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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
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達樹VS魔王様


「不敗の王」

「人間の魔王」

 色々と二つ名(?)がついたなぁ、と達樹はおぼろげな意識の中で思った。特に、「人間の魔王」ってどういう意味だよ、とつけた本人に問いただしたい。発端はエリだろう。

「達樹!」

「千佳姉ちゃん?」

「あんた無茶しすぎ! あんたが倒れると街の士気に関わるんだから」

「……気をつけるよ」

 寿命(さき)が短いことは領民にも伝えてある。だが、戦いで死ぬのとは話が違う。

「タツキ様!」

 起き上がった達樹を神官たちが止めてきた。

「動く。負けるわけにはいかないからね。俺と深く関わりのあるお方のようだ」

 にやりと笑う達樹を見た千佳は諦めた表情になっていた。

「達樹に暑さ対策をして頂戴。そのための専任者がいてもいいくらいよ」

「かしこまりました」

 すぐに神官たちも動き出した。守るためという口実の元、ギルタブルルたちも動き出す。


 達樹が起きたことにより、領民たちにも安堵が広がっていく。

 皆口をそろえて「流石不敗の王だ」と囁いていた。それを聞いた達樹は思い出した。

負けなきゃ(、、、、、)いいんだよね」

 肝心なことを忘れていた。無理に勝つ必要はない。相手を撤退、もしくは不可侵条約を結べればいいのだ。

 そう思ったら肩から力が抜けたのがわかった。


 エリとエルフリーデの父だからとか、召喚術に小細工をして達樹を呼んだ男だとか、その他色々思うところはあるが、今はどうでもいい。

「達樹?」

「大丈夫。負けないから」

 思わずこぼれた笑みを見た領民たちが「魔王の微笑み」と囁いていたことに、達樹は気がつかなかった。



「さて、仕切りなおしとしませんか? 魔王様」

 魔王を見て達樹は宣言した。この先、どうするかは既に達樹の頭の中にある。

「全員一時撤退!」

 不思議そうに全員がこちらを見たが、すぐにそれに従った。

「さて、負けずに戦いますか」

「タツキ!!」

 シスが驚いていた。

「体力と魔法力はどれくらい残ってる?」

「正直、あとわずかだな」

「じゃあ、エリさんとエルフリーデさんは休んで回復。あとで二人に頼みごとがあるからね」

「時間稼ぎか? 人の子よ」

「正解」

 にこりと笑って、魔王の言葉を肯定しておいた。


 頼む際、別の人物からの力も借りざるを得ない。

「さて、エメラルドさん。あなたの本当の雇い主は彼だよね?」

『!!』

「何度もいってるでしょ? あなたはアネッサ嬢を攫った人物に繋がりがあるんだって。アネッサ嬢を攫ったのが彼なら、あなたは彼の配下。そしてこの場所があっさりばれた理由も納得がいくし、エリさんとエルフリーデさんがこちらに残っている事だって伝えられるからね」

『いっ言いがかりよ!!』

「言いがかりじゃない。きちんと証拠があるけど、それでも白を切るの?」

「達樹」

 哉斗が割って入ってきた。

「エメラルドがあちら側だろうがなんだろうが、今まで協力してくれたのは間違いじゃないだろう? それにお前はエメラルドから情報が流れるのを知ってて動いてたんだ」

 そう。だからこそ達樹はエメラルドを追い詰めるのだ。

「別に言いつけてもかまわない。ただね、俺の頼んだことを実行して欲しいだけだよ」

『何をすればいいのよ』

「エリさんが今から魔法を使う。それを一度エメラルドさんが引き受けて倍以上の魔法力にして俺に渡せばいいだけだよ」

『ちょっ……そんなことしたらあなたが壊れるかもしれないんだからね!』

「大丈夫。ちょっとした魔法だから。アリーさんはエルフリーデさんから引き受けて欲しい」

 その言葉にアリエルはこくんと頷くだけだった。

「俺はね、負けたくないだけだよ。エメラルドさん、あなたはずっとこちらの味方をするか、魔王にずっと忠誠を誓うかで迷っていたはずだ。だから、この方法を実行すれば双方の益になる」

『双方の……益?』

「そう。俺の頼みを聞けて、魔王様への忠誠もそのままに出来る」

 嘘ではない。ただ、全てが本当でないだけで。

『まっ魔王様への忠誠がそのままなら、やってもいいわよ!』

「商談成立」

 にっこり笑って、エリとエルフリーデに向き直った。そして頼みごとをする。

「シス、その杖を貸して」

 これで全てが揃う。


 エリとエルフリーデ。エメラルドとアリエル。そして魔法耐性のない達樹と神官長のみが持つことを許された杖。

 全てが揃い、エリとエルフリーデの魔法がエメラルドとアリエルによって増幅され、達樹へと流れていく。

 エリとエメラルドの力で黒い鎧を、エルフリーデとアリエルの力で飛ぶ翼を。

 神官長の杖を持ち、魔王へと向かっていく。

「さて、これで決着をつけましょうか。魔王様」

 にやりと達樹は笑った。


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