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転生したので黒歴史の続きを生きてみる  作者: JーWelf
第一幕 転生、些細な日常
10/14

第八話 古門、逮捕、殺す気か!?

 ルーオ達は一度家に帰り昼食を食べた後、本を読みたいとだだこねるアリストにどうせなら半分は見て回ろうと説得し、もう一度森の奥に入っていった。

 太陽は頂上を通り過ぎ、木の上でお昼寝をしているリスたちを眺めたりしながらしばらく歩いていると、やはり唐突に森が開けており古びた大きな門の前に出た。


「でっけぇ・・・」


 首を思いっきり上に傾けポカーンと口を開けて驚いているルーオと眠たげにあくびをしてキョロキョロとあたりを見渡しているアリスト、そしてアリストのやや薄手なワンピースを下からのぞきあげている小さな子供。


「ん?」


 ルーオが流した視線を再びアリストの足元に戻したがそこには何も無く、小さな花が咲いていた。


「気の・・・せいか?」


「ルーオ、・・・あれ」


 アリストが門の上を指差したのだがそちらを見てもただ錆びて今にも崩れそうな紋様があるだけだ。


「子、供・・・?」


 ルーオはアリストが言った言葉に反応して振り返った。するとそこには先ほど見間違えと思った時と同じようにアリストの下着をのぞいている子供がいた。


「あー・・・アリスト?足元見てごらん」


「え、?ぁ・・・」


 足元に視線を向けたアリストとアリストの下着をのぞいている子供の視線が合い、子供がニコッと笑った。ルーオからはアリストはうつむいて表情がわからないが肩が震えているのを見て冷や汗が出てきつつ疑問に思っていることを子供に聞いた。


「えーと、誰?」


「ボク?ボクはねー・・・んー。あ!ヴェンディシオン!ヴェンディシオン=エヴロギア!ウェンでいいよ!」


 ウェンはアリストの足の間からルーオを見て明るい声でハッキリと返事をした。


「あ、あぁ、俺はルーオ。ルーオ=フィエスタ、よろ――」


「よろ・・・しくじゃ、・・・ないっ!!」


「あーーれーーー!!」


 あまりにも自然に明るく自己紹介をされたのでつられてルーオが返したとき、ようやく状況についてきたアリストが足を振りかぶりウェンを思いっきり蹴っ飛ばした。ウェンはどこかマヌケな声を上げながら面白いように飛んでいき、ついには門の向こう側まで飛んでいってしまった。


「え、ちょ、アリスト!?どんだけ強く蹴ったの!?」


「あれ、わざと、飛んでいったっ!蹴った感触無いもんっ!――っソコ!」


「ぷぎゅっ」


 異常な飛び方をしたウェンに驚いて声を上げたずねたルーオにアリストが叫び返し、いきなり足を上げたかとおもうと後ろに足を思いっきり振り下ろした。するとそこからまたマヌケな声が上がり、ルーオがアリストの足下を見るといつのまに移動してきたのかウェンが踏みつけられうめき声をあげていた。


「お、おかしぃなぁ・・・きちんと隠れていたはずなのに・・・バタン」


「いやバタンって口で言うものじゃ無いだろ・・・」


「ふんっ」


 アリストはウェンを踏みつけていた足をあげるとグッタリとしているウェンの頭を蹴り上げた。


「え、アリスト、さん・・・?さすがにやり過ぎじゃ・・・」


「また、・・・逃げられ、たっ!」


「あはは!すごーい!アリストちゃん!何でわかるのぉ!」


「え、えぇー・・・」


 ウェンはいつのまにかルーオの肩に乗っており、あまりにも非常識な出来事にルーオは付いていけなくなっていたがアリストがそんなウェンの姿におちょくられたと思ったのかウェンを睨みつける。そしてウェンを肩に乗せたルーオに走り寄ると拳を振り上げ、全力でウェンを殴りつけた。


「ちょ・・・ヒッ」


 アリストが拳を振り上げた時点で止めようとしたルーオだがアリストのあまりの怒気と拳の威力にすくみ上がった。


「あはは!またハズレ!ザンネーン!」


「おちょくるな――ってお前そこはっ!」


 次にウェンが出てきたのはルーオとアリストの間、つまりアリストの攻撃が外れるとルーオにも被害が及ぶ場所だ。

 慌ててウェンから距離をとったルーオ、するとその直後今までルーオが立っていた場所をも巻き込まれる攻撃が行われた。


「待てアリスト!それ、俺のこと考えてる!?」


「・・・大丈夫。」


「あぁ、それならいい――」


「ルーオなら避けてくれる」


「今はいらない信用!避けなきゃ当たるのかよ!?」


「あはは!たっのしいねぇ!」


 アリストとルーオがそんな言葉を言い合っているうちにウェンは再びルーオの近くに来ていた。


「だぁ!お前わざとだろ!」


「ほら、逃げないとあぶないよぉ!」


「・・・・・・」


 走って来たアリストを見て全力で逃げるルーオにピッタリと付いて来ているのに「あはは!」と楽しげな笑い声をあげるウェンと無言でしかし確かな怒りが目に宿って追いかけてくるアリスト。


「お、っかしいだろっ!――っと!?」


 慌ててしゃがんだルーオの頭上を横凪の腕払いが過ぎていく。アリストは立ち止まっていないと先ほどのような威力の攻撃が出せないようなのだが今でも十分にまともに当たったら腕の骨なら簡単に折れてしまいそうな攻撃を繰り出している。


