翔くんとルーちゃん その12
昔見たことのある、神殿だった。
「ようこそ、勇者様」
「勇者?」
「はい。異世界から召喚し、黒目黒髪のお方はこのエーベル王国においては勇者の証とされております」
そんなことは無かったはずだ。しかし、それをこいつらに言っていいものか悩んだ。
「……ちなみに、俺で何人目?」
「召喚魔法が編み出され、早五百年。その間に召喚されたのはあなたを含めて三人です」
「……多くない? それ」
そして、フィルヘイドたちと会ってから五百年経ったということなのだ。
「それくらい魔王の脅威がここに迫っているのですよ!!」
その言葉に翔は言葉を失った。
あり得ない。あの魔王様が? そしてルシファーがよしとするはずがない。
「……うそ……だ」
「嘘ではございません。そして、これが『聖剣』です! お持ちください」
そう言って渡されたのは、あの日置いていった「木刀」だった。
強化され具合からも、握り具合からいっても、あの日ドワーフに作ってもらい魔族の騎士と打ち合った木刀の一振りである。
「以前はもう一つあったと伝承に残っております。しかし、先の聖戦で失われました」
尚更、ここが以前来た時と同じところだと痛感していく。
すぐに旅に出なくては。
全てを知るために。
まだ生きているだろうか。ドワーフやアルプの人たちは。そして魔王様やルシファーは人間を憎んでいないだろうか。
そんな不安が翔の中で大きくなっていった。




