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転生したので黒歴史の続きを生きてみる  作者: JーWelf
第一幕 転生、些細な日常
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第一話 理不尽、転生、話を聞けよ!

「あー・・・今日も今日とて暇だ・・・」


 学校が終わりケイヤはうんざりしたようにつぶやいた。


「異世界とかに勇者として呼び出されないかなー・・・そう!そこから魔王と世界の命運をか――」


「岸川、何叫んでんだ?」


「・・・ナンデモナイデス、センセーサヨウナラー」


「おう、また来週な!妄想もいいけど赤点の補充もしっかりしろよ!」


「・・・」


 真っ赤になった顔を他の生徒に見られないようにケイヤは自転車に飛び乗り急いで校門から出た。


――――――――――



 学校を出て他の生徒が見えなくなった頃を見計らって、ケイヤは止めていた息を吐き出すように、

「ッはぁぁぁぁ・・・あの教師ぜってー地獄に落としてやらぁ・・・」


・・・物騒で野蛮でゴミクズみたいな言葉をはきやがった


「・・・ちょいっとそこでさっきからと地の文みたいなことをつぶやいている僕ゥ?感情入り過ぎてませんかぁ?」


「や、やだなーケイちゃん気付いてたなら最初から声かけてくれればよかったのに・・・それとボクは一応女の子何だから男の子扱いはやめてよー」


「ッハ」


「え、ちょっとなにその対応」


「男の子扱いが嫌だったら一人称を直してからにもう一度お問い合わせくださいっと」


「あ、じゃあ男の子扱いでいいや」


「いいのかよ!」


 ケイヤはいつの間にか隣に並んでいる少年にも見える少女をあきれたような目でじっと睨んだ。少女の名前は古川メグミといい、ケイヤとは幼いころからの友人でもある。


「だってボクがボクと言うのはボクがボクであるためとボクの中で決めた、つまりボク理論があるからさ…!」


「なんの答えも見えねえぞ、それ」


 ケイヤはどこかつかれたのように息をつき、よく分からない自論を繰り出すメグミに向かって非難めいた声を出す。


「はぁ、何でそれで頭いいのおまえ」


「んー、ボクが頭いいんじゃなくて単純にケイちゃんがサボっているせいじゃないの?」


「返す言葉もございません、ケイさま。」


「ケイって呼ばないでよ<メグ>!」


 そのまま二人は外の空の下、道の途中でもあるのにも関わらずヒートアップし大声で言い合う。


「ちょ、お前も人のこと言えねえじゃねえか!それに俺は恵<也>で<也>がついてるからメグミとは違うんですーっだ!」


「じゃあメグやんでいいよメグやんで」


「余計なものを持ってくるなケイ!」


「あー!またケイってよんだ!いいよ、そっちがその気ならこっちだって学校中にメグやんって広めてやる!」


「んな!そんなことしてみろ俺だって―――


――――――――――


 散々ケイヤ達が恥ずかしい過去話を繰り広げて、時折すれ違う通行人に見られ続ける羞恥心の方が強くなったとき、互いに意志疎通した訳でもないのに同時にその場から逃げ出した。

 そして、しばらく走り周囲からの視線が無くなったときメグミがこう切り出してきた。


「そういえばさ、さっきメグが言っていたことって本当に思ってるの?」


「ん?さっきのことって?あと呼び名がメグになっているぞケイ」


「いいじゃん、ほら校門でる前に異世界に~って話」


「あー、それか。まあ実際に起こりはしないって思っているけど、行けたらどんなに自由に生きていけるのかなってさ、だから異世界に行ってみたいのは本当だよ」


----!-------!


「・・・ん?」


「そっか行ってみたいのかー、じゃあさ行けるなら一緒にいこ!それで自由に楽しも!」


--------------!


「なあケイ、変な音聞こえないか?」


----------!


「? ケイちゃんどうしたの?」


----!

----------!


「とゆうかここどこだよ」


「え、いつもの帰り道から走って――――ッ!」


 その時ケイヤの周りに白い風が吹き、目の前からナニカが迫ってきた。そこでケイヤの意識は消えていく。消えゆく視界に鮮明に映ったのは白い風に煌々と輝く紅い

 

  [眼]


――――――――――


「ッぅああああああああああああ!!!」


「ちょーっと静かにしてもらえませんかねぇ~」

 

 ケイヤが目を覚ました時、目に入ったものは黒だった。明かりも何もない、ただただ黒い部屋であった。しかし、その黒い部屋はとても遠くまたとても近くも見える。すべての境界がなく、しかしくっきりと境界がわかる何とも奇妙な部屋であった。


「なん・・・だよ、ここ・・・どこだよ!」


 上も下も右も左もすべてが黒で塗りつぶされている中、影がケイヤの前にいた。この部屋と同じようにほかの黒と境界がない影で認識できないはずなのにその影は女と分かる、なんとも奇妙な姿(?)をしている。

 

「大丈夫ですかぁ~」


 その影は間延びする声でケイヤに話しかけてきた。しかしケイヤにはその曖昧な姿しか認識できない影よりも現状を理解するほうが難しいようで混乱している。


「ここは、というかケイ!メグミは!?」


「まあとりあえず意識はハッキリしてるぅ~っと。ここは、~ん。神さまの住処?あと隣りにいた子は平気だよぉ~」


 ケイヤはそこでやっと目の前の影に意識が向いた。


「神さま?無事・・・、え?え?」


「さぁ~ってここで選択でぇ~っす!今から転生させちゃいますけど欲しいものありますかぁ~?何でもイケちゃいますよぉ~」


 唐突に昔のクイズ番組のような効果音が響き、影が明るい声で突拍子もないことを言った。


「はぁ?ちょっとまて、なにがーーーー」


 ケイヤの声は聞こえてないとばかりにその影は話を勝手に進めていく。


「あ、ケイヤさんの机の中に異世界に行くとしたらぁ~ってまとめた本がありますねぇ~、コレを参考にしっちゃいましょぉ~。準備いいですよぉ~」


「いや、話を―――」


「じゃぁ~、さくぅっといっちゃいましょ~」


「だから話を聞けって!」


 しかし影はケイヤの言葉を完全に聞いていない。するとその影から光がでた、ように見えた。黒いような白いような光に巻き込まれたケイヤの意識は再び落ちていく。


(またかよ!おまえは誰だ、メグミは・・・)


 消えていく意識にあの奇妙な間延びする声が響いてくる。


「またあとでお話ししましょぉ~、またねケイヤくん☆」


――――――――――


 ケイヤが消えた部屋は今までの黒が嘘のように色づき、鮮やかな花が咲き誇る庭や澄み渡る空、そして透けるように白い肌と輝く金色の髪をなびかせる紅い瞳をした少女の姿がそこにあった。その少女はどこか悲しさを漂わせる笑みを浮かべぽつりとつぶやく。


「今度はちゃんと迎えに来てね、---さん」


 少女を抱えるこの世の楽園とも思える庭は、まるで少女を閉じ込めるためにだけ創られた牢獄のようにもみえた。

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