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幽霊

作者: 雪平 真琴

 どうも、こんばんは。

 え、こんな時間にこんな所で1人でいて危なくないか? ええ、そうですね。危ない人に捕まえられるかもしれません。何しろ、ここは、この間誰かが殺された場所ですし。近頃物騒ですよね。おちおち散歩も出来ませんよ、ええ。

 知ってるならなぜここにって? そんなの人の勝手じゃないですか。人様のプライベートに口を出すなって習いませんでした? 興味があるから? あ、そう。何でもないですよ。ただの散歩です。それだけですよ。

 怪しい。そう思われるかもしれませんが、何もないのに何かあるとも言えませんよ。とにかく、叩いても埃も何も出て来ません。

 それにしても、なんで人を殺したりなんかするんでしょうね。絶対得な事なんてありませんよ、ええ。金の貸し借りうんぬんなら、自己破産をすれば済む話だし、痴情のもつれと言ったって、何も殺す事なんかないでしょうに。相手を自分1人の物にしたいヤンデレって奴ですかね。永遠の独占欲? 怖いですよね。巻き込まれる相手の身にもなってあげて欲しいですよ、ホントに。

 いや、ホントに殺害なんて、百害あって一利なしなんですよ。捕まったらおしまい。そして、周りに迷惑をかける。捕まらなかったらいいじゃないか。へぇ、ずいぶんとサイコな思想をお持ちなんですね。でも、駄目です。捕まらないなら、正確には、罪を償わないなら償わないなりに、辛い事が襲い掛かって来るもんですよ。

 どうしてそんな事わかるのかって? それは……話すと長くなりますよ。構いませんか? こちらは時間ならたっぷりあるので大丈夫ですが。大丈夫。こっちも時間を取られる覚悟は出来ていた。なるほど。では、お話しましょう。


――


 この世界には、思ったより不思議な事があるんですよ。まあ、その全部が本物かと言われると、首をかしげざるを得ませんがね。だけど、ゼロじゃない。この世の中には、まだまだ科学で解明されていない事がありますからね。その隙を突いて、UMAみたいな物がいてもおかしくはない。宇宙人だって、観測されてないだけどいる可能性はありますし。

 小さな頃から、そう言った未確認生命体みたいな物に、興味がありました。どこにでもいるような、普通の小学生。興味を持つのは何もおかしくないでしょう? 単純な興味ですよ、ホントに。別に将来それの研究をしたいと思う程の事もなく、高学年になったら、次第にその感情は薄れて行きました。

 それから、ずっと波風も立てず、平穏無事に暮らしていました。いい事も悪い事も、ほとんどない。まあ、当然小さな事はたくさんありますよ。だけど、他人を憎む程の苦悩や、他人に憎まれる程の成功はしていないはずです。

 どうしてそんなどうでもいいような話をするのかって? まあ、どうでもいいですか。そうですね。じゃあ、本題に戻します。

 実は、この世界には、いるんですよ、幽霊。


――


 まあ、急にそんな話されても、反応に困りますよね。それはわかります。受け入れがたいですよね、誰でも始めは。

 始めとか言う問題じゃなく。ああ、そう。まあ、大半の人は幽霊を見る事なく終わりますからね。やはり、現実に見るまでは、信じられない物です。いや、つまり、見ても始めは受け入れられないって事ですよ。

 見てない? そうですか。

 でも、とにかく聞いてください。時間はあるんでしょう? 頭のおかしい奴だなんて言わずに。

 あ、聞いてくださるんですか。ありがとうございます。


――


 世界は、思ったより不思議な事で溢れています。

 幽霊は、そんな中の1つです。科学では解明出来ない、不可思議な事。それが幽霊です。

 ある日突然、幽霊が見えるようになりました。こんな状況に陥ったら、人ってどうするんでしょうね。始めから見えていたなら無視は立派な選択肢に入るでしょう。でも、今までは見えなかった物が急に見えるようになったとしたら? 気になりますよね。誰だって。

