第二話 恐怖、ノート、記憶を消してやる
「ほら!---早く!こっちこっちー!早くおいでよー!」
誰かが俺を呼ぶ、
「今行く!ほら、---もいこ?」
これは誰だ?いや、これは俺だ。
「う、うん・・・」
俺の手を握ってオドオドと不安そうな顔をしている少女は一緒に育ってきた・・・あれ、名前が思い出せない。さっき名前を言ったはずなのに、まるで名前の部分だけノイズがかかったように記憶から抜け落ちている。
「よし!今日はどこに行くんだろうね」
〖いつも〗のように村の子供と---と一緒に遊びに行く.
いつも?俺は?思い出せない何も・・・そう何も思い出せない、思い出したくない。
そして俺は真っ赤なルビーのような眼を持ち雪のように白い肌と髪をした少女の手を引き村の子供と森の中に入っていく―――――
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ケイヤが次に目を覚ました時、そこはとても居心地のいい場所であった。
(・・・どこだここ。手は・・・感覚がない。足も・・・。)
体を動かそうとしたケイヤはまず目の前が真っ暗なことに気づき、次に感覚がない手がどうなっているのか見るために視線を動かそうとした。しかしいくら体を動かそうとしても感覚はなく、時間がたてばたつほど焦りたとえようのない恐怖が襲ってくる。
(なんだよこれ・・・どうなっているんだよ!!)
しかし人間、一定以上の恐怖を感じると自身を守るために冷静になるものだ。それでもうすら寒いものを感じながらでもケイヤは考える。
(ひとまず落ち着け。全身の感覚は一切ないが考えることができるってことは死んではいないはずだ、これが死後ってんなら何とも言えんがとりあえず生きてるはず。)
ケイヤは思考がそれながらも考える。
(岸川恵也、夏の補習の帰りにケイと帰ってる途中で白い風に攫われ神さまから転生させられる。うん、どこもおかしくない・・・わけねぇだろ!あほか!夢ですか、夢ですよね、夢だと言ってくれ!)
(それにあんの神さんの言うことにゃ机の中に入ってるあのノート参照にしたーって話ですかぁ、っは!じゃあ〖ステータス〗ってやれ・・・ば・・・?)
ケイヤがステータスと思ったとき目の前(?)にゲームなどで馴染み深い画面が表示されていく。
名:-----
種族:人
性別:男
詳細▲
ステータス
HP:1
MP:250
体力:0
魔力:100
耐性:30▼
Δ物理耐性:0
Δ魔法耐性:0(+30)
敏捷:0
詳細▲
スキル
一般▲
戦闘▲
称号:『転生者』『』
(嘘だろ・・・マジで開きやがった・・・)
ケイヤは広がる文字や数字を見て驚きつつも、黒以外のものがあることに安心していた。
(えーっとてことは・・・本当にあのノートに書かれてある通りなんだな・・・)
ケイヤは表示されている画面を穴が開くほどにらみ何かできないかを考える。
(魔力とMPが高いってことはなんか関係してるんだろうな・・・称号の欄には『転生者』っと安直だな・・・と言うかHP1って何気にやばいんじゃないのか?)
そしてケイヤはあることに気づく。それは、
(えーっとノートに書いてたってことは・・・ってちょっとまて!あの人の秘密をペラペラしゃべるやつに全部見られたのか!?ふっざけんな!)
日頃から異世界への妄想膨らませていたケイヤは妄想だけではどうにも発散できないものを1冊のノートにまとめていた。それは選択するスキルであったり、容姿であったり、またまたせ―――
(よーっしよし!ぶん殴る!ぜってーぶん殴って記憶を消してやる・・・!)
まだケイヤに救いようがあるとすればそのノートは小学生から中学生にかけて書かれたもので高校に上がってからは机の奥底に隠して一切書いておらず、存在を忘れていたことである。なので言いふらされたところで小さいころの妄想だといえばいいのだが、十分に致命的なことであるのには変わりはない。
(第一目標は神を殴るだな!ハハハ、覚悟しておけよ・・・人の黒歴史の代償は高いぞ・・・)
もっともあの神には話す相手もいないのだがそれはケイヤの知るところではなかった・・・
GWなので早めに投稿です




