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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
74/91

ちょっぴり嫌な応酬です


 帰る時が近づくにつれ、別れを惜しむ者たちが増えてきた。

「エリはどうすんだ?」

 千紘が唐突にエリに尋ねた。

「そうですねぇ。……姉さんが心配なので私はこちらにいます。達樹さんが獲物を狙う目で姉さんを見つめてますので」

「……そうだな」

 確かにあの目はやばい。婉曲に告白したそうだが、どうするつもりなのか。

「何かあったら連絡しろ。翠の携帯なら使い慣れてるだろ」

「そうしますぅ。私もの凄く不安なんですぅぅぅぅ」

「でしょうね」

 千佳も話しに混ざってきた。

「やはり、帰るのか?」

 シスの躊躇う声。

「達樹のようにあっちにまったく思い入れがないわけじゃないし、……なんというかどちらにも遣り残したことはあるから、どちらにしろ後悔は残るな」

「そうか……残念だ。これからこの街が発展していくのを一緒に見てもらいたかった」

「連絡はいつでも取れるのよ? それで十分じゃない」

 明るく千佳が言った。

「それよりも、問題はあの三人だろ」

 そう、哉斗と翠、そして千夏が酒を飲んで騒いでいた。

「この土地でも酒が作れるようになるかな?」

「させてやらぁ! それこそ魔物の名にかけてな!」

「そりゃ、楽しみだ!」

 翠の言葉に醸造が得意だという魔物が返し、そしてそれを楽しみにする領民。魔物の力をそんなことに使うのはどうなんだろう、思わず千紘は思ってしまったが、あえて言わないでおいた。

 それくらい今の街中は活気づいているのだ。


 人間と魔物の共生、意外に上手くいきそうである。



 今日は祭りだ。

 人間と魔物、そしてその間に産まれた子供たちが皆、楽しく暮らせるところにするという、「目標」に向かって一歩歩き出す、そのための祭り。

 実際、達樹の使った魔法が効いたとも言われた。

 人間と魔物が協力し合って一つの魔法を作った、それを領民は見ていたのだ。

 そして魔王としっかり手を組んでしまったこと。

「そんなつもりじゃ、なかったんだけどな」

 すっかり健康体になった達樹は思わず呟いた。

「どうした、人の子よ」

「あなたと手を組んだのは、あなたとの戦いに水を差されたからのはずなんですけどね」

 いつも唐突に現れる魔界の王を気にすることなく達樹は言った。

「それがいかがした?」

「いつの間にか俺が『魔王と手を組んで、グレス聖王国とエーベル王国の腐敗した暗部を瞬殺した』になってるんですよ」

「余と汝が天界に向かって行ったのがそう取られたと?」

「そういうことです。お義父さん」

「汝にそう言われる筋合いではないな義息子(むすこ)よ」

義息子(むすこ)って呼んでる時点で同じだと思いますが」

 互いに言われたくないことは同じらしい。それを言い合ってしまうのはご愛嬌というものだろう。

「やはり汝と渡り合うは楽しきことよ」

「同感です」

「いつ、汝以外は出立するのだ?」

「明日ですよ。あ、あの三人、二日酔いは絶対にありえませんから大丈夫です」

「左様か」

 それだけ言って、魔王は帰っていった。


 そして、シスと千紘が入ってきた。

 帰還呪文のためだ。千紘は向こうの世界に連絡を取り、明日帰ると伝えたという。

「あれから何日経ってんだろうね」

「俺も知らん」

「ま。最悪魔王様の手も借りて好きな時間に飛べるようにするよ」

「あの魔王をそういう風にいえるのはタツキくらいなものだよ」

 そして三人で笑いあった。


 まさか、それがあんなことを引き起こすとは思えなかった。


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