みたいな質素な食べ物に比べると段違いに美味い。


 女の子達は皆喜び、「高山よくやった!」だの「高山さんに感謝します!」だの「高山さん大好きですぅ! キスしてくださいぃ!」といって俺に感謝してくれた。


『勇者様、香川ちゃんにキスしてくれなんて言われましたっけ?』


『システムちゃん、勝手に俺のモノローグに割り込むのやめてくれないか?』


 ちなみにシステムちゃんとは俺が以前召喚された時に貰った超高性能AI。


 正確に言うとAIとは違うんだがそんなものと思ってもらえると理解しやすいと思う。


 収納管理や、スキル管理やショップ管理、お財布機能も付いてる優秀な子だ。


 いま女の子たちが飲んでるのは『アワアワ』だ。


 こっちの世界のコーラみたいな物。


 庶民によく飲まれているこっちの世界の炭酸系清涼飲料水だ。


 味はまあまあいける。


 でも俺は飲まない。


 俺はアワアワの代わりにコーヒーに似たクロクロを飲んでいる。


 石川が俺にもアワアワを飲めと勧めてくる。


「そんな黒いお茶みたいなの飲まないで、あたしと一緒にアワアワ飲みなさいよ! おいしいわよ!」


「いや、俺、今、炭酸断ちしてるから」


「そうなの? おいしいのにねー」


「美味しいのに飲まないのはもったいないですぅ」


「冷たくてコーラみたいで美味しいですよ」


 なぜ飲まないかと言えばこれの製造方法が問題だからだ。


 素材自体は至って普通。


 少し苦みのある木の実の搾り汁に砂糖の様な物で甘みとハーブの様な物で清涼感を付けている。


 そこまでは問題ない。


 ただな、炭酸飲料にする為に大牛のゲップを氷魔法で凍らせて添加してるとは知らなかった。


 それを知って以来、俺は気持ち悪くてアワアワを飲めなくなった。


 ゲップだぜ。


 ゲップ!


 牛のゲップなんて飲めるかよ!


 牛のゲップのにおいを嗅いだことあるか?


 ゲロのにおいとそっくりなんだぜ。


 その臭いをハーブで誤魔化してるんだぜ。


 あんなもの喜んで飲んでたと思うと死にたくなるわ。


 彼女たちもいずれこの事実を知ってアワアワを飲めなくなることだろう。


 それまで存分に堪能してくれたまえ。


 俺達が朝食を取り終えるあたりで、先に食事を済ませて今日の訓練の準備を始めてたリリィさんが戻って来た。


 手には依頼書を持っている。


「今日は初訓練ついでに簡単な依頼もこなすよ」


「どんな依頼? 薬草取りはいやよ」


「僕がついてるのにそんな事はやらせないよ。君たちはFランク冒険者だけど、Dランクの実力が有ると言っていたので、Dランク依頼を持ってきたよ。本当はFランク冒険者はDランク依頼なんて出来ないんだけど、僕が指導についてるので今回は特別なんだからね」


「ふふふ、ついに私の実力に気がついたようだね。リリィ君。なんならCランク依頼を持ってきてもいいのだよ、ふふふ」


 リリィさんを前にして不敵な笑みを見せる石川。


 それやめとけ。


 たぶん石川だったら敵のワンパンで余裕で死ぬから。


 そんな自信過剰な石川にリリィさんが諭す。


「そこまで自信が有るなら、いきなりCランクの依頼でもいいけどね。これから訓練始める前に少し君らの実力を見極めておこうと思ったんだ。君たちには簡単だとは思うけど、Dランクのゴブリン討伐の依頼を持って来たよ」


「ふーん、私を試すと言うのね。いいわ! Dランク勇者の実力にひれ伏すがいいわ!」


 何を根拠にしてるのか、無駄に自信ありげな石川の発言が怖い。


「うん、期待してるよ。あと、タカヤマは怪我してるからここで待っててね」


「いや、俺も行きますよ」


「怪我の方はだいじょぶなの? 傷口開かない?」


「だいじょぶだいじょぶ。結構治ってるから見学ぐらいなら出来るから」


「そっか、じゃあついて来て」


 リリィさんに連れてこられたのは街から歩いて30分程の草原の中に出来たゴブリンの巣。


 まだ出来てすぐの新しい巣との事。


 町のすぐ近くにこんな物が有ると、すぐに大繁殖して街を襲い始めて騒ぎになる。


 本来は討伐依頼を出して即駆除の対象になるんだけど、今回は特別に俺達の訓練用に残してもらったそうだ。


 まあ、巣が大きくならないように繁殖度を管理すると言う条件を付けてだがな。


「じゃあ、一匹連れてくるからイシカワさん倒して!」


 リリィさんはゴブリンを連れてくるといって、獣の様に背を低くして雑草茂みの中に潜り込む。


 茂みに隠れながら巣に向かっていった。


「ねーねー、高山。ゴブリンてなに?」


「俺も詳しくは知らないんだけど、ネトゲで言うスライムやウサギの次に弱いモンスターらしいよ」


「へー。私にも倒せる?」


「足が遅いみたいだから距離を取りつつ攻撃すれば倒せるんじゃないかな?」


 ちょっとだけ俺のゴブリン知識披露。


 この程度の知識の漏洩なら真の勇者と疑われる事もあるまい。


 そんな事を話してるとリリィさんがゴブリンを連れて来た。


「イシカワさん、ゴブリン連れて来たよ!」


 リリィさん、すごくニコニコしてる。


 おまけに連れて来たゴブリン、ゴブリンなのにすげーデカい。


 巨人じゃねーの?


