表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
59/91

達樹は珍しく留守番です

三話目です


 こんな撤退嫌だ、そう思った達樹だったが、おそらくアザゼルのほうがダメージがあっただろう。



「……そんなふざけた理由で撤退してきたのかい?」

 説明を受けたシスの呆れた声。普通ならば、そうだろう。しかし、いまだ妄想が止まぬ千夏を見て、シスもどうやら納得したらしい。

「あぁぁぁぁぁ。残念! 絶対にいい光景だと思うの!」

「それはお前だけだ!」

 千紘が止めるものの、効力は発揮されていない。

「まぁ、無事逃げて来れたんだ。よしとするしかないだろ、千紘」

 翠も呆れ顔で呟いていた。

「魔素の強い魔界で上手く立ち回るにはどうしたらいい?」

 こういったことはソルトやクンツォーネに聞くべきである。

「我らの眷属も少々連れて行けば、何とかなるであろう。王よ、インキュバスと盟約を結んだそうだな。インキュバスの血でも持って行くとよかろう。ただ、魔法耐性のない王には出来ぬ」

「そっか。だと今回俺は戦力外か」

 ソルトの言葉を聞いて、達樹はあっさり言った。

「エリとエルフリーデちゃんもこっちに残していった方がいい。ありゃ、厄介だ」

「分かった。だと俺たち三人が留守番組。他で魔界に行く。それからソルトさんが選んだギルタブルルの戦士が一緒に行くって事でいいかな?」

「承知」

「あとはインキュバスの血を入れる容器をクンツォーネさんに作ってもらって、インキュバス族から血をもらうか」

「王よ、あっさりと言うが対価は何だ?」

「俺はもらってるぜ。毎度楽しい依頼が来るたびに血が騒ぐ」

「インキュバス族には対価を渡してるよ。領民に迷惑をかけない程度の淫惑なら認めてあるから」

「王よ、相変わらずやることがえげつないな」

「褒め言葉だね。それから、クンツォーネさん、もう少ししたらアルプ族のバートさんが来ますから、ちょっとだけ打ち合わせをしてもらっていいですか?」


 そして翌日にはバートとインキュバスの王、そして何故かサキュバスのブレンダまでやって来た。


 その翌日には血を入れた容器も出来上がり、千紘たちは再度魔界に行くことになった。



「残された時間は少ないんだけどな」

 思わず呟いた達樹の隣には、エルフリーデが不思議そうな顔で立っていた。

 エリを通じて千紘たちに頼まれたのだろう、達樹が少しでも生きていられるようにささやかな「治療」をして欲しいと。

 正直、達樹はそこまでして生きていたいと思わない。ただ、今起きていることくらいは責任を持ちたいと思うだけだ。

 バルコニーにあるソファに座って、達樹は夜空を見上げた。

 この世界に来てからここまでのんびりしたことなどなかった。

 そして、向こうの世界とは違い、夜は暗く星や月が瞬くような光を放っていた。

「隣、座ればいいのに」

 躊躇うエルフリーデを無理矢理隣に座らせ、達樹はまた夜空を見上げた。

「……月が綺麗だね」

 その言葉だけはエルフリーデの顔を見ながら囁いた。


「さて、休もうか。皆無事だよ」

 そこまで言ってエルフリーデを抱きかかえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