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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
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よかったと思うこと


「エリさんに助けられたってのが癪だけどありがとう」

 闇から解き放たれ、達樹は言う。

「タツキ!!」

「エルフリーデさん、声出るようになったんだね」

 そして、魔王を振り返った。

「さて、反撃開始といきますか。多大な情報をありがとうございます」

「愚かなり」

「人間とは愚かな生き物だからね。絶望があると分かっても希望にすがりつく。希望と絶望は表裏一体のもの。だからどんなに絶望したっていい。隣に希望はあるから」

 闇と光も同じだ。光が照らすからこそ、闇も生きる。どちらかだけの世界など、ありえない。

 常に絶望の淵にいた少年に、傍にいた幼馴染たちが身を持って教えてくれたことである。

「それでいいんだよ。挫折しない人間なんてどこにもいない。挫折するからこそ他者により添えるんだ」

 それこそが聖職者に一番求められているものだと、達樹は思う。力だけの支配はいびつな歪みを内に秘める。

 そして、今いる面子はある意味最高な組み合わせである。シスとソルト。エリとエルフリーデ。相反する力を持つものが手を組むのだ。

「エリさんとエルフリーデさんでこまめに魔法撃って。ソルトの矢にシスの魔法をきっちり乗せて放って」

「承知」

「分かった」

「分かりました」

 それぞれが達樹の指示に従った。


 流石双子、そしてずっと一緒の身体に居たためか、エリとエルフリーデの連携はすさまじい。確かにこまめに撃っているが、威力は半端ない。魔王に従う魔物たちもあっさり倒してしまうくらいだ。

 そして、シスとソルト。ここは外すことなく大きな威力の攻撃を繰り広げている。

 意外にこの組み合わせいけるな。今度から訓練に入れてみるか。そう思いながら、達樹も魔物たちへナイフを投げる。


 何体目かの魔物を倒した時、太陽からの日差しが強くなった。

 生半可な気温ではない。砂漠とはそういうところなのだ。このまま戦いが続けば敗れるのは達樹たちだ。

 だからといってオアシスで戦うわけにもいかない。

「人間とは弱き存在よ。これしきのことで弱ってしまう」

「……そう……だね……でも、俺は……」

 人間でよかったと思う。その言葉が出る前に、達樹はふらりと意識を手離した。


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