 背丈2メートル半ぐらい有るんだが?


 どう見ても巨人サイクロプスの亜種にしか見えない。


 しかもすげーデカい棍棒持ってるし!


 こいつは本当にゴブリンなのか?


 とりあえず奴を鑑定してみた。


>名前:【ゴブリン・レア】ゴブ・ザ・バッド

>性別:男

>ジョブ:戦士

>LV:10

>HP:160/160(E)

>MP:80/80(F)

>STR:80(E)

>VIT:80(E)

>INT:40(F)

>LUK:80(E)

>ユニークスキル:

>なし

>スキル:

>【通常攻撃範囲化:小】LV5


 こいつはゴブリンだけど、変な名前付いてるからレアモンスじゃねーか!


 何考えてるんだよ!


 なんで初心者相手にこんなの連れて来てるんだよ!


 ちゃんと鑑定してから連れて来いよ。


 敵の選び方が雑過ぎるだろ!


「てへへ。レアモンスター沸いてたから連れて来たよ!」


 満面の笑みでレアゴブリンを連れてくるリリィさん。


 バカだ!


 こいつはバカだ!


 間違いない。


「おい、何考えてるんだよ! 見るからに強そうじゃないか! 俺達にこんな物倒せる訳ないだろ!」


「でも、イシカワさんすごく自信有り気だったから楽々倒せるかなーと。レアモンスター沸いてたから連れてきちゃった。ねぇイシカワさん倒せるよね? それとも無理かな?」


「た、た、倒せるわよ!」


「ふーん、じゃあ戦ってみて」


 リリィさんは悪そうな目つきをするとレアゴブリンの攻撃目標を石川に擦り付ける。


 盗賊のスキル『隠匿』を石川のすぐ近くで使って自分の気配を消し、石川をレアゴブリンの攻撃対象にした。


 レアゴブリンはリリィさんの姿を見失ったことで辺りをキョロキョロと見回したが、足元に居る石川を見つけると新たなターゲットとしてすぐに攻撃を再開をする。


 石川は狩りの対象とされたレアゴブリンから必死の形相で逃げる。


 ゴブリンの足はそれほど速くないので逃げ回っていれば追いつかれる事はなさそうだが、転んだり気を抜いたりしたら振り回す棍棒に当たりそうだ。


 もしかしてリリィさんってバカじゃなくて、石川が倒せないのを解っててレアモンスター連れて来た?


 案外腹黒な奴かも?


「じゃあ、がんばってね」


 リリィさんは少し離れた茂みにまで走り去っていった。


 そこから戦闘の様子を覗いている。


 困ったのは石川。


 こんな物、倒せるわけもない。


 レアゴブリンが棍棒を叩きつけると2メートルぐらいの範囲の地面がクレーター状に穴が空いた。


 あんなのを石川が喰らったら一撃でミンチだ。


 石川は必死に逃げ惑う。


「こ、これを私が一人で倒さないといけないの? た、倒せるわけないじゃない!」


「一人じゃ無理なら、みんなで協力して倒してもいいよ」


 遠くからリリィさんの声が掛かった。


 20メートルぐらい離れたとこから高みの見物らしい。


 石川は必死に逃げ回っていた。


「ぐじょー! たすけー! ぐぎょー!」


 何語か解らない奇声上げてやがるぜ。


 なに言ってるのか解らないが、涙と鼻水を流しながら必死に逃げ惑ってるのだけは解る。


 ひでー顔だな、おい。


 チンパンジーの方がまともに見える変顔だ。


 こんな顔見られたらお嫁に行けなくなるぜ。


 可哀想なんで助け舟出してやるか。


 でも怪我してる設定なのに俺が戦って一撃で倒したら実力がバレるだろうな。


 と言っても石川一人に倒せるとも思えないし、このまま長い時間石川が逃げ続けられそうもないし、どうしよ?


 しかたない!


 見捨てる訳にもいかないし、やるしかないか!


『システム!』


『なんでしょう? 勇者様』


『悪いんだけど、至急全スキルスロットの設定頼む。ユニーク無効、1番から5番まで【攻撃力低下:超】』


『それだと常人並みの攻撃力になってしまいますがよろしいですか?』


『構わない。やってくれ』


『はい。出来ました』


『いきなり呼び出してすまなかったな。ありがとう』


『いえいえ、どういたしまして』


 スキルをセットして攻撃力を思いっきり落としてみた。


 これなら短剣で突き刺したとしても一撃でゴブリンが破裂したり蒸発することは無いだろう。


 俺は石川の助けに入った。


「どうする? 少し手伝おうか?」


「じゃあ、高山、これを一人で倒しなさい!」


 いきなり無茶言う女だ。俺がサポートして倒すのを手伝ってやろうかと思ってたのに全部丸投げかよ!


