表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
7/91

それって誰のこと??


 あっという間に三ヶ月は過ぎた。未だにアネッサ嬢の居場所はつかめないがそろそろ動き出さなくてはいけない。

 自警団も無事機能しているし、この自治区だけに限れば、魔物を狩るのは、他者へ攻撃を加えた時に限られるようになってきている。

 自我を持たない低級な魔物は、あっという間に自警団や流入してきた他の魔物たちによって駆逐されていくのだ。

 つまり、この自治区に限って言えば「冒険者」は必要がなくなっているのである。王家などが秘密裏に「冒険者」を雇い、自治区内に軋轢を生むよう仕掛けているようだが、そのあたりの対処は最初からシスとエリザベスに任せている。

 千紘たちの後継者もそれなりに育成されている。この自治区を保つくらいなら、彼らでもう出来るはず、それが達樹の出した見解だった。

「千紘兄、緊急オペとか入りそう?」

「……入らんな。『魔法医師(ウィッチドクター)』『治癒者(ヒーラー)』ともにある一定の人材は最初から揃ってたからな」

 メス等の医療機器も揃った現在(いま)、ここで千紘たちが指導する必要性もないらしい。

「『薬師』も問題ないぞ~。調合はやってみないと分からないみたいだし。千佳のほうが教えてもらってるくらいだからな」

 そう答えたのは翆だ。勿論、「鍛冶屋」はドワーフやそれを心酔する弟子たちが多いため問題はない。測量機器も建築用機材も揃っているし、煉瓦作りにも魔法を応用するということでかなりの時間短縮が出来ている。

「科学的な能力がここはそこまで必要とされていないんだ。根本的なものを取り除いただけで、ここまで進歩するとはな」

 哉斗も付け足してきた。

 産業革命から環境保全という百年以上かかってもまだ終わらぬ出来事を、地球の知識と魔法を組み合わせたら、あっという間にそれ以上の効果を成し遂げてしまったのだ。

「おらよ、旅立つなら武器と銀路は必要だろ」

 クンツォーネがそう言って差し出したのは、試行錯誤で出来た大量の武器と防具だった。それをブロンズの髪と群青色の瞳をした、親指くらいの身長の妖精(ピクシー)の空間魔法で一つにまとめていく。

「いつ、君は来たの?」

 達樹は妖精(ピクシー)たちとはまったく交渉をしていない。

『面白そうなんだもの。だから私だけ協力するの。他の仲間の子は期待しないで』

「しないよ。ありがとう、君が協力してくれるだけで助かるよ。名前は?」

『人間には教えないわ』

 その一言でこの妖精(ピクシー)が危険だと判断しておく。

「さて、一緒に行きますか? お望みのままに、妖精(ピクシー)さん」

 とりあえずこっそりシスにお願いして、このピクシーを捕縛した。


 この自治領内の道には全て煉瓦が敷き詰められ、排水溝もしっかり出来た。馬車で通ったとしても揺れることはない。

 これから先、達樹はひたすら記録していくだけだ。



 ただ、客観的に。



 後に、「聖魔王」と呼ばれる男の、旅の始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