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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
58/91

魔界でも千夏の暴走は止まりません

二話目です


「エルフリーデ様をこちらに連れてきていただき、ありがとうございます。

 申し遅れました。わたくしは魔王、ルシファー様が執事、アザゼルと申します」

 金の髪に漆黒の瞳、絶望へと誘う(いざなう)微笑。


 それを達樹はじっと見つめていた。

「あなたの言う、エルフリーデはどちら?」

「お二方にございます。主の望みのためにはお二人は必要不可欠」

 耐性なしはこういうときに楽なのか、思わず達樹は自嘲した。皆が恐怖を感じる中、達樹は何一つ感じない。

 ただ、達樹の中にあるのは不快感のみ。

「……その魔王様とやらに伝えておいて、売られた喧嘩は倍にして返すって」

「たたたたた達樹さん!!」

「ほう、あなたのお名前は達樹ですか」

「それが何か?」

 エリの余計な一言にアザゼルが笑っていた。

「俺からしてみれば、人間だろうが、魔物だろうが魔族だろうが……それこそ魔王だろうが皆一緒」

「誇り高き魔族と下賎な人間を一緒にしないでくださいまし」

「人間は食料?」

「左様にございます」

 あっさりと肯定してくるアザゼルに達樹は呆れるしかない。

「では、その『下賎な人間』とやらがいなくなったら、あんたらは絶滅しちゃうわけだ。

 そして宣言しておくよ。あんたはその『下賎な人間』に敗れるって」

「思い上がりもいい加減にしていただきたいものだ。元々魔法は我ら魔族が人間どもに教えたというのに!」

 何故教えたのか、そこを考えれば分かるはずだ。

 人間たちの欲望を大きくするため。そして、感情という魔族たちの糧を増やすため。

「遥か昔、この世には混沌しかなったという」

 こちらに来る前にシスに聞いた、この世界のハジマリ。

「混沌から天界と魔界が生まれた。そして、魔界には魔素があふれていた。

 あふれた魔素に天界に住んでいた住民が苦しみだした。だから、天界と魔界を分けるために、真ん中に大地を作った。そして、そこに天界の住民を模した人形を置いた。

 人形に戯れに触れた天界の皇子が魔素を吸い込んだ。

 吸い込んだ皇子は魔界に堕ちた」

 そこまで言うと、達樹はにこりと微笑んだ。

「この伝承が本当なら、……いや本当なんだろうね。だって魔界への出入り口も山のふもとだったし。

 ここは魔素であふれているはずなんだ。つまり、魔素があれば魔族でいられるはず」

「何が仰りたいのですか?」

「既に魔素は枯渇してるんじゃないかな? だから魔素を補充するために人間の負の感情が必要なんだ」

 アザゼルの「食事」という言葉が達樹にこの仮説を導き出した。

「魔素が枯渇するという事態は起きませんよ。生憎ですが」

「『下賎な人間』のおかげでしょう? どんなものでも枯渇する。そういうものです」

 情報戦、という意味ではここに来る前から戦いは始まっていたといってもいい。

「さて、どうでしょうね」

「正直魔素がどうだろうが関係ないんだけどね。アネッサ嬢の居場所さえ分かれば。ついでも、エリさんもエルフリーデさんも渡さないよ。大事な仲間だからね」

 子供をモノ扱いする輩に渡すつもりはない。

「魔王軍と事を構えるおつもりですかな?」

「必要とあらば」

 達樹は即答する。


 次の瞬間、哉斗と向こうの戦士らしき男が動いた。

「ありゃ、デュラハンだな」

 飄々と翠が呟いた。

「デュラハン?」

「首なし騎士とでも言っておく。アンデット系魔族だと思ってくれ」

「ほほう、人間風情が詳しいものですね」

 達樹と翠がアイコンタクトで立場を変えた。

「いやぁ、俺の趣味でね。千夏も詳しいよ。ちなみにあんたは執事だって言うけど、嘘だね」

 その間に達樹はエリに近づいた。エルフリーデは千紘たちが守っている。

「そうそう、あなたはアンデット系でもないし、どちらかと言えば魔王様の小姓かしら?」

「私はルシファー様の執事……」

「ってことは、執事兼、受けって事かしら? 魔王様×執事なんて萌えるわぁぁぁぁ」

「何だ、それは!?」

「えぇ? 勿論BLよ! BL!!」

 既に千夏の顔は妄想でにやけていた。

「エリやエルフリーデちゃんのお父さんってことは、絶対美形よね! 観賞用だわ! あぁぁぁぁ!! 寝室に穴を開けて魔王様×執事の情景を生で見たい!!」

 流石の魔王様執事もたじたじのようである。その間にエリを軽く脅しておく。


 次の瞬間、周囲が光に包まれた。

「千夏が暴走する前に一時撤退!!」

 光の魔法を使ったのは、千紘とエルフリーデのようだった。


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