「ちょっ! 俺、怪我人なのに一人で倒さないといけないの? まだ傷が痛んでまともには戦えないよ」


「じゃあ、あんたが注意引きなさい! あんたが敵の注意を引いたら、後ろから応援してあげるから!」


「おい! こら! 待て! 応援かよ! 応援じゃなく攻撃しろよ!」


 リリィさんが見てるから俺が攻撃して倒すわけにはいかないんだよ。


 レアゴブリンをLV1の俺がサクッと倒したら俺が真の勇者とバレてしまう。


 でもこのままだと石川を見殺しにする事になるな。


 仕方ない、レアゴブリンの注意をこちらに向けるか。


 ゴブリンは脇腹が弱点。


 体表を厚い皮が覆ってるので短剣の攻撃は通りにくいが脇腹の皮は薄い。


 俺は奴の脇腹に錆びた短剣をぐさりと突き刺してやった。


 脇腹を押さえて転げてぶっ倒れるレアゴブリン。


 物凄い目で俺を睨んできた。


 石川の事を忘れて今度は俺に狙い始める。


「ぐるー!」


 片手で脇腹を押さえながら強烈なパンチを俺に放つ。


 俺も足を引きずりながら逃げ始める。


 ちなみに足を引きずってるのは演技な。


「早く! 倒してくれ!」


「解ったわ。後ろから石投げて攻撃して助けてあげる」


「おい、バカ! 魔法使えるんだから魔法使えよ!」


「魔法の使い方なんてわからないし! だから石」


「魔法なんて簡単だろ! 僧侶なんだからホーリーアローが使えるだろ! ホーリーアローと唱えてみろ」


「ホーリーアロー? わっ! なんか飛んでいった!」


 石川の手から放たれる光の矢。煙を出して地面に小さな穴を作り出した。


「やった! 光の矢が出たよ!」


「よし! 俺が奴の注意を引くから、ヤツの頭をその魔法で狙え」


「うん、わかった!」


「あと、くれぐれも俺に当てるなよ! 絶対な! 絶対だぞ!」


「えーっと、それって思いっきり当てて欲しいって事?」


「ちげーよ! 俺はお笑い芸人じゃねーから! 当てて欲しくねーから!」


「うん、わかった。まかせて! 長野さんと香川ちゃんも手伝って!」


「うん!」「はい!」


 俺は足を引きずる演技をしながら、レアゴブリンの攻撃を避けて逃げる。


 レアゴブリンの顔に3人娘のホーリーアローが何度も突き刺さる。


 結構痛そうな顔をするゴブリン。


 そりゃ僧侶と言えど勇者候補の魔法攻撃だもんな。


 結構痛いと思う。


 怒りで再び女の子達に矛先が向かいそうになると、俺が脇腹に短剣を突き立てる。


 再び怒りの矛先が俺に戻る。


 俺はレアゴブリンの棍棒攻撃を再び避ける。


 これを5分ほど繰り返してるとどうにか倒せた。


 リリィさんが目を丸くして驚いてる。


「倒せちゃった……君ら凄いな!」


「どう? ランクD冒険者の凄さが解った?」


「うん、すごいよ! まさか、あれを倒せるとは思わなかったしね」


 倒せないと思って連れて来たのかよ! ひでーな、おい。


「私の強さを認めてくれる?」


「うん! 認める認める! 今度はイシカワさん一人で倒せたら認めてあげるよ」


「え!?」


「じゃあ、僕、連れてくるから! 今度は弱い奴ね!」


 リリィさんは普通サイズよりかなり小ぶりな弓矢持ちのゴブリンを連れて来た。


 身長1メートルにも満たない可愛らしいゴブリンだ。幼生のゴブリンだな。


 距離を詰めて脇腹に蹴りでも決めれば一瞬でケリが付く敵だ。


 だけど石川は距離を詰めず逃げ回っていた。


 ゴブリンは矢を石川に向かって射る。


 狙いはかなり正確!


 逃げ惑う石川のお尻に、矢が何本もプスプスと突き刺さる。


「ぐげー! ぐぎょー!」


 石川のお尻に矢が刺さる度に、野獣みたいな叫び声を出して逃げ回る石川。


 割り箸より少し短い焼き鳥の串みたいな感じの矢がお尻に何本も刺さってて痛々しい。


 まるでウニみたい。


 見かねたリリィさんがゴブリンの首を切り落とした。


 石川は肩で息をしてその場に座り込んだ。


「大体イシカワさんの実力は解ったよ。ゴブリンはちょっと早いみたいね」


「いたたた。そ、そうみたいでした」


 リリィさんは石川からの背中やお尻から矢を引き抜くと治療魔法で怪我を治した。


「とりあえず、みんな体力作りからかな?」


「はい……」


 リリィさんはランクD勇者様の予想以上に使えない実力を思い知ったので、基礎からトレーニングする事になった。

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[気になる点] システムちゃんの紹介は3〜5辺りで一度しているので、調整をお願いします。
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