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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
62/91

達樹のココロ

連続投稿2話目です。

矛盾点、変更しました

 魔王の放った黒い闇の中に達樹は一人佇んでいた。

『久しいな、ヒトの子よ』

 魔王の声がどこからともなく響いていた。

『何故、魔法耐性のないお前が、異世界に来れたのか知っておるのか?』

 それはシスが呼んだから。

『否、それは違う。余が汝を呼んだからだ』

「ふざけるな!」

『ふざけてなどおらぬ。本来であらば、あの翠か哉斗という者が呼ばれて終わりであっただろうよ。余が関知したからこそ、汝がこちらの世界に招かれただけのこと』

 本来勇者になるのは翠か哉斗であって、達樹ではなかったということだ。それを魔王が干渉したが為に、達樹が呼び出されたそう言いたいらしい。

『汝は異世界で産まれてすぐ死する運命(さだめ)にあった。それを覆したのは余。黒き髪のエルフリーデの役にたってもらうためにな』

 エリの役にたつなど、全力でお断りしたい。達樹はそう思ってしまった。


 もし、今魔王が話していることが事実だとすれば、達樹が持つ能力のほとんどが魔王に由来するのかもしれない。サキュバスの色香が効かぬこと、魔族とやりあえること、全てが魔王の掌で転がされていたということか。

『汝は飲み込みが早くて、余は助かる』

 こちらの思考を読んだかのように、魔王は話しかけてくる。

『汝は余にその身体を明け渡すためだけに存在しておる』

「断る!」

『そのままでは、すぐに死ぬぞ?』

「……構わない」

 思わず笑みがこぼれた。

「あのさ、人間っていつか死ぬし。それに俺は長生きできる身体じゃないし。こっちの世界に来てから楽しく生きてきたし」

 特に思い残すことはない。欲を言えば、あの言葉(、、、、)にエルフリーデがどう答えるか、知りたかっただけだ。

 もっとも、深い意味は知らないだろうが。

「あなたにこの身体を渡して死ぬつもりもないけどね!」

 最期の力で抗ってやる。達樹は思わずにやりと笑った。

『不遜な!』

「お互い様!」

 おそらくアネッサ嬢を誘拐したのもこの魔王だろう。シスが召喚術を使うのを見越したのだ。

 黒い闇は負の感情。それがない人間など存在しないだろう。いたら見てみたいものだ。だから、その負の感情には抗わない。


 こんな時にどうして思い出すのかな、思わず達樹は苦笑した。

 達樹の中に流れてきたのは、全てを悟り、殺されることを受け入れた母と、どこまでも能天気なエリだった。

 そして、そこから走馬灯のように記憶が走っていく。

 千紘たちとの出会いと、共に過ごした日々。

 異世界に召喚され、シスと会った時。

 エリザベスや魔物たちを巻き込み、自治領、そして守るものを決めた時。

 エメラルドのつっけんどんな態度。

 そして、エルフリーデの弱くも強くあろうとする心。


 心地いい。


 自分の死に場所は異世界(ここ)なのだと、達樹は痛感した。

 だったら、守らないと。

 そう思った瞬間、達樹の周りを囲っていた闇が消えた。


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