 で、情報収集を始めたんです。気になったから。

 お前は幽霊が急に見えるようになったのかって言われましても、まあ、その通りですと答えるしかありませんね。で、様々な幽霊からの情報を集めてみました。まあ、いろんな幽霊がいた物で、恨みつらみを忘れて幽霊として周りの幽霊と楽しく暮らしてるような変わり者もいましたが、大半は1匹狼ですからね。いくら恨みで生きていると言えども、話し相手は欲しい物みたいで、そう言った幽霊たちは、ペラペラと話してくれました。今から、その情報をまとめた物をお教えしますね。

 幽霊は、この世に未練を残している。それは、世間一般で言われている通りです。けれど、死に打ち勝てる未練なんて、そうはありませんよ。子どもの結婚式直前であえなく亡くなって、最後にそれだけ見たいだなんて、通らないんです。じゃないと、世界は幽霊で溢れ返ってしまいますからね。

 死に打ち勝てる未練。それはやはり、恨みです。それも、殺したい程の。例えば、自分を殺した犯人に復讐したい、とかね。

 それがどうしたと言われましても、もう少し待ってくださいとしか言えません。どうせここまで聞いたんですから、最後まで。ね?

 で、幽霊が見える人と見えない人がいる。と言うのも、まあ、半分は正しいんです。確かに見える人はいます。けれど、それは、幽霊が心から憎んでいる相手、今の例で言うと自分を殺した相手、そいつだけがその「自分」の幽霊を見られます。霊感体質とか、そんな風に全ての幽霊を見られる人なんて存在しません。

 つまりお前は人殺しなのか? いえ、違いますよ。違います違います。と言うか、そんなに怖がってる風には見受けられませんが。ああ、まあ人殺しにビビってるようじゃこんな所でこんな時間に1人で歩いたりしませんもんね。いえ、関係ないですよ。

 まあ、と言う訳で、殺人を犯したら、その幽霊に四六時中苦しめられる事になるんです。それが最初のセリフに戻る訳ですね。罪を償わないなら償わないなりに、辛い事が待っている、と言う事の。


――


 終わりかって? いやいや、もう少し待ってください。

 おかしいと思いませんか? 一度も嘘は吐いてませんが、どうしようもない矛盾が隠れてる事に気付きませんか?

 少し考えてみてくださいよ。わからない? もう少しよく考えた方が身のためですって。

 まあ、仕方ないか。わかりました。解説しますよ。


――


 そもそも、おかしいと思いませんでしたか?

 いろんな幽霊から情報を集めたと言ってる傍から、霊感体質なんて物はない、自分を恨んでいる幽霊しか見えない物だ。だなんて。しかも、恨まれるような事もしてないと言っておきながら、幽霊が見える、だなんて。

 ですよね。まあ、さすがにわかりますか。

 じゃあ、何で見えるのか。それも、話をよくよく見返してみればわかるはずです。そう、もう一度しっかりと見てください。


――


 情報収集の最初の方で、幽霊同士で楽しくやっている例もある、と言いましたよね。未練の大本は残ってるから成仏は出来ない、けれど恨みだけをずっと抱えて生きても行けない変わり者。

 でも、重要なのはそこじゃない。幽霊「同士」楽しくやっている、って所です。

 まあ、要するに、幽霊は幽霊を見られるんです。


――


 そして、ここからが一番重要な部分なんですが、ある日突然、幽霊が見えるようになったと言いましたよね。

 しかも、様々な幽霊が見られる。

 ここまで言えば、もうおわかりでしょうが、今あなたが見ているのは、幽霊です。しかも、あなたに殺された、ね。

 どこを見てるんですか。あなたですよ、あなた。他の誰でもない。

 だって、見えてるんでしょう? 幽霊が。他に誰もいませんよ。この場所には、あなた以外、誰も。あなたに向かって、語り掛けているだけです。

 ねえ、どうしてあなたは、殺人なんて馬鹿げた事をしたんですか?

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