「ア、アリスト!待て!威力――ッ!力がおかしいだろ!」


「・・・んーたぶんアリストちゃんは殺そうとしてるなぁ・・・」


「ウェン今ぼそっとなんて言った!?」


「ほら!またくるよぉ!」


「だああぁあぁぁぁああ!!!」


 しゃがんでいたルーオは慌てて逃げようと中途半端な姿勢から走ろうとしたせいでバランスを崩し、足がもつれ合いそのまま転んでしまった。しかしアリストとルーオの間にはウェンがおり、アリストはルーオが転んでいることに気づいておらず、ウェンはルーオが転ぶとは思っていなかったのか立ち止まり振り返ってルーオを見た。すると立ち止まったウェンを見て散々おちょくられていたアリストは好機とばかりに全力の蹴りを繰り出す。


「ぁああああああああ!!!」


「ちょっとアリストちゃんストップ!!!」


 例のごとくアリストの攻撃はウェンをすり抜けその奥に転んでいるルーオに飛んでいく。転んでいるルーオはその態勢では腕で防ぐこともできずアリストの後ろからウェンが出てきて何かしようとしているのだがアリストの蹴りはそれよりも早くルーオにたどり着く。


 そしてバシャン!っと盛大に水がはじけた音がした。反射的に目をそらしたウェンが恐る恐る目を開けるとそこには、目の前まで迫っていたアリストが自分に向けて思いっきり手を伸ばしている姿があった。


「え・・・」


「つか、まーえたっ・・・!」


 アリストはやや荒々しくウェンを押し倒すと背中にまたがり腕を伏せ身動きを完全に封じた。呆気にとられているウェンがズシャという音が聞こえ顔を上げてみると、服が泥で汚れ全身から水が滴り落ちているルーオがブスッとアリストを睨んでいた。


「・・・アリスト、俺を殺す気か!?」


「大、丈夫・・・ルーオだか、・・・ら」


 ウェンはひとまず無事らしいルーオを見てホッとしたのか自分が置かれている状況などどこかで風が吹いたかのような調子で話す。


「おっどろいたぁ!ルーオって魔術が使えたんだね!いやぁそうくるとは思わなかったよ!って痛い!痛いよアリストちゃん!」


「ルーオだから、・・・当、然・・・。それより、あなた・・・誰」


 ルーオはアリストの攻撃がくる瞬間、自分の全身から魔術で水を下に向けて全力で放ちその反動を利用して飛び、アリストの蹴りをよけたのである。ただし自分を始点にし水を出したため全身がずぶ濡れになり、地面に打ち付けたときに跳ねた泥で汚れてしまったのだ。


「誰ってルーオのお・よ・め・さ・ん☆痛い!痛い痛い!アリストちゃん、さすがにコッチでも一応本体なんだから痛いよぅ!」


「ふざけないでっ!あなたどこから来たのっ!」


 飄々とした様子のウェンに対しアリストは苛立った様子でウェンを締め上げる。


「大丈夫だよアリストちゃん、結界は抜けてない。ただちょっとだけ、特別な方法で来たんだよ」


「・・・・・・」


 ずっと見ていたにもかかわらずウェンはアリストの下からいつの間にか抜け出し、いつ抜け出したかわからず拗ねた顔をしているアリストの頭を優しく微笑みながら撫でていた。

 そして蚊帳の外のルーオは水で全身の泥を洗い流し、濡れた服を絞っていた。


「クシュンッ!あー、さすがに・・・寒い」


 ――――――――――


 あの後ルーオが必死なって服を乾かしているとウェンが何らかの魔法でルーオの服を乾かしてしまい、「じゃーねー!」と言ったかと思うと現れた時と同じように居なくなっていた。


「あいつ、・・・キラ・・・イ」


「あー、ん、そうだな・・・」


 乾いた服を着てへたり込んでいるルーオにのしかかりアリストはルーオに話しかける。しかしルーオはグデーとしており返事もぬるい。


「それより、・・・ルーオ、魔術・・・教え・・・て、次は・・・ちゃんと、・・・仕留め、る」


「あー、ん、今度な・・・」


「むぅ・・・じゃあ、もう帰・・・ろ。・・・道、どっち・・・?」


「あー、ん、・・・・・・」


「ルー・・・オ・・・?」


 帰り道と聞かれたとき顔を上げたルーオが答えようとして口を開けたまま固まってしまったのを見てアリストはひょっとしてと思い言う。


「ルーオ、・・・帰り道・・・わから、な・・・い?」


「・・・・・・」


「ルーオ、・・・帰り道・・・わから――」


「聞こえてるよ!わかんないよ!どうすんだこれ!?」


「大丈夫、・・・何とか・・・なる。ルーオな、ら・・・!」


「俺をいったい――、っじゃなくてそもそもアリストがムチャクチャに攻撃して来たのが原因だろ!!」


 普通に歩いて森の奥に入ったならばルーオは帰り道を覚えていれる自身があった。しかし今ばかりは違う。なぜならアリストが有り得ないほどの力で攻撃して来るのを必死で逃げまくった結果、道を外れ森の奥に来てしまったのだ。当然帰り道を覚えているはずもなく、ルーオとアリストは未開の森の奥で迷ってしまっていた。


「どうすんだよ・・・これ・・・」


「とりあえず、歩・・・こ、端っこま・・・で、歩けば、・・・私が帰、り道・・・わかる、・・・し」


「遭難死亡フラグきたぁ・・・」


 かと言って山でもない平地の森の奥なのだ、夜になっても当然村の灯りなど届くはずもない。それに何かの端間で行けばアリストが帰り道が分かるというのだ、ならば生きて帰れる可能性が少しでもある方を選びたい。そんなわけでルーオ達は森の草木を切り分けながら森の中へと入っていく・・・――――